不可能それは錯覚で
年末年始の休みが、寝て起きたら終わりました。
と、いうわけで。
あけましておめでとうございます。(おそっ)
そろそろ2月ですね。
壊れないはずの壁をぶち破って出てきた、機械仕掛けの巨人は。
何と言うことでしょう。
結構濃い、知り合いでした。
こんな時、どんな顔をしていいのかわからない。
「あざ笑えばいいと思うよ。 さて、変わったモンスターだね。 サクッと殺ろうか」
実に満面の笑みで言い切ったエイジがここに居た。
って、<繭>開こうとしちゃらめぇぇぇぇぇ。
・・・義父との仲は相変わらずかトムとジェリーめが。
こんな口利いても、実際に爺ちゃんが怪我でもしたなら超心配する困ったツンデレちゃんなのだが。
「同士エイジー。 野郎のツンデレ、キモチワルイー」
なので、素直にさせようとストレートにツッコミを試みる自分。
ってか、全員で見覚えあるとハモっておいて見知らぬ振りは出来まいて。
「えー?」
「えー、じゃない」
「さ、先っちょ。 先っちょだけだから」
「そういうキャラに合わん発言をするな。 エイジまでブレたら・・・ほぅら、痴ロリンが早くも妄想からのコンテ割りに突入したぞ!」
「・・・・っ、・・・・! ハラショー・・・ッ! ナマで義父☓息子モノなんて王道見られるなんて・・・!! 早起きは私得っ」
エイジの不穏な発言により、またしても腐りきった作品が産声を上げたようで。
その引き金引いた男と腐念物制作者には、後で土壁の部屋にでも入ってもらおうと思う。
拒否権はない。
繰り返す、拒否権はない。
さてっと。
速攻収集つかなくなってきたんで、要素を分解して個別処理していくしか無いかね。
まずは、元凶からどうにかしようか。
「えーっと、実にお久しぶり。 というか、出来ればこちらではお会いしたくなかったなぁ、というのもありますが・・・<博士>」
パワードスーツ<光武似>の前面装甲を開きっぱなしでニタニタとイイ笑顔していた爺ちゃんに、挨拶をば。
「ヒドい言われようじゃなぁ。 顔見せ早々会いたくないなんて、流石のワシも凹んで義息子に悪意ないイタズラとかしてしまいそうじゃワイ。 コーヒーにアーモンド香料垂らしたりとか、奴が使ってるワークステーション本体の上にビス何本か置いて「すまない、余った」と書き置きするとか」
挙げた掌をヒラヒラさせてバカ話を開始する爺。
よかった、いろんな意味で心は折れてなさそうだ。
吸血鬼さんの話をそのまま信じるのならば。
<博士>は、自分達が色々やらかしてた数ヶ月間、ずっと閉鎖空間で穴掘ってたことになるし。
あ、あと、今言ってたイタズラやらかしたら、エイジにガチ怒られると思うので死にたくなければやめた方が賢明ですぜ爺ちゃん。
「しっかし、こっちに来ちゃってたんだねぇ<博士>。 研究室に居なかったから、てっきりこの愉快オカルトトリップな難を逃れたのかと思ってたんだけど」
<塔>の地下深く。
地下通路を経由して至る、魔窟。
ほとんどそこに居座り、発掘物から過去の知識を復古するという考古学的プレイをしていた彼。
そんな引きこもりプレイスタイルから、ついたあだ名が<博士>。
しかしてその中身も、恐るべきことに博士号持ち。
大学教授やってる・・・らしい、愉快頭脳系な人。
普通に話している限り、そこら辺に稀に転がってる愉快痛快基地外ジジイって印象しかないのは何故だ。
あれか、残念才能人とか、勉強が出来る馬鹿、とかそういう方向か?
「知識・知性と人格は別個のものだからなぁ」
「ん? なにを今更当たり前のことを??」
それがどうかしたか、と。
ついコボレた自分の独り言を<博士>に拾われる。
えーと。
どうしたのかと聞かれれば、そりゃ・・・。
「頭良くても全裸徘徊老人だと処理に困るよね、と、同士は言っている訳なんだけど。 それも理解できないとはついに思考のキレもなくなったんですね、先生」
喜々として<博士>に自分の脳内思考を翻訳して聞かせるエイジさんマジ外道。
ってか、自分はそこまでは思っていない。
むしろ全裸徘徊は自分の仕事である。
「眠くてどうでもよくなったから黙ってたけどよ。 いつお前の職業がストリーキングになったんだよ」
身構えを解いたシオンが、自分の思考を丸読みしてツッコんできた。
あっれ、自分ついにレザード以外にも心を読まれるサトラレになってしまった!?
ヤダそれ恥ずかしい・・・よぅし、パパ、グロいこと考えて周囲を汚染しちゃうぞぅ!
慌てろ焦れ、恐怖しろゲロ吐けっ。
あ、そういえば下呂温泉って名前の音で損してるよね!
「いやいやいやいや、今普通に口に出てましたから。 あとナチュラルに邪悪なこと考えないように」
手をパタパタさせてジオもツッコんで来よったわ。
・・・あっれ、今の言葉も口に出してたのか、自分?
「へっへっへ・・・なにを考えててもこの口は正直だなぁ・・・」
痴ロリンがこちらを見もせずにノっている。
エリートすぎて困るんだが。
ねぇパパ、これ捨てて良い?
自分はリーダーにお伺いを立ててみんとす。
「誰がパパじゃい。 ワチキに貴様のようなHENTAI息子などおらんわ!」
ペッ、と吐き捨て。
シオンはオーバーアクション気味に言い捨てた。
行動説明に二度「捨てる」がついた・・・つまり。
捨てて良いでFA。
「それを捨てるなんてとんでもない・・・グッアイディーア。 丁度よい穴も開きましたし、廃棄していきましょうか」
と、超乗り気の聖職者のお墨付きも出たので。
自分は「うへっへへへ・・・」と人体パズルなコンテきってた腐念物の襟首を掴み。
仲良く親子喧嘩しているエイジとジジイの脇をすり抜け。
ポイッと。
迷宮の外へと投棄。
あれあれ、流石の凝り性だなぁ。
手掘りのくせにやけに綺麗にエッジが出てる通路が出来てるじゃないか・・・やるじゃない爺ちゃん。
「!? No! 廃棄No!」
いきなり視界が暗くなったことで自分の現状に気がついたのか(むしろ今まで気がつかなかったのが異常であるのだが)、痴ロリンがなにがしかの悲鳴を上げたようだったが。
「逆に考えるんだ。 廃棄されちゃってもいいさ、と考えるんだ」
「おおっ、流石兄者・・・って、それは私の気分の問題であって状況はまるで変わらないじゃないですかヤダー!」
正直、捨てたいけどこんなもん捨てたら世界がヤバい。
くっ、こんなことなら出会わなければ良かったっ・・・。
「え、それは流石に泣きたくなるんですけど」
「冗談だから急に素に戻らないように。 あと、もう自分喋らなくても良いかね?」
サトラレに進化してる気がする、自分。
よし、食らえグロ思念波っ。
相手は吐く。
「・・・こぽぉ」
マジで吐かれた、死にたい。
えふっ、えふっとエヅく痴ロリン介抱しつつ。
あっれぇ、真面目に対処しないとガチでまずいかなぁ、と。
自分は変な危機感を覚えるのだった。
・・・まぁ、後に発覚したのだけど。
ただ単にエリスが変な姿勢でモノ描いてたから気持ち悪くなってリバースしちゃったというのが真相なのだがね。
外では日も暮れている時間帯か。
いつもの酒場のいつものテーブルに、新規メンバーの登場です。
自分達の小芝居にも慣れてくれたウェイトレスさんの尻を触って速攻義理の息子に折檻された爺ちゃんだがな。
「戻れたら、義母さんにチクっときますね」
「それだけはご勘弁を!?」
楽しげな親子のやりとりを見物しつつ和やかに酒宴が進み。
お約束の近況報告なんぞを。
「じいちゃん。 自分達、色々あった」
「お、おう・・・」
説明終了。
さて、んじゃ爺ちゃんの話を聞かせておくれー。
「気がついたら部屋の中にいた。 扉を開けたら周りが岩だらけだったので掘った。 掘り続けてたらお前達に出会った、なう」
なうとか言わない。
しかしこの爺ちゃん。
本気で数ヶ月岩を掘り続けたのか・・・。
「で、な? 儂の愉快強化鎧<光武似>で発泡スチロールでもバラすように岩盤掘っていたのも束の間、驚くことに壊せない壁にぶち当たっての? すわ、これは儂に対する挑戦じゃな、と」
おとなしく螺旋階段でも掘って地上に出ておけば、少なくともソロ活動からは解放されただろうに、と思わずにはいられないが。
まあ、研究するモノが見つかってしまえば<博士>に撤退はなかろうか。
かくして、破壊不能に挑戦した爺ちゃんの奮起により。
見事、それは成ったわけで。
「結局、破壊不能じゃなかったって事は、単純に耐久力が高かっただけって事だったん?」
モリモリと腸詰め頬張りながら爺ちゃんに尋ねるマックス。
なんだかんだで勢い余って迷宮の壁にまで攻撃が飛んだことは数度あったが、傷一つつかないそれを戦闘系でもない<博士>が破壊してのけたのに、若干納得いかない模様で。
「そう単純なもんでもなくてな。 恐らく今の数倍強くなっても、知らなければ壊せない、という類のブツじゃな」
きゅきゅーっと流し込んだ芋焼酎で自身の喉を焼きつつ。
<博士>は謎の専門造語すら交えつつ講釈を垂れ流しだした。
しまった、罠か。
・・・二時間経過。
既に自分を除いて全員。
エイジすら逃げ出しやがりました。
うわーい、今宵の土壁の部屋はみっちり詰まるぞぅ。
自分、やると言ったらやる。
で、話自体は面白かったんだけど、なんのことはない。
知りたかった結論は、至極単純なものだった、ということだけだ。
破壊不能とされるオブジェクトの破壊条件、それは。
「一定レベルの威力を持った、持続攻撃であること」
<博士>がやったように、連続的な打撃を加え続けるとか。
途切れることなくダメージを与え続けてようやく。
「破壊不能」の「不能」を「破壊出来る」そうである。
なるほどなー。
「打撃の連続、程度で許されるってことはつまり、打撃の余韻あたりが物質に残っている間に次の攻撃を繋げば破壊に必要な時間的なカウントが成されるってことかねー」
爺ちゃんに聞いた話しなんかを脳内で総合しつつ、呟いてみたりする。
そう考えるなら、「一瞬」で無数の斬撃を終わらせてしまうシオンの秘奥義なんかで破壊できないのも道理である。
「そんな感じじゃな。 割と持久力および瞬発力が要求される。 正直、人力では辛いと思うがな」
いやぁ、話した話した、随分と久方ぶりに話したわー、と。
<博士>はテーブルに突っ伏して、派手な寝息を立て始めた。
ああっ、芋焼酎をストレートでカパカパいくから・・・っ
相変わらずマイペースだなぁ。
そして、変わらずの、話し好きというか、人好きというか・・・。
まったく。
憎めない爺ちゃんである。
自分はそんな爺ちゃんを担ぎあげると。
勘定済ませて宿へと足を向けたのであった。
ほら、その、ね?
まだ、ヤることあるし。