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尋ねればそれはコギト・エルゴ・スム

犯人はISOとPSO2

迷宮深部。

主たる黒竜の部屋。

広く暗く、黒竜以外の生物の存在を許さぬその空間の一角。

場違いに仄明るい場所にて。

四人の男たちがテーブルを囲み、某かのやり取りを、していた。

その周囲にも数名、思い思いに過ごす男女の姿があったが。

どうやら、テーブルでのやり取りが、この場面での主軸であるらしい。




「んじゃ、結局「中の人」ではない、と?」

自分は真っ白な牌を切りつつ対面の彼に尋ねる。


「ふむ、中の人、と言われてもピンと来ないがな。 我は我である、としか言えぬな。 昔の記憶にある「お前たちと言葉を交わした我」は、正直のところ「今の我」ではない気はするのだが」

腕組みしてそこまで言い切る人化形態・・・黒竜さん。

流石に千年の上を生きる(ぬっ殺されても再生する<不死性>持ち)、竜語魔法なる未知の技術をお持ちのようで。

暇があったら学びたいものである。

ちなみに、人化魔法で「すわナイスミドルの出現か!?」と胸踊らせた痴ロリンの前に現れたのは素敵ダンディ「竜人族形態」な黒竜さんで。

掌を返したかのように意気消沈したアレは今もまだ床にごろ寝して不貞腐れていた。


「ふむ。 今までの話をまとめていくと、今の黒竜さん自身がハッキリと自分自身というのを自覚した、ってのが1000年前くらいってことかね」

緑の字牌を切りつつのシオンのセリフに、小さく頷きニヤリと笑う黒竜さん。

その笑みに、ギクリと強張るシオンのコメカミ。


「ロン、緑一色・・・だったかな?」

パタリと乾いた音を立てて倒れる黒竜さんの牌達。

文字通りの緑一色、お見事な48000。

しかも直撃。


「なん・・・だと・・・」

一瞬でハコにされたシオンが、呻く。

ってかこんな手番早くに・・・殆ど揃ってた計算だねぇ。

これはシオンの運がなかったか。


「いずれにせよ、お見事ということで」

パタパタっと自牌を開きジャラジャラと仕舞い始めるジオが、にこやかに黒竜さんを称える。

・・・ちらっと見えた奴の手、四暗刻の単騎待ちだったで御座る。

やっべ、あの待ち、一巡遅かったら自分が直ってたじゃねぇか。

なんて怖い卓だこれ。

うへぇ、もうやらねぇ。

シオンあっちで連中ハブっていい酒飲もうぜー。




首吊り黒竜事件からの正座説教から逆鱗毟って悶絶したところで彼を治療し、ひとまずのオハナシアイを行った結果。

程々に情報が入ってきた。

曰く、いわゆるテロさん等の「中の人」がそのまま彼らの自我になったわけじゃないよ、という事。

曰く、昔の黒竜さん自体には自我らしきものはなかった、らしい。(で、自分自身を認識した、要するに自我の目覚めは、どこにでもついて回ってる気がする1000年前、と)

つまり。

大雑把に考えるのであれば。

1000年前以前がゲーム、それ以降がこの謎世界、とでも考えられるのだろうか。

ふむー、なんとでも言えるってのはまだまだ健在だなぁ。

頭の中で色々考えると、まぁ。

結構洒落にならない感じの絵面も見えてきてるんだがね。

例えば、いわゆる「中の人」なんて実は・・・とかさ。

まぁ、そうならそうでも、自分はどうにか平静で居られるのだが、痴ロリンとかナガ吉あたりは少し心配。

後はマックスあたりも。

エイジは・・・考えようによっては一番キツイだろうなぁ。

ま、仮説も仮説だし、当たってないことを祈ろう。

祈る神様がいてくれるなら、だけど。


「・・・で、話し合いが何で麻雀卓囲むことになってんだ、というツッコミは、すべき?」

「別にいいんじゃねぇかな。 どうでも」

革ナガ夫妻が、小器用に各段一本残しでジェンガの塔を間引きつつ、呆れた感じの声を出し。

あと皮長って書くと皮あま「粛清」割礼ー。


「せっかく鷲巣麻雀牌とかも作ってあったんだけどなぁ」

「麻雀セットはエイジの自作かよ・・・ってか、サクっとメリッさん粛清して何事もなかったように会話続けるなよ・・・」

エイジとマックスは酒飲みながら透明牌の混じったセットを弄っている。


「ナイスミドルェ・・・」

ゴロゴロと転がる痴ロリンは、その、なんだ、後で説教な。


そんなこんなで。

ひとまず第一回いんたびゅーうぃずもんすたー、終了。




「・・・ふむ。 では、やるか」

人化形態を解き、あるべき姿に立ち戻った黒竜が、遙か高みの巨大な口を開き、宣言する。


「別に、このまま帰ってもいいんだぜ?」

キューっと<神話級>の日本酒を飲み干しつつ<雷神剣>を抜き放つシオンが、ニヤリと黒竜を挑発。


「はははっ、なぁに良い良い。 なんのかんのと記憶に苛まれたが、最早それもどうでも良い」

黒竜は声高らかに竜語詠唱を謳い、両の手で複雑怪奇な印を組みつつ。


「今回からの我は、一味違うぞ?」

慢心せず恐怖せず、目の前の貴様等に全力を叩きつけよう。

覚悟せよ、と注釈一つ。

広域殲滅系と思われる竜語魔法が、音もなく戦闘準備を整えた一行八名の頭上に、降り注いだ。




帰還用ポータルを経由して、迷宮から脱出する。

ふいー、と、誰かが吐いた吐息が伝染したかの如く、皆が肺に貯めた息を吐き出した。


「本当に<黒粘体>の有り難さが身にしみた」

もしなかったら、と考えたらゾッとする、と。

普段はそれほど恐怖を口にしないレザードが、言い切った。


「オレなんか、ほぼ死んだと思ったんだが」

初撃の竜語魔法。

階位・威力の高さから<瞬間移動>での回避が不可能と理解した時点で死を覚悟したマックスの言葉に、他の侍組三名も同意の首肯を送る。


「ウチとメリウのフォローが間に合ってよかったですな」

割合纏まっていたのが幸いしましたな、と、ジオ。

何だかんだであの魔法を防ぎきるのに必要としたのは。

「二重に張り巡らせた<黒粘体>」レベルの物理・魔法の両防御力であった。

単純魔力による魔法だったなら<絶対魔法遮断>で済んだモノをっ、くそっ。


正直ゲームルールで戦ってたらアレだけで全滅だったね、という自分の言葉に、同意しか返って来ない。

いやぁ、合体魔法とか出来て助かったね。


「・・・でも、その後は今までと大差なく終わったけど」

ナガ吉、それは言わないであげて。

今までは極力、相手に何もさせずに勝つ、というのを徹底してたんだし。

あっちの手番が終われば、そりゃ、コッチのターンなわけで。

シオンの秘奥義の方の<神音>の酷さは相変わらずだったけど、マックスの対物秘奥義も洒落にならなかったしなぁ・・・密かにあんなもん練りあげてやがったのかコイツ。


また黒竜さん、トラウマになってなけりゃいいけど。


そんな疲労困憊、ただし着衣に乱れなしの自分達を見た衛兵さん達の、張り付いたような疑問顔を後目に。


ひとまず風呂に入ろう、と。

満場一致で決定した次第でありましたとさ。

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