馬鹿王子4
4話目。
放たれたナイフは、兄が叩き落としてくれた。
問題は私の体だった。
「ラファエル!!大丈夫か!!」
「ゴホッゴホッ、だい、ゴホッゴホッ」
発作だ――――――――。
元々私は気管支に病を持っている。ゆえに、主のそばに居ながら隣にいることが出来ない。戦の時は、本来後方の拠点で待っている。今回は、たまたま前線に出ただけなのだ。
「ゴホッゴホッ、か・・・イン様」
「なんだ!!水か、果物か!!薬か!!」
慌てて私を抱き上げ、第1王子の所まで引いた主。兄は、医者を呼びにいった。
「いい・・・から、聞いて・・・ください」
「しゃべるな!!のどから変な音がする!!」
うるさい!!ただの発作だ。
そう、私は怒っていた―――――。
「何故・・・あんな・・・・こと・・・を?」
息も絶え絶え、咳き込みながらでは全く力のない声になってしまった。けれど、目だけは必死に彼をにらみつけていた。
「??なんのことだ??」
とぼけているのか、本当に分かっていないのか。おそらく後者だろう。それでも、私は怒りを鎮められない。
あの時、身を挺して盾になった私を、あろうことかこの男は!!
「私を・・・・かばう・・・馬鹿・・・が、どこにいるんですか!!」
叫んだら空気がなくなった。のどが裂けそうなくらい咳が出る。
そう、この男は私を受け止めるどころか、体を反転させたのだ!!自分の体が盾になるように!!あの一瞬で、それが出来るこの男は、やはりすごいのだが、それが問題なのだ。
「あな・・たは、王子・・・なんです。誰を・・・犠牲にしても、いき・・・のびねば」
「ラファエル、体に障る。これ以上は・・・」
第1王子の言葉に、小さな子がだだをこねるように首を振る。
正直に言おう。
怖かったのだ。
自分をかばって、主が傷つくのが――――――――。
運悪く命を落としてしまうのが――――――――。
苦しい―――――――――。
「ゴホッ、ゴホッ・・・・ゲホッ、ゴホッ」
「エル!!」
小さい頃の呼び方で、主が必死に私を呼んでいる。
苦しいのは、体??
苦しいのは、心??
あの時は、本当に怖かった。
あの光が、主を貫くくらいなら――――――――。
私の体を―――――――。
そう思ったのに。
彼は私を守ろうとした――――――。
血に濡れた彼を見るのが怖い。
けれど、どこかで自分を守ってくれる腕に安堵した―――――。
もう、限界なのだろうか?
薄れゆく意識の中、必死に私を呼ぶ声がどんどん大きくなっていくきがした。
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