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道行きそれは情報で

おはようございます。

番犬役の自分です。

ごきげんよう。

寝ろ、寝ない、の闘いになった夜番を賭けたVSモノさん戦を<睡眠>魔法で大人げなく勝ち上がっての朝でございます。


地平線から登る朝日を温燗飲みながら眺める贅沢をしつつ。

昼間暖かくてもそれなりに夜は冷え込みますねぇ、などと独りごちて。

んー、と伸び一つして。

では、朝飯の準備でも始めますかのぅ。




<魔族>さん達に振舞っちゃったので食材が尽きた。

もう少し日持ちするような物を用意しとくかなぁ、と思いつつ。


「では、我らは先を急ぎますので此処でお別れですね」

<睡眠>から目覚め、朝食準備を手伝ってくれたモノさんが<魔族>一団との別れを口にする。

あっれ、遭遇時の反応からしてこのまま行かせちゃったらマズイのでは、と思ったりもしたのだが。


「行きずりの旅の一団と一夜を過ごしただけです。 何も問題はありません」

と、ニヤリ笑うモノさんが、ちと愉快。


「「あー、隊長狡いー、即座に美味しいところ持っていくその姿勢はどうゆうことなのー」」

騎士さん二名からブーイングが上がる。


「もうこのまま彼らも連れて行きましょうよー、どうせ人手はいくらあっても足りないんですしー」

騎士の一人が言う。

ほー、人手、足りないんだ?


「いやいや、落ち着きなさい。 私的にはソレもいいかな、と思うのですが・・・昨日の私や君たち自身の反応を思い出しなさい」

モノさんの言葉にハッとする騎士二名。

あー、すっかりお友達気分になって忘れてたかー。


「魔族・・・もうこんなところまで・・・」

エリスが物真似して要らん油を注いだので、即制裁チョップびし。

無駄に似ていたのがまた腹立たしい。

ほら、騎士さん達黙っちゃったじゃないか。


「・・・と、言うわけです。 なので、ひとまずはコレで納得して下さい」

身内に言い聞かせると、モノさんは一団に振り返り。


「申し訳ありません。 小さなお子さんもいらっしゃる方々を保護も出来ぬ現状でして・・・」

深々と頭を下げるモノさんの姿に、脳内のレッドアラートが鳴り響いた。

うへぇ、額面通りに受け取ると・・・幾つか考えたくない可能性が上がってくるなぁ。

例えばほら、何がしかの戦争終結直後だったり、とか、ね?

焼け野原復興に関して、不意に湧いた魔法使い捕まえて働かせよーぜー、という流れだったらどうしたものか。


・・・よほどキチガイじみた「上」でなかったら働きそうな自分がいる・・・。


「いや、気にしないで欲しい。 むしろ子供を助けて頂いただけでも我らにとって奇跡としか言いようがなかった」

その上、露に濡れぬ寝床と酒席まで設けてもらい、何をこれ以上・・・と言葉に詰まるテトラさん。

ただ、心残りは・・・と、自分をチラ見してくる。


「・・・あー、どうしたものかなー」

そう言えば昨夜、色々話すよー、とか約束した覚えもある・・・んー、どしよ。

自分が戻ってくるまでここら辺でウロウロしててー、とは言えないし。

かと言って代表格っぽいテトラさんだけ連れていくのもアレだし。


「もういっそ騎士さん達二人に護衛頼んで、皆さんを<世界樹前>村まで送ってもらえばいいのかな」

で、皆への偏見が強いようなら<世界樹>辺りに滞在してもらって、ソレの監視ってことで騎士さん達に物資補給及び対外的な防壁になってもらえばいいのでは、と提言してみる。

よそ者の自分でもそれ程苦もなく受け入れてくれてたし、いけるんじゃないかなぁ、なんて楽観視していたのもあるけど。


「おお、二兎を追う妙案?」

メリっさん伊達に長く生きてないねー、と茶化す痴ロリン。


「それは・・・」

ちと考えこむモノさん。

危険がないと思われる難民チックな人々の保護も視野に入れられるか、と、思案顔。


「<世界樹>?」

首を傾げるテトラさん。

人を避けて移動とかしてたなら知らなくても不思議はないか。


結局、騎士さん達二名の後押しもあり、自分案で行ってみようとなった。

ただ、様子見で村の人には<魔族>というのは極力隠し、村でなく世界樹に直接行こう、という流れになったが。

モノさんは、一応念のためと村長宛に一筆書いて「長にだけは事のあらましを伝えておきましょう」と手紙を騎士に託し(自分も念のために文面を盗み見たけど不振な点はなかったのでホッとした、二重の意味で)、真剣な顔で騎士達に令を出す。

真面目な顔でそれに頷き、騎士達は一団の護衛として自分達と別れ。


首都へと向けて、自分達三人は出発した。




馬車旅はのんびりと。

自分は御者台、モノさんの隣に陣取らせてもらうい、彼に国とやらの現状を聞きながら長閑に進む馬の蹄音に脚でリズムをとっている。

カポッ、カポッ・・・カッポー死すべし・・・モゲロッ、モゲロッ。


「現在我が国は、独立戦争の疲弊から辛うじて立ち直った、といった所でして」

ポツリポツリと返ってくる言葉に相槌を打ちつつ、先を促す。

何度目かになる大きな国の建国、戦争、小さな国の独立。

飢餓や疫病等の<ラスボス>が蔓延する戦の爪痕生々しい辺り。

それが、今らしい。


「そんな中現れたのが、一人の<魔法使い>でして。 ちょうどメリウさんとお会いした日のことです」

なんでも、怪我人病人に満ち溢れた教会廃屋壁面に突然現れた扉をくぐってやってきた男が、瞬く間にその場の全員を光雨や光腕、更には光剣のようなものでバッサバッサと癒しまくってそのままどこかへ去った、そうな。


「荒れ果てたとはいえ一応国の体裁はあるわけでして。 傷つき病んだ国民を救った英雄を探せ、という号令が出されまして。 それで近隣を兵が駆けまわることになり・・・と言う流れですな」

そして、夜道をゆく貴方に遭った、と言う次第です、と、モノさんが語る。


「ふむ。 ぶっちゃけモノさんは、その癒しまくり怪人が自分なんじゃなかろうか、と思ったわけですか」

だから死にかけてたモノさん回復したのが魔法とわかると「そうであるべき」なんて思わせぶりなこと言ったんじゃ・・・。

しかし、光雨、光腕、そして光剣・・・ねぇ。

モロに<全究回復><白銀癒手>、それに<浄化>だなぁ・・・全部使える坊さんに心当たりがありまーす。


「はい。 で、実際はどうなんでしょう?」

にこやかに小首を傾げるモノさん。

ははは、コヤツ分かってて聞いてやがるなどうしてくれよう。


「えーっと、似たようなことは出来ますが、自分じゃないですねぇ。 むしろ、自分の仲間がその条件に合致したんですが・・・」

世界は広いし、坊さんでない可能性のほうが高い気もするけど。

何故か、犯人はヤツだ、と自分の第六感が囁いている。


「癒された人の証言とかで、その魔法使いの外見情報とかは集まらなかったんですか?」

ひとまず情報収集。

ってか、ヤツなら目立ちすぎてどう考えても一発バレ必至のはず。


「はい、それがですね・・・背が高い、というところは皆共通の証言なのですが」

細部が、マチマチなんです・・・と、モノさん。

外套を目深にかぶっていた、いや素顔だった、むしろ骸骨だった、痩せていた、ふくよかだった、筋肉質だった・・・等、相反する様なものまで含まれていたそうな。

うわぁあの野郎(脳内確定)、扉から出てくる前に<幻影>纏って見た人固有の印象操作しやがったな・・・!

ああ、それなら見つからないわけだ・・・きっと、奴は。


「はー・・・。 ナルホドナルホド。 大体わかりました・・・」

ひとまず、気が抜けた。

そして、仲間の一人が、行く先で待っているという確信が持てた。

今頃奴は、のほほんと観光チックにそこら辺をねり歩いてることだろう・・・。


「え、なにかお分かりになったんですか?」

すわ、英雄様の所在とかですかっ、と鼻息荒く食いついてくるモノさんの顔をガッと掴んで前を向かせつつ。


「恐らく、ですけど・・・その<英雄>さま、まだ首都に、いますよ?」

見知らぬ所で迷ったら動かない、の法則を遵守する彼だったら、恐らくは・・・と言う注釈はつくけれど。


それから数分、自分はモノさんの顔を鷲掴みにして強引に前を向かせたままで居なければならなくなった。

頭に血が上ると血行・・・結構猪突な人なのだね、キミ。


ちなみに、やけに静かだなぁ、と思ったら。


「Zzzz」


ウチのお嬢が、涎垂らして熟睡こいていたりした。

うん、長閑のどか。


自分は、ヒゲを書き込んだ。

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