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馬鹿王子  作者: よもぎ
3/11

馬鹿王子3

3話目。

 戦場、というのは、もちろん敵味方に分かれて戦う場所である。敵と味方、わかりやすく勢力に線引きがされ、お互いがお互いを憎みあう。


「アールヴ、こいつはまだ死なん、後回しだ」

「ローラ、そういう場合は軽傷というんです」


 一心不乱に怪我人にとりつく王子。もう一度言いたいが、ここは戦場である。医療行為を全くしないわけではないが、それが主になる場所ではない。


 ――――――――それにしても。


「アールヴ、こいつはやばいぞ!!すぐに手術をしなければ!!」

「ローラ、手術をして生存率はどのくらいです?というか、それは敵兵です」


 嬉々とした表情で手術にとりかかる王子。もう一度言うがここは戦場である。戦のまっただ中で、手術をする馬鹿はいない。普通は。しかも敵兵だし。


 そして、普通じゃないのが森の民。飛んでくる矢やナイフを見ないで(ムチ)で一閃。叩き落としていく。隙あらばと背後から近づく敵兵も同じ。正面から堂々とくる敵兵には、(ナタ)のようなもので応戦。淡々としているだけに、恐ろしい。しっかり王子を守っている。


 そして、もう一人、普通じゃないやつがいる。


「我が国を脅かすものに、俺は容赦はしない」


 右手に大剣。左手には小ぶりの斧。陽炎のように殺気が体から発せられているように見えるのは、目の錯覚だと思いたい。敵兵は、既にその姿に恐怖している。


「で、出た。戦狂いの狂王子!!」

「血塗られた王子!!」

「残虐の鬼王子!!」


 不名誉きわまりない浮き名に、思わずぴくりと眉が動く。ついで、引く弦に力がこもるのは仕方の無いことだろう。


「相変わらずの腕だな」

「・・・・お褒めにあずかり、光栄です」


 第2王子が前線に出てしまったため、指揮官として第1王子が後衛についた。と、いっても、普通は後衛も後衛、テントが張ってある拠点で指揮をとるのだが、この王子は違う。剣を片手に、戦場に立ちながら指揮をとる。戦う指揮官なのだ。


 その横で、私は弓を引く。主の助けとなるよう、敵兵の肩や足を射貫いていく。そのすきに、主がとどめをさしていく。


 ――――――人が死ぬのだろう?


 ローランド王子の言葉は本当に痛かった。戦場を知らぬボンボンが何を言うか。そう言えれば、楽かも知れない。不敬罪で私の首も飛ぶが。


 その一瞬、いやな気配に体が動いた。


 敵兵に紛れるように何かが居る。


 直感だった。足が動いたのは、無意識。主めがけて走る。


 ―――――――間に合うか!!


 視線の端に、きらりと光る何か。主はそれに背を向けている。


「ラファエル!!」


 私の姿に気づいた兄。その声に、主も振り返る。


 その瞳が大きく開かれるのが、とてもゆっくり感じた。


「エル?」


 間に合え!!


 光とを結ぶ、直線。それを断ち切るように自分の体を割り込ませる。


 振り返る主の腕の中に飛び込むように、私は体を投げ出す。


 そして――――――――。


 高い金属音が響いた―――――――――――。 

もう完結しているので、毎日更新していきます。

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