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話せばそれは分かったかもしれないのに何だというのだ貴様等

「りぴーとあふたみー。 「ぷるぷる! ボク悪いスライム! 我が腕の中で息絶えるがよい!」」

自分は目の前にちんまりと丸まった粘液に対して、演技指導。

無駄なまでにいい声な外の人技能を駆使してのボイストレーニングも含みでお送りしています。


「ぷ、ぷるぷる・・・僕、悪いスラ・・・やっていられるかっ!」

体積のあった時分には、とても響きわたる重低音だった彼(雌雄同体なので正確には彼、ではないとは思うが)こと魔王スライム(微小)は、迷宮訪問二回目にして無言での奇襲という、まさにスライムの王道本領発揮状態で襲いかかってきた。

その余りの素敵さに思わずハシャいだいつものメンツ及びエイジの魔法によるカウンター空間蹂躙により、程良く余分な体を削られた挙げ句。

こぢんまりと残された僅かな部分からの再生復活をジオ謹製の<任意時間封印結界>(余りある神様ポイントの使用により行使される<時間停止>と結界魔法、その他謎の技術により構成される贅沢な結界。 ジオの指定した概念における時間の流れが停止する。 今回は「再生の停止」。 禁術に近い感じ。 ないこれヒドい)にて封じられ。


以って威厳在る重低音ヴォイスから一転。

幼く可愛らしい感じの声質にクラスチェンジ。


・・・なんか自分の背後で様子をうかがっている痴ロリンやナガ公が「可愛いよ可愛いよ! ねぇねぇ、あれ持って帰って飼おうYO!」「・・・不覚にも、萌えてしまった。 何あれ可愛い」とハァハァしているけど残念ながら飼えません。


名古屋迷宮二週目。

今回のお題目は。


「魔物と話そう」


でお送りいたします。


ちなみに、ココより前の階層にて話が出来た方ことスキュラさんは、懲りずにレザードにコナかけようとしたので憤怒の余りキング・ブラッドレ○を瞬殺する勢いのナガ公が放った秘奥技にて残酷に散らされました。

話が通じない連中もいるのだ。

困ったことに、敵味方双方。




若干は時間戻って、黒竜さん解体から幾ばくか過ぎた時分のお話をしよう。

・・・アレとかそれとかまだあったのか、とかいろいろありましたが、無事に黒竜部屋入り口に集結の一行。


帰るまでが遠足です、とばかりに来た道をのんびり戻って帰ろうか、としたその時。

ヴン、と、電源の入るような音と共に息を吹き返す、黒竜部屋前ワープポータル。


「「「「「「「「おおっと?」」」」」」」」


おい、なんか直ったぞ?

実はポータル封印の犯人、黒竜だったとかのネタじゃないだろうな!

まさかこれで各地を結ぶ転送装置とかも復活したりしないだろうな!(後日確認しましたが、超冤罪でした。 ここに、あんなことをしてしまった事をお詫びいたしますん)


「・・・で、どうするの? 入るの? 歩いて帰るの?」

と、小首を傾げるナガ公に答えるように、即時ポータルに踏み込んだのはレザード。

相変わらず躊躇せぬ即断っぷりめ。

お、姿が消えた。

転送されたようだ、どこかに。


「いや、物騒に言わんでも」

どこかってどこだよ、石の中だったらナガ公が荒れるだろ、と。

レザードに続いたのはマックス。

その後、ぞろぞろとポータルに飲み込まれていった一行は。

名古屋迷宮最下層より、居なくなった。


で、何の事故もドラマも自分の全裸徘徊もなく街へと帰り着き。


「おや、お早いお帰りですが、どなたかお怪我でも?」などとこちらに声をかけてきた衛兵を「ちょっと気になることが出来まして。 手伝っていただけませんか?」返答は聞かず無言でポータル前まで引っ張っていく。

「え、あ、ちょ、な、何ですかいったい」と、喚くモルモッ・・・実験た・・・善意の協力者を、今まさに一行が出てきたポータルの放り込み変化観察。


・・・何事も起こらず。


続いて自分もダイヴ。


・・・同様に、何事もなし。


以上、検証の結果行きのポータルはまだ死んでいる模様であることが確認された。

残念、毎回潜り直さないとダメなんだねぇ。

欲を言うなら、最下層マラソンが一番美味しいのだががが。


こうして、平和的に人体実験も終わったので衛兵さんを解放。

実験協力の報酬として、いつの間にやら拾っていた+1魔剣がエイジから彼に贈呈され。

「こんな高価なものはいただけない」「え、いや、ちょ、もっと寄越せというアピールじゃありませんから!」等、色々と口走る衛兵さんに、皆して「いいから」としか言わないプレイで押し通したりもして。


自分たちはひとまず宿をとり。(迷宮から若干離れた商店街の中心に宿がある辺り、温泉街ならぬ迷宮街っぽい)

野郎の陣取る大部屋にて無限袋をひっくり返しての拾得物集計。


総計117神様ポイント。

適当に全員に分配され、余りの物はポイント変換せずに次回持越しとなった。


その他、魔王スライムさんイベントドロップな<黒粘体>スクロールなどは侍組に配布。


以て、一日目の迷宮道行き終了。

ミッションコンプリート。

なんかくれ・・・あ、もうもらってたっけポイントとして。




で、二日目である。

宿の厨房をお借りして朝飯銀シャリ炊いて納豆を用意し、マックスに「貴様にはメシはでない」と言った段で<震突>からの<万里剣>コンボを食らいそうになったまンプレがあったが何もおかしくはない。


で、食後のミーティングにおいて出た意見は。

大別して「レア堀ハムスターすべし」「のんびり一回二回の周回でやめて黒粘体とかの訓練しようよ」の二つであった。

ハムスター派はシオン・レザード・マックスの「三匹」。

訓練派は残りの侍組。

癒し系二名は中立というか、どちらに転ぼうとサポートすればいいか、な、待ちガイルである。


「神様ポイントで飛行魔法とかとるべきだと思うんだ。 あと、飛行魔法とか飛行魔法とか、飛行魔法とかもいいな!」

マックス、お前はどれだけ飛びたいんだよ。

良い崖知ってるから今度案内するわ。


「さっさとポイントガッツリためて、全員回復魔法持ち、とかにした方がいいと思うからなぁ」

どんな状況かはわからんけど、もし各個分断されたりした場合にはワチキ等みたいな非・回復持ちは辛いからなぁ、と、シオン。

南の国での敵が風土病だった男の言葉が重い。


「俺は神様がらみの技能限界取っ払い系が欲しくてなー」

能力が高い、は、限界がない、に勝てないわ・・・後はシオンとかと同じかなぁ、とレザード。


それは能力が低い自分らに対する当てこすりでしょうかナガ吉ナガ吉、コイツの性的弱点は足指「・・・ほう? 詳しく」「なに言いってんだお前等?」べーつーにー。


(触手マットレスによる足指責め・・・「どうだレザード、指と指の間がイカすだろぅ?」「足の甲とかも気持ち良いいのほぅーメリウもっとホォぅ」・・・アリだと思います!)

鼻息荒く力説する痴ロリンの心の声は、とてもとてもよく聴こえた。

聞きたくなかった、と、エイジ共々グッタリする。

腐気ガードが最近間に合わなくなっている由々しき事態を何とかせねばならぬ。


「口に出してないから粛正されない! エリス覚えた!」

むふー、と得意げに語るのがムカついたので、明日の朝食はヒドい事する。


「具体的にはオニギリの具が、奴だけイナゴの佃煮」

「なにそれヒドい」

ぼそっとつぶやいたので、エイジにしか聞こえなかったと思われるが・・・イナゴの佃煮美味しいよ?

見た目がちょっとアレなだけだよ?

白い飯を割ったら「俺だよ!」って感じで仮面ライダーオリジナルっぽいのが顔出すだけだよ。

あ、顔だけ集めて具にしたら「それは殺されると思う」うん、自分もそう思った。

ちらり、と痴ロリンの様子をうかがったら、何故かコチラを向いて「NO! イナゴ NO!」と、青い顔して何かを必死に拒否していたが、いったいどうしたのだろうー。

イナゴ、美味しいよ?


さて、痴ロリンの処刑法が確定したところで。「御慈悲!?」「諦めろ・・・ああなった同士は、ヤる」


「そういやさ、迷宮のボスキャラの一部って、普通に会話できたよね?」

皆に、今更ながらの指摘をしてみる。

しかも驚くことに、彼らの時間軸にて千年ほどの大昔を覚えている模様でもあり。


「その割にぶっ殺しちゃったけどなー」

持ち前の先制速度で選択肢「話す」を潰しまくってくれたレザードが、明後日の方角を向いてボソリと言い。


「お前が言うな」

一番槍の後に大抵秘奥義で状況を「ミンチよりひでぇや」にしたシオンが続き。


「お前も言うな」

それでも残った幸運な連中に嬉々として襲いかかって刺殺せしめたマックスが、脳筋三匹の誘い受けを〆た。


「「「「「三匹は黙ってて!」」」」」


で、結局その後。

二度目の迷宮行きでは、会話出来る連中とはそれを試みながら行くのもオツじゃね? と言う流れになり。


お題目「魔物と話そう」、スタートと相成り。




で、時間戻って第五層。

ちょいと目を離した隙に舌噛んで自害した(!?)魔王スライム(微小)が崩れ落ちるのを呆然と見つめながら。

くそっ、失敗したっ。

コミカルに調教しようとしたら、まさかの自害とは。

・・・地味に噛みちぎった舌、というレアっぽいアイテムが手に入ったわけだけど、どうしたものかこれ。


・・・こうなったら仕方ない、とばかりに次なる標的に思いを馳せる。

今度こそっ。


「でも、此処から先は難易度高くね?」

タンタン、と、気軽に分身ステップを踏みつつ、レザード。

確かに、ここから先は奇襲受けたら普通に死ぬレベルの魔物がダースで襲い掛かってくる感じである。

<黒粘体>始め、各種結界を常時発動させているいつものメンツはともかく、永久化をエイジのみに頼るがゆえの膜の薄さを誇る侍組は用心をするに越したことはないという危険度である。


「早めに<黒粘体>や<永久化>取得ってのが地味に大事だなと実感するな」

地下に潜って若干頭の血が冷めたのか、単に今までの道行が危なっかしく感じたのか。

マックスが珍しく頭を使って感想を言った。

イベント物のため、もう魔王スライム瞬殺しても<黒粘体>スクロールもらえないしねー。

コツコツ鍛えるしか無いんだよねぇ、アレ。

一応、アレくれる神様もいるはいるんだけど・・・事実上、無理である。

・・・日に赤子を100人生贄に捧げろ、とかのプレイが要求される感じですので。

実用レベルまで鍛えてしまうまでの辛抱だ・・・アレさえ永久化してしまえば、事実上大気圏突破すら可能になる。


「まぁ、アレを永久化出来るようになってからハムスターすれば良いんじゃね? 俺とかシオンはさっさと回復系取得しちまえば最悪ソロ狩りすら可能だけどなー」

えーっと、後何点でアレとアレ取れたっけー、と、脳内暗算しだすレザード。

飛んで癒して病もイチコロ、とかやりたいなら余裕で三桁ぶっちぎる、とだけ言っておく。


「二手に分かれればいいんじゃないかね。 丁度いつものメンツと侍組で」

で、先にワチキらで侍組をパワーアップして、それからヒャッハーすりゃいい、と、シオン。

ま、たしかに現実的ではあるかね。

<黒粘体>訓練は・・・自分とジオがいれば少々ムチャ出来るしね。

一ヶ月も寝ないで頑張れば行けるか。


「うむ、プランが固まりましたな。 ではこの次から、侍組はしばし魔法訓練に勤しんでいただき、その間にウチらがヒャッハーして黒竜さんとかアヒンアヒン言わせて神様ポイント用物品を貢ぐ感じで行きましょうか」

鼻歌交じりに宝箱の罠・鍵解除を済ませて内容確認もせずに中身をゴッソリと袋に詰めつつ、ジオが場を纏め。

皆揃って次層への階段を降り。


びちゃぁ。

びちゃぁぁ。

びちゃちゃぁ。

びちゅっ。


「おいィ脳筋ども? なんで全部瞬殺してんだよ? もう黒竜さんしか残ってねーじゃねーか!」

珍しく、自分が怒るハメになった。

くそっ、くそっ、今しがたの吸血鬼っぽい人、明らかに何か話しかけてたじゃねぇかよぅ・・・orz




その巨体は、塔のごとく。

その首はピン、と伸び、最上段にて折れ曲がった顔、その両の瞳が自分達を見下ろしている。

その鋭い爪を備えた両の手は、脱力の極みを体現し、地面を指さす。

そしてその巨木を束ねたかの如き足は、驚くべきことに床につかず、浮遊していた。


最下層、黒竜の間。

自分達を出迎えたのは。


首を括った黒竜さんの、自殺体であった。


「・・・ちょっとショッキング過ぎて言葉がないんだけど」

流石の自分もドン引きである。

こんなの、皆殺しキングの死に様を見た時以来の衝撃といって過言ではない。


「スゲェ出落ちだ。 ワチキもびっくりだ」

呆れ半ばの笑い顔で、シオンが呟き。


「そんなに私たちのこと嫌だったんだ・・・」

そんな方向にショックを受けているのはエリス。

ああ、大丈夫。

嫌われてるのは間違いなく、自分達いつものメンツのみだ。

・・・散々惨々色々したからなぁ・・・。


「一体何やったらここまで追い詰められるのさ」

エイジも流石に絶句の模様で。

・・・ソフトなものなら、イベントシーン中に必殺技をブチ込み続けたとかはあった気がする。


「・・・oops」

ワタシ驚いたわー、と、棒読みでレザードにしなだれかかってそのまま押し潰すナガ吉。

・・・こんなところで始めんなよ?「ヤんねぇよ!」「・・・えっ?」「えっ?」「なにそれ卑猥」


「まンプレっと。 おお、オレ初めて言ったような気がするなこれ」

薄暗い天井から伸びる電柱のような太さのロープに目を凝らしつつ、いつものバカップル痴態をスルーするマックス。

畜生、独り身が苦しいっ。


「で、テンプレ会話も終わったことですし、そろそろ・・・」

サムズアップ後の首斬り、その後「shine」と言う呟きとともに振り下ろされる親指のゼスチャー。

死人・・・死竜に鞭打つ気か・・・流石過ぎて言葉が出ないけどあえて言おうこの外道。

ほら見ろ、黒竜さんもビックリして、振り子状の運動が激しくなってるじゃないか!


・・・んン?


自分は、ゆっくりと、黒竜さんに向かい合うと。

近くで渋い顔をしていたエリスを手招きして。

全視力を、開放した。




「で、なにか言いたいことは?」

偽装自殺を見ぬかれた瞬間、剣聖達によってたかってロープを切断され床に叩き落された黒竜に尋問する自分は。


「自分自身の防御力が高すぎてロープと重力では首が締まらなかった。 ムシャクシャしてやった、後悔している」

と、申し訳なさそうに石抱えてギザギザ床に正座させられている黒竜の言い分が何故か無性にムカついたため。


ベリっと。

彼の逆鱗を毟るのだった。


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