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第一話 怪しい四人
白いレースのカーテンが光をとおして、輝いている。10畳程の自室は暖かい空気で満たされていた。
先程から目覚まし時計の音が響いてうるさい。
僕こと黒澤和佐は、布団の中でモゾモゾとうごいた。
「 ん……いまなんじら…?」
寝ぼけ眼で目覚ましを止める。
時刻は7時15分。学校には全然間に合う時間だ。
「 こうゆう時に御約束の寝坊でなくてよかったぁ〜。」
あくびをしながら意味不明な事をいう。
布団からでて、学校の鞄やら制服やらをかきあつめてリビングにでる。
「 おはよ〜。」
部屋にいた母と父にいう。
返事を聞かぬまま洗面台へ向かった。顔を洗い、リビングにもどって朝食をとる。そして制服に着替える。
いつもどうりの朝だ。
「 いってきま―す。」
お決まりのセリフで家を出る。たぶん一生の中で一番多く使う言葉じゃないだろうか。
外は少し肌寒く、空は灰色の雲がかかっていた。
それを眺めながら、思考をめぐらす。
今この地球は、着々と滅亡に向かっているのだ。
始まりは21世紀後半、環境をかえりみず進んだ技術と、死の灰をまき散らした核戦争によって、この星は著しい変化をみせた。
生き物達の生態がかわり、大陸は全てが集まり一つの陸となった。地球の寿命は数百、数十年にまでちぢんでしまい、いつ終わりを迎えてもおかしくない状況になってしまった。
人間達は愚かな行為を繰り返し、自らの生きる道を閉ざしてしまったのだ。
人々には残った時間を恐怖と不安を抱えながら過ごすしかない、そんな地獄を、罰として受ける事になった。
思考が止まる。
なぜならば、和佐はその現実が、全く身に染みていないからだ。
滅びるといっても、数百年後の事かもしれないし、そうだとしたら自分はすでに死んでいるはずだ。
それに、和佐の住む町は、戦後繁栄を取り戻した数少ない発展都市なのだ。だから町の外で起きている悲惨な現実を想像することができない。
つまり幸せ過ぎる今しか知らないのだ。
それに気付かずノウノウと暮らしている。
それが黒澤和佐という人間なのだ。
珍しく朝から脳みそを動かしたら、気持ち悪くなりそうになってきた。
学校についたら、居眠りをする気満々だからどうでもいいか。
そう思って、足速に学校に向かうのだった。