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判明そして方針迷走

えっ・・・?

セラの一言に、その場のメンツが笑みを浮かべたまま凍りついた。

昼時とあって喧騒に包まれている食堂にあって、その場だけが不自然なまでの静寂で異次元的違和感を発するかの如く。

音が、動作が、停止した。


ゲームにおける、<神の恩恵>システム。

それは現状、アクセス不可能ではなかったのか。

<塔>に集ったメンツらが幾度も幾度も試みて、まるで反応がないという結論を得ていたのではなかったか。


「いや落ち着こう。 セラ女史曰く『数日前』にシステムが使用可能になった、と考えるのが自然では?」

いち早く突っ込みどころに気づき立ち直ったかに見えたエイジ。


「えっ? 私、コッチに来て早々に魔法、貰ったんだけど?」

そもそも、神様システム死んでなかったけどなー? と。

セラはバッサリとエイジ論を一刀両断。


「なん・・・だと・・・?」

脂汗でも流れそうな勢いで驚愕するエイジを後目に。

サクッとやってみればいいじゃない、と。

レザードやジオが、システムへのアクセス、つまりは<祈り>技能を使用する。

瞬間、ビクッと。

自分たちに見えぬ何かを視認して・・・恐らくは生産窓のようなゲーム的な何かが見えているのであろう・・・小さく頷いたり口元に手を当てて考えこんだりする二名。


この場において、神様システム健在なり、か。

逆に考えるなら、<塔>周辺及び南の辺りが、システム死亡域と言うことになるのだろうか。


ともあれ。

どこがどうなってそういうことになっているかは、この際置いておいて。(どうせ考えても仮説しかでないのだし)


「ヒャッハー、ついに私も、飲まず喰わずで生きて行けるというわけかっ」

溜め込んでいたポイントが火を吹くぜぇ~、とばかりに意気込んで、ギラギラした欲望を目に、両手を組んでお祈りポーズの痴ロリン。

・・・ああ、まぁ、その、良かったね?


「うん、うん、うん。 システム生きてる、交信可能だ。 というか、記憶してたより<恩恵点>が増えてる気がするんだけど」

自分自身にしか見えぬゲーム的な情報窓を確認し、呟くように皆に伝えてくるエイジの言葉に、一旦窓を閉じたであろうジオやレザードも再び窓を開き出す。


傍から見れば、皆揃って食事前の祈りを捧げる一団に見えなくもないかもしれないけどコッチに食前のお祈り風習あったっけ?

無ければ只のキチ○イ集団ということで周囲に認知された、と見るべきか。

まぁいい、どうせモブだ。

実害さえ及ぼさないなら華麗にスルーしてやろうというものだ。

自分も即時開き直り。

早速祈りのポーズ。

我が偉大なる自由神よー・・・おおお。

自分の眼前に現れる、ゲームゲームしたデータ窓。

ああ懐かしや。

コレ系のを見るのは生産系レシピ窓以来か、と、微妙な過去を懐かしみつつ。


うん、確かに。

エイジの言う通り<恩恵点>つまるところの神様ポイント残高が、増えている。

しかも、この数値。

ちょっと記憶にない感じの、多さである。

はて、確かゲームやってた頃は新規アップデート狙いで金目のものをポイント変換してはおいた気はするのだけれど。

それにしたって、文字通り桁が違う量の増加が、確認できた。

うへぇ、知らない間にポイント長者。

ちょいと使い道は後で考えるとしても、だ。

自分は窓を閉じて、ついでで目も閉じて。

ふいー、と、一息。


「使えた。 ポイントは確かに増加してた。 しかも一桁多い感じの大幅増。 これってきっと自分の普段の行いが良いせいだよね!」

棒読みで、言ってみた。

当然、ツッコミ待ちである。

どうせ自分がこんなにポイント増えてるなら、連中だって似たり寄ったり、もしくは二桁くらい多かったりするんじゃね? とか内心ヤサグレていたりする。


が、しかし。

皆から帰ってきた返答は、案外意外なもので。


「いや、確かに増えてはいたけど、そんな桁変わるほどは行ってないな」

「そうだね、僕も似たような感じかな」

「私もそれほど多くはないかななぁ。 メリッさん、ただ単にゲームの時のポイント忘れてたんとかじゃないの?」

レザード、エイジ、エリスが、ツッコミといえばツッコミな返答を返してきた。

おや、増加量、個人差あり?


「ウチは、結構な勢いで増えてましたがなー。 それこそ、メリウの言うケタ違い、的に」

そう言うジオに、参考までに増加量を聞いてみたら、実に自分の倍以上。

流石坊さん、神様の覚えはいいらしい。


・・・あ。

そうかそうか、そういうことか。

神様ポイントって、そういうものだったっけ。

入手方法が、金目の物の奉納だけではないことを、すっかり忘れてた。


「本来<恩恵点>って・・・人助けた時にもらえるポイント、だったんだっけ」

皆に向け、思い出したことを口走ってみる。


そう。

そんな感じのものだった。

流石に細かいルールまでは運営側が全公表とまではしてなかったので分かりかねるのだけれども。

信仰している神様の定めるルールに基づき、行動に付随して加算減算されていく、いわば徳のようなもの。

それこそが<恩恵点>。

身内内呼称・神様ポイント、であった。


「あーあーあー、そういう事なら、まぁ、分かるわな」

ジオやらメリウのポイントが多いはずだわ、と、頷くレザード。


「そうだね、基本、切った張ったしてただけの僕らと比べて、分かりやすく医療活動やら食料生産やらして、桁違いの人命救ってるもんね」

そう言われてみれば、増加ポイント数も僕のいた村の人口とかと近似な気がする、と、エイジが膝を叩く。


「・・・そういえば私、どちらかと言えば食わせてもらってたりチョイ手伝い的なことしかしてない気も・・・」

うわ、私年収低すぎ・・・みたいな顔とポーズでボソリ呟く痴ロリン。

いや、お前さん、天災みたいなベヒモス屠って東の首都救ってるんだぜ?

卑下すんな。

たとえポイント換算なんぞされてなくても、充分以上に命救ってるんだぞ。


「あとは、そうですな。 ウチとメリウが信仰する神様持ち、というのも大きいのでしょうね」

なにせ<恩恵点>が若干得やすい、というボーナスありますし、とジオが追加説明。

そだね。

そんなのもあったね。

通常の「いいこと」した場合、そして自分たち二人はそれにプラスして「神様の教義に沿った事をした場合」という取得チャンスが与えられてるわけで。

更に言うなら、大抵「いいこと」と「教義」はダブってるわけなので。


「単純に考えて、倍だわな」

レザードが実に清々しく納得した顔で言ったのだった。




さて、では現状の整理をしようか。

腹に収めた昼食を胃が消化してくれてる間に、とばかりに。

エール飲みつつ皆でまとめてみたところ。


・神様の恩恵は「この地で」使用可能。

・恩恵が使えない場所での行動でも、ポイントが加算される。

・派手に人助けるとポイントガッツリ得られるぜー。 勿論分かりやすく、金品奉納でも良いのよ?


と言ったところであった。

さて、ココで問題が出てくるのが、金品以外でのポイント取得を目指した場合。


「どう考えても、国単位で目をつけられるんだよね、きっと」

実に面倒な事に、と、エイジが茶をすする。

自分らが色々ヤラカシタ東の国は、まぁ、国というより弱小都市とでもいうようなこじんまりした感じでなんとか、であるのでまだなんとか、と、日和れなくもないと思いたいのだが。

例えばこの、西の国。

どう考えても大国である。

既に王様とかにダイレクトアタックした身ではあるのだが、流石に表立っての活躍なんぞした日には。

ぶっちゃけ多数の要らんチョッカイが振りかかること必至。

有り体に言うなら、面倒である。

王政、貴族、異種族、妬みやら嫉みやら、大抵の矛先が向かうのは自分たちでなく周囲にいる善意の他人・・・等、等。

物理的に自分たちを害せる存在が居ないとしたところで、悪意は自分たちの周囲を愉快に食い散らかすであろうことも容易に想像できて嫌である。


「で、そうなると。 正体隠して世直しプレイ。 つまりは、特撮ヒーロープレイも楽しいもので、が、始まるわけなんだけど」

・・・なぁ、お前ら・・・やりたいかこの歳にもなって、戦隊モノごっこ、と。

心底嫌そうに吐き出すレザード。


一番ノリノリでやりそうだよなお前とシオン。

・・・とは、流石に言えない空気であった。


「どちらかと言えば時代劇的な何かになるんだろうけどね。 王様スルーするなら権力モノはダメとすると、必殺仕事人シリーズかな」

丁度侍だしね僕ら、などと、案外乗り気な同士エイジ。

あー、時代劇とか好きだったっけね。

個人的には三匹が斬るシリーズ好き。

ってか脳筋ズが南の国でやってたじゃねぇかそれ。

しかも派手に。


「・・・魔法少女モノとか、アリなんでしょうか?」

おずおずと手を挙げる痴ロリン。

アリと言えばアリなんだろうけど、でもそれやった場合は、エリス一人しか出来ないという一人晒し者状態になるけど覚悟はいいか?


うむー。

やれば出来る。

だけどなんというか、やったら何かを無くす。

そんな恐れを、皆がジワリと感じつつ。


結局の処は、冒険者家業で遺跡荒らすとかのほうが気楽かねぇ、と。

ロールプレイをする可能性やら労力やらを考えない方向に、結論は転がっていくのであった。




「えー、謎の仮面復讐剣士デスリヴェンジャーとかやりたかったのになぁワチキ」

「あえて、しまっちゃうオジサンごっことかはどうだ? 都市伝説になってしまえば、あるいは」

「・・・魔法少女トリオ、イケると思います!」

「えっ、トリオって、もしかして私も含めましたか今?」


夜に戻ってきた三名の戯言、及び、長身イイ歳カワイ趣味の陰謀にナチュラルに巻き込まれるセラ女史の乾いた声が、のんだくれの集うテーブル周囲に、溶けて消えた。

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