3 もう勘弁してください
「婚約をって結婚をって、お世継ぎってなんだよ」
まだ僕は21だぞ。
そんなこと言われたって、付き合ったこともないのに。モテない僕が恋人なんているはずがなかった。
「そうだな。イチヤは私のモノだ。他の奴にくれてなどやらん」
僕の親か、お前は!
確かに特に知らない人とは結婚したくないし、第一なぜ魔族なんかと、僕は人間だから人間がいいんだけど。
いやいや、21じゃなかった。
まだ小さな子供だぞ。こっち来てからまだ一年経たないし、見た目なら13、4のお子様なんだからな。周りもなんでそんな急いでるんだよ。
まあ、魔族は見た目通りの成長ではないようで、魔力の量や質で寿命が決まるみたいだ。
もしかして、僕は年相応に見られていない?
「イチヤを伴侶は私と決まっているのだ」
ん、今さらりと何か言わなかったか?
「伴侶?」
「私がイチヤを庇護しているのだ。誰よりも私がイチヤを想い愛しているのだ。下らんことを言う輩は刈り取るか?」
青筋を立てて憤りを見せる死神は相当恐ろしく、思わず失神するかと思った。いや、そんな優しいものじゃない、心臓止まる。
「放っておいたのが間違いだった。今からその魂を引き裂き輪廻にも還れないようにしてくれよう」
「いやいや、待て待て」
何もそんなにしなくても、つか、やっぱりさりげに変なの入ってる。
初耳だよ。すごく意外なこと聞いたよ。
「僕が好き?」
「そうだ。私は四六時中ずっとイチヤだけを見ていた。寿命を迎えたら私はイチヤを伴侶にする気でいた」
自信満々に語る。だけどすぐに計画が狂ったと不満げにこぼした。いや、待て、ちょっと嬉しくない発言、問題発言!
「ちょっと待て、僕に恋人が出来なかったのって」
「私が排除した」
サラッと言った。またサラッと平然と言ったぞ!
「むなしい青春がまさか…」
コイツが原因だったのか。
初恋は顔も知らない人だったけど、僕が好きになった人は常に病に倒れたり、事故にあったり、色々遭ったりしたのはコイツか!?
僕が悪いわけじゃなかったのか。
いや、悪い。
とても罪悪感が…。
「私はイチヤを愛している」
はっきりと言われたが、話を聞いた限り悪質なストーカーだ。警察も手出しできない悪質ストーカーだ、めっちゃ怖い。
「だから、寿命がきたらその魂を輪廻の輪に戻さぬつもりで」
「なんで、そんなに僕なんだよ」
特に接点もないのに、本当にドン引きだよ。
「すまない」
妖しい鈍い輝きの瞳が僕を射抜いた。
もう、謝るから勘弁してください。
ゴメンナサイ。
「だが、そなたも悪いのだ」