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到着そこは始まりの

首都、到着。

それなりの規模を持つ、大きな町のようだ。

そう、大きな、町である。

間違っても都市ではなかった。

50m上空あたりで見渡せば全域を視野に入れられる程度の町が、モノさん曰くの「首都」であった。

しかも、ここは・・・。


「方角的にもしやと思ったら。 ここ、始まりの町か」

ネットゲームのβテスト最終イベントにてあっさり滅んだはずの、あの町。

その後は廃墟として復興もされずに見捨てられたと聞き及んでいた、あそこである。


「建物とかは大きなの以外全然別なんだね」

眠りの世界から帰還したヒゲ痴ロリンが、馬車の窓から上半身乗り出して周囲を観察。

危ないから身を乗り出さないよーに。


「そうだね。 むしろ滅んだって聞いてたから大きな建物も全てダメになってるとばかり思ってた」

振り返ってエリスに注意をしつつ言う自分。


「ほ、滅んでませんよ? 物騒な嘘話をしないで下さいっ」

ギョッとして声を上げるモノさん。

ああ、自分の国の首都を滅んだはずだの何だのと言われればいい気分はしないだろうけど。


「あー、その、なんというか。 自分達が知っていた場所に似てるなぁ、と」

あはは、と乾いた笑いを上げて茶を濁す。


「・・・一度じっくりと、お話を伺うべきなんでしょうかね・・・」

ちょっと座ったモノさんの目が、怖かったりなんかして。

素直に話しても状況が好転する気がビタイチしないので、どう考えても嘘しか言わないけどねぇ自分。


「そこら辺はそのうちゆっくりと。 で、結局自分達は首都の、どこのどなたがいる所に向かっているんですか?」

なんだかんだで聞いていなかった事柄について聞いてみんとする。

最初に聞いとけよ的な事だったけど、ある意味どうでも良かったのでスルーしてたのですが。


「私達に英雄捜索の令を出した、騎士団長にお会い頂きます」

民を虐げた王族に反旗を翻したクーデター首謀者で、ある意味今の国の王様みたいな方なんですがね、とモノさんがぶっちゃけた。

初耳。


「歴史がないとか言ってたのは、単に独立して新建国した赤ん坊な国だからって意味ですか」

正直、権力者とかにトキメけない性質なので、数日前の会話なんかを思い出しつつ茶々入れる。

あ、そうそう、数日前で思い出したけど。


「あ、話の腰をへし折りますけど、迎えに来てからモノさんの口調が変わったのは何故でしょう?」

頼れるオジサン口調から、にこやか爽やか系テンプレ詐欺師口調に変わった気がするね。


「え、あ、はぁ。 実は私はこっちが地でして」

それなりに部下がいる手前、普段から演技も必要なわけでして、と苦笑い。

ふむ、幾らかは気安い奴と認識されたのかのぅ自分。

ならばよいのだががが・・・。


「あー、いまさら メリウくん、今までの口調は忘れてくれたまえ・・・ とかイイ声で言われても笑うしかなくなりますしね」

幾らかでも肩肘張らずに話しできるんだったらそれに越したことありません、と、ケタケタ笑ってみる。


「あー、出来れば笑うのはご勘弁を。 っと、そろそろ到着します」

先程から苦笑いしっぱなしのモノさんが、表情を引き締めた。


さてさて、状況はどう流れますかね。




通されたのは首都中央に位置する・・・ゲームの記憶だと公園とか噴水とかあった辺りに建てられた簡素な建物の中だった。

事務処理でもしてるのか、羊皮紙の山に埋もれる初老の騎士が気難しげにこちらを値踏みしてくる。

人相悪いので、無意味にガンつけられてるようで気分が悪い。


「なんかいけ好かない爺ですね?」

思わず素直に言ってみた。


「「ちょっ」」

モノさんとエリスが慌てるが、なんというか正直面倒になってきているので、巻く。


「こんにちは、メリウと申します。 ひとまずこの町の怪我人病人を助けたという<英雄>様ではないですが、似たことは出来ると思います。 それを踏まえてお聞きしますが、自分に何か用ありますか?」

聞きたいことだけ聞く。

初老騎士はしばしガンつけたまま固まっていたが、不意に力を抜くと、愉快そうに笑った。


「モノ、愉快な人を見つけてきたね」

おや、やけに声が若く、高い。

そんなに興味もなかったのでちゃんと見ていなかったその騎士の顔をよく観察する。

老いの表れのシワだ、と思っていたものは、火傷で引きつった痕であった。

顔全域が、焼かれていた。

それも恐らくは、子供の頃に。

そして恐らく顔だけでなく体広域がああなのだろう、と、外の人知識が囁いている。

それを加味して、声の感じから察するに。

彼は、それほどの年かさではないのだろう、と憶測できた。

少なくとも・・・自分よりは年下だ、と感じた。


「お初にお目にかかりますメリウ殿。 僕は騎士団の長をさせていただいてるノナと申します」

椅子から腰を上げ、丁寧に頭を下げる団長さん。

うん、ひとまず聞いてみようか。


「とりあえず、ノナさん。 その火傷、治します?」




すれ違う人が、振り返る。

四人連れ立って食事でもと外出した時から、衆人の目が向けられていた。

足取り軽いモノさんと、ニコヤカなノナさんは、気づいていないようで。


「ノナさん、女の人とは見抜けませなんだ・・・」

私とどっこいの胸装甲の薄さだったしなぁ、とはエリスの言。


「それは自分もだわさ。 もろにモノローグで彼呼ばわりしちゃったわさ」

どうでもいいことだけど語尾にわさつけるとわさビーフが食いたくなる自分。

悔しい、でもそんなもんここにねぇよちくしょう。


先ほど答えも聞かずにノナさんに光腕ぶち込んでしまった訳ですが。

あまりに劇的ビフォーアフター過ぎてちょっと驚いた。

なんという事でしょう、初老の男性とばかり思っていた人物が、みるみるうちに見目麗しい女性に成ったではありませんか!

・・・ねぇよ、と、エリスともども突っ込んでしまったのは仕方あるまい?


「でも、よかったね。 今でも痛くて仕方なかったんだってね」

エリスの言葉に、そりゃそうだろうさ、と返す自分。

むしろ、よく生きてたねレベルだと、素直に思う。

出迎えてくれた時のアレも、ただ単に普段通りの痛みに顔をしかめてただけなんだろうなぁ、とか思うと喧嘩っ早い反応してしまった自分の子供っぷりに絶望したりする。


「あんまりに痛ましくて強制治療しちゃったけど、クレーム無くてよかった・・・」

この火傷は! 僕の生きた証だ! とかロマン語られたらどうしようかと思ってました。

最悪、じゃあもう一度焼くよ? とかの流れになった、のか・・・?

爆炎壁に女の人押し付ける自分を想像して、胃の腑がキュッとなった。

一応快癒を喜んでいただけてるようなので、ホッとしておりますが。


自分とエリスの十数歩先。

軽やかに、踊るように。

痛まぬ体で跳ねまわるノナさんと、それをすんごいイイ笑顔で見守るモノさん。

道行きがてら断片的に、幼なじみー、とか彼女のために騎士にー、とかは聞き出した。

有り体に言うと、とっ捕まえて三秒で吐かせた。

そんな王道的関係に、やおいじゃないけどエリスもトキメイたらしい。

やおいじゃないけど。


「さて、んじゃ二人の世界に突入しそうなモノさんノナさんを追いかけるとしますかー」

そしてモノさんの奢りで容赦無く飯食おうぜー。

大人の本気を見せてやろう・・・無駄にな!


「あいあい!」

腹減ったー、と声高く同意するエリスを引き連れて。


なにか忘れているような気もする首都観光?が始まった。




「あっれ、ウチの出番は・・・?」


今回は、なし。

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