11 流石に僕も知りたい
まぁ、色々なことがあった。
天使や神様、その他もろもろに会い、普通に生きられないきっかけ作りの力を得た。
いつの間にか魔族が国を作り僕は魔王にされて、襲撃や結婚だなどと言われて、若干の苛立ちがあった。
だって考えて欲しい。死神のせいで恋愛経験のない僕が、僕の意思も無視されたような政略的ななんて、考えたくない。
それはあの死神の魔神様降臨でなくなり、かなり不穏なことも無くなったようだから良しとする。
いや、謝りたいくらい。
うん、ゴメンナサイ。
あれから魔族方々が僕を避け始めました。いや、あれはあれで寂しい。普通に今まで通りの強者がいたりもしたけど、本当にゴメンナサイ。
死神のせいでトラブルに巻き込まれたり、本当に百害あって一理なしみたいな感じだとか思いたいが、割とそうでもないから困るんだよな。
あの女魔族どもにしたってな。
本当に僕が何をしたんだって話だよな。
僕が魔族じゃないといつ気づくんだ魔族連中はさ。いや、それを言うなら死神だって魔族ではない気がする。
何族に分類されるんだろうな、死神。
「わからない」
せっかくの自由時間にまで死神のことなんて考えてやる必要なんてミジンコもないんだよな。
うん、止めよう。
あ、そう言えば死神は魔族を捕まえてやたらと何かを聞いているらしいんだけど、なんか嫌な予感しかしない。
変なこと吹き込まれなきゃいいけど。
被害は僕に出るわけだしね。
「何がわからないのだ、イチヤ」
出たよ。
思わず不機嫌になりそうだ。
「…そういえば」
不意にまた思い出した。
聞こうと思いずっと何故か躊躇い、そして忘れていたことをまた思い出した。
嫌なことではない。
初恋が人などではなく、この死神だったという悪夢みたいことよりずっとマシであることは確かだし、僕が認めたくはないがこの死神に若干だがかすかばかりに心寄せているとか、本当に悪い冗談に聞こえてしまう。
「いつまでも、その、死神なんて呼べないし、名前なんて言うんだよ。僕だってお前のこと知っておきたいし、だからさ、名前。今更だけど、教えろよ」
そう言えば、恐ろしく美しく魅了する怜悧な悪魔のような、慈悲深い天使のような微笑みを浮かべた。
まるで、それを待ちわびていましたみたいな微笑みだ。
「私の名は」
この死神の名が何を意味するかなど知らない。ただ言えるのはちょっと歩み寄って知るのも悪くないなと思うこと。
「 」
別に僕が聞き取れなかったわけじゃない。僕は耄碌してないし、見た目だけなら死神は幼児趣味のド変態になる。いや、何を言いたいのかと言うと、僕は見た目通りの歳ではないが、そこまで歳は重ねてないということだ。
後、まだまだこの異世界は僕たちによって混沌の渦の中に巻き込まれていく。
先に謝って置こう。
まず、異世界に向かってゴメンナサイ。
そして最後に、僕たちの恋愛はまだ始まらず、終わらないことにたいしてゴメンナサイ。