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悪気はなかった。
僕はただ事故死しちゃっただけなんだよ。いや、本当にそうなんだからね。
たまたま居合わせた無駄に美声の美骨の骸骨死神が僕の首根っこ掴んでポイッと神様の前に放り投げ、たまたま身代わりになってた天使が半泣きで美骨骸骨死神に咎められて、たまたま連絡を寄越してきた閻魔に無駄な美声骸骨死神がチクリ、たまたま帰ってきた神様が血相変えてリーマンも吃驚な土下座を繰り出し、たまたま様子を見にきた神様の嫁女神が事態を知り般若になった。
それからが僕の不幸の始まりだった。
間違えて死んだ僕を拾った死神は折角だからと身元保証人になってやると言い出し、憐れんだ天使は転生させてはと言い出し、それなら儂もと閻魔が力を授けてやると言い出し、当然責任を取ると神様はさらに力を与えるなど言い出し、夫の失敗は妻のなんだかだと女神が異世界に送ろうと言い出した。
僕はチートになった。
もっと分かり易く言うなら弱点皆無で完璧な防御攻撃とまではいかないが研ぎ澄まされているらしい。
そして何より異世界の件だ。その異世界は魔物とかいうモンスターがいるそうだ。突然変異や特殊個体は倒すのが大変だが常に驚異があるわけではないらしい。
あと、流石に赤ちゃん時代は可愛そうだと子供時代からに変更したみたいだ。
いや、そこは大事じゃない。いや大事だけどそれより重要なのはその異世界に魔王誕生の件だよ。
「頑張って魔物の頂点に立つのじゃぞ」
うん、死んでしまってゴメンナサイ。
間違って死んじゃってゴメンナサイ。
魔王を誕生の件もまたゴメンナサイ。
僕が死んじゃったせい。
僕が、僕が全部いけないんだ。
本当に平凡だった日常に、ゴメンナサイ。
もう、本当に僕のせいでゴメンナサイ。
これから異世界は混沌と化すかもしれません。
本当に、異世界に向かってゴメンナサイ。