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5 さらば僕の初恋の人

 衝撃すぎて頭がついていかない。


 告白だ。

 いや、もう脅迫の域に入ってる。


 まさか人生初の告白がこんな脅迫まがいなものだなんてなんて色気のないことだ。もっとこう…いや止めておこう。


 私と結婚しなくば一生独り身だぞ、そう暗に言っている。


 それ以外にも大変なことを言っているが、どうしようもない。もうどうしようもないと思う。


 子供のように怒鳴り散らしても過去は変えようがないし、無駄だとも知ってる。でも、その不条理を叫ばずにはいられない。


 涙も鼻水もしょうがない。


 もう八つ当たり?

 いや、正当防衛だよ、罵りはしょうがないんだ。


 にしても、欠片も覚えてない。こんな顔見たら忘れないインパクト。

 あぁ、見てなかったって言ってたか。


「幼かったからな」


 苦虫を噛んだような表情で呟いた。


 それにしても話した。

 話しかけた。


「幼い幼い、うっさいぞ!」


 本当にどれだけ主張すんだよ。


 話しかけた。でも、見てない。

 見えてなかったけど、話しかけた?


 ただそれだけで僕は生かされていたのか?


「声なんて、かけた覚え…」


 考えても考えてもこんな物騒なヤツに話しかけた覚えは全くない。

 人違いと言いたいけど、ここまで言われるとそれも違う気がする。


 今更になって涙もろもろを拭う。でもやっぱり何ともいえない感情でジワリと涙が浮かぶ。


 姿が見えない。声だけ聞いた。話しかけた。色々な事を考えているが、やっぱり死神らしき物騒な会話をした覚えはない。

 きっとそんなモノに話しかけていたとその当時の僕は心臓麻痺で死んでしまうことだろう。


 それが僕の本当の死亡原因だったら笑えるななんて考える。馬鹿みたいな死亡原因だ。きっと発狂して自動車に跳ねられるとか精神病院に…。


 小さかったってどれくらいだよ。まさか、赤ん坊の時とか言わないよな?


「イチヤ。別に忘れていても良い」


 いや、全然そんな顔してないけど、超ショック受けた顔して何言ってんだ。


「私が覚えている。私は覚えているから」


 あぁクソッ、そんなふうに笑うなよ。

 僕が一方的に悪いみたいじゃないかよ!


「勝手なこと言うなよ!」


 本当にムカつく。

 覚えてない僕もしょうがない。


「とりあえず、僕が何言ったか教えろよ!」


 そんな見えない何かに話しかけたなんて、覚えてない。


「私は言いたくはない」


 恥ずかしいではないかと頬を染めた。無性に殴りたくなった。


「本当、僕が話しかけたなんて…」


 こんな変態そうな不審者なんかに、と思って不意に何かを思い出してしまった。


 出来るなら気付きたくなかった。


 真剣に考えるんじゃなかった。こんな感情を抱いていたなんて、不覚だ。出来るなら心底認めたくなどない。


 嗚呼、さらば初恋の人。



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