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馬鹿王子  作者: よもぎ
2/11

馬鹿王子2

2話目。

 結局、来ました戦地へ。


「ほう、北はやはり寒いのだな」


 当たり前だ。元々ランド王国は大陸の北にあるが、王都は国土の南に位置する。比較的あたたかい土地なのだ。


「ラン兄、初陣の感想はどうだ!!使命感に燃えるだろ!!」

「うむ、ここまでの道のりの長さ、兵士たちの負担を考えると、戦など無駄だな」


 当たり前だ(2回目)戦など、しないにこしたことはないだろう。


 銀髪をなびかせ、毛皮のコートを纏い、マフラーを巻き、手袋をして立つ総大将。絵にならない。


「まあ、いつもの小競り合いだ。数日でお互いが引いて終わりだろう」

「そうですね」


 副団長をしている兄、ミカエルの言葉に同感である。


 我が国の北に位置するノーシュラ帝国とは、はじめの原因が分からなくなるほど長くいがみ合っている。緊張が緩みそうな所で、小競り合いを起こし、お互いがいがみ合っていることを思い出させてくれるのだ。


「いつもの小競り合い。だが、人は死ぬのだろう?」

「・・・・それは、そうですが」


 小さなものとはいえ、戦は戦だ。お互いが無傷で終わるはずはない。ローランド王子の言葉は、耳にいたい。


「ローランド、お前は何を知りに来たんだい?」


 長兄、レオナルド王子の言葉に、みなの視線がローランド王子に集まる。と、いっても、我が主は戦にしか興味が無いのか、剣を握ったまま戦況を見つめている。


「人の死を。俺は、人の生死に疎いらしい。そうだろ、アールヴ?」

「・・・まあ、そうですね」

「「!!!」」


 ローランド王子の影から聞こえてきた声に、私と兄はとっさに構える。投剣(とうけん)を数本抜いたところで声の主が現れた。


「森の民!!」


 私の言葉に、彼女ははっきりと顔を顰めてみせた。


 森の民、大陸各地に点在する深い森に住む民。瞳か髪の色に必ず緑を宿しており、高い運動能力と危機察知能力をもつ。そして、とがった耳をもっているために、亜人として人々から恐れ、疎まれる存在。


 森の民も、そんな人間を毛嫌いしているため、めったに森から出てこない。その姿を見る機会など、一生に一度も無いのが当たり前の存在である。


「先日、アールヴに言われたのだ。俺は人間として欠陥品だと」

「だから、そうじゃなくて・・・・」

「要約すれば、そういうことだ」


 ローランド王子の言葉に、頭が痛いという感じで額を押さえる森の民。盛大につかれたため息と良い、あまりにも人間くさい行動に全員の動きが止まる。


「ローラ、とりあえず怪我人の治療をしたらどうです?知識を実践する良い機会では?」

「おお、そうだな!!城にある医学書は全部読破したのだ!!知識は十分だ、あとは実践だな!!」


 キラキラ、と輝きだした瞳。その反対にどんよりと曇る森の民の瞳。ああ、どこも仕える者は苦労が絶えないのかも知れない。


「行くぞ、アールヴ!!怪我人が待っている!!」

「怪我人が待っているのは医者です。王子じゃありませんよ」


 王子の後を、森の民が行く。


「おお、ラン兄もついに戦場にたつ決意をされたのだな!!エル、こうしちゃおれん!!俺も行ってくるぞ!!」

「・・・カイン様。あなたは護衛ですから、って聞いてないな。兄様」

「分かってる」


 走り出した背には、おそらくなにも聞こえていないだろう――――――――。

 

楽しんでいただければ幸いです。

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