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8 ようやく周りがわかったようです

 死神は酷く人を魅せるような美貌を持つ。それは羨ましい程な綺麗さでまるで生き物じゃないみたいだ。


 僕を盲目的に愛している。

 言っておくが自惚れじゃない。恥ずかしいけどこれは決して自惚れじゃない。


「私以外の者との婚姻は認めぬ」


 多分、他の人にも見えているのだろう。

 艶やで心地良く耳に入る低い声音が脳に染み渡り汚染する。


 絶対の覇者。


「私がいる限り暗殺もさせぬし、貴様等が代わって権力を手にする機会もない」


 割と聞き捨てならないことをさらりと言われたが頭は冷静に受け入れた。


 僕は怨まれても当然のような人間だ。


 殺されても仕方がない。だけど、死ぬことはやはり禁じられているのだろう。僕の生前もそうだったように、今も僕の命はこの美しい死神が握っている。


 この美しき死神はきっと僕が死を乞うても、与えてはくれない。


「もし、意義があるならば今すぐに申し出ろ」


 それが死神の本意ではないから。

 例え、僕が泣き叫び酷く罵っても、いくら暴言を吐こうが、変わりはしない。


「排除する」


 ここでもしも物騒な事を言うなと言ったならば、魔族を滅ぼす的な発言に発展しそうで恐ろしすぎる。


「私の市夜だ。イチヤは、私だけのモノなのだ」

「…恥ずかしくていたたまれない」


 顔を思わず覆い隠したくなるが、僕は片手で自分の顔を隠しながら周りの様子を窺う。


 顔面蒼白だ。いや、鱗とか角とか特殊な肌色のせいで大してわからないような奴もいるが、汗だらだらだ。


「私としては貴様等が、魔族が滅びようと迫害されようと知ったことではない。私が大切なのはイチヤだ」


 こんな美形な美貌を慈悲深く見えるような微笑みを向けないでくれ。中身が黒く渦巻いてるくせに天使みたいな笑みは辞めてくれ。


「イチヤに害を成す者はいらん。ここの人間のように。弱いくせにイチヤの心を掻き乱すような者は不要だ」


 チラリと集まった魔族に鋭利な笑みを浮かべて先程からずっと凄むような低い声音で脅しを掛けている。というか、脅迫だ。


「調子に乗るなよ、魔族風情が」


 あぁ、今更ながらだが、あの一番最初らへんの頂点云々の話は僕に対してではない。この絶対の支配者の死神様に対して神様が言った言葉だ。


 僕はいくら強くなろうが一番最初から強さの雰囲気は皆無に等しいから強くても弱く見られる。それに対しては文句はない。グッジョブだ。


「私に何も異論はなかろう?」


 この死神はきっと自分中心に世界が回っていると思っているに違いない。


 魔族は一斉に死神に頭を下げる。

 僕は魔王と呼ばれたが、きっとこの死神はそんな生ぬるい存在じゃない。


 魔神だ、魔神。

 この世界に今、魔神が誕生したよ。


 もう、とりあえず謝るけど、ゴメンナサイ。

 僕の手に負えません。



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