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朝帰りそれは藁しべビンタ

嬉しはずかし朝帰り。

酔っぱらい過ぎて大部屋に雑魚寝と言う初心者にありがちな光景となったいつものメンツ-1。

アルコールに浸された面々が死んだ顔でモソモソと宿提供の朝食(硬いパンと、ヌルくて草臭い濃厚なミルク)を食んでいるところに颯爽登場っ、集合約束光画部時間すらブッチギリ。


「申し訳ない、遅くなりましたなー」

怪我をした奴前に出ろ! 死んでる奴でも構わんぞ! こと、癒しい男ジオである。

趣味は健康。

健康を大事にしない奴は大嫌いだ! ぶっ殺してやる!

あと強姦なんてする奴はもっと大っ嫌いだ! 犯してやる!

的な何か。


「あー、おかえりー坊さんー・・・ンん? いま、このパン「ゴリッボリッブチブチィ」って言ったんだが。 なんという繊維質満載」

虚ろな目でジオに返答するメリウ。

見ればパンと言いつつガチガチの干し肉(通常ナイフなどで薄く削いで食べる)をマルカジリしている。

歯と顎、丈夫ですな? と、流石のジオも苦笑い。


「それは本当にパンですか? 他のなにかではありませんか?」

生暖かいミルクで口まわりに白い髭を作ったエリスが、こちらも胡散臭いまでに虚ろな目で漫才を開始しようとする。

前後不覚レベルでも笑いを取りに行きたいという本能が働くようだ。

なんという芸人魂。


「ははは、そんな馬鹿な・・・なにぃ、これは肉パン! 肉パンじゃないか!」

「ああ、まだパンと言い張るんだ」

「ボディブローの事を腹パンと言うのと一緒だね?」

「違うよ? 全然違うよ?」

「シンナーの事をアンパンっていうのと一緒だよね?」

「違うよ? 全然違うよ?」

「女の人がパンとお茶で股座を覆うのと一緒だよ!」

「それはそうかもしれない」

「「「「「違うよ? 全然違うよ?」」」」」

「ちっ。 「それはパンティーとでも言いたいのかな?」 とでも言わせたかったんだけどー」

「セクハラ狙いとか。 ははは、こ奴め」

「ハハハー」


そこまでお約束を展開し終えると。

・・・うばぁ、だるー、なにもしたくねー、息をするのも面倒だー、と。

一仕事終えた二名が「「こテン(ここまでテンプレ)」」と、テーブルに突っ伏した。


「あ、最後って「まンプレ」って略すと卑猥な感じに「R.I.P」」

突っ伏したまま何事かを言おうとしたメリウが毎度の如くエイジに安らかな眠りにつかされた。

後頭部にフォークが刺さってるように見えるのはきっとイリュージョン。

自分でなければ死んでるからね? とは、後日メリウが呟く独り言。


「んで、ジオは昨日なにしてたんよ?」

モソモソと美味くもないパンを齧って「口の中がパッサパサだよー、パッサパサー」とか言いつつ、シオンが尋ねる。

彼も皆と同じく、目が死んでる。

初心者プレイの緊急時以外魔法・薬禁止縛りが憎いっ、と、普段の救急箱メリウとジオに視線を送るが、サラリとシカトされたりもする。

FUCK。


「えー、あー、その、なんと申しますか。 街入口で応急手当てしてたら長蛇の列、騒ぎになって引っ立てられて、行き着いた先に王様の胃癌摘出と言う次第でして」

ははは、と頭を掻くジオに、一同「あ、あ・・・あ?」と、納得顔。

わらしべ長者ならぬビンタ(応急処置の身内呼称)長者とはコレ如何に。

アルコールに侵された一同の脳内には、映像的にカオスな世紀末救世主伝説ジオのビンタ、的なムービーが絶賛上映中。

・・・なぁんだ、平常運転じゃん・・・ってか、手段は確かに初心者プレイだけど練度が高すぎて流れの名医扱いだろうそれは、と。

腐った脳幹からのツッコミは、二日酔いの頭痛で霧散する。


で、更に詳しく聞いたならば。

余りの騒ぎにトカゲ兵たちにしょっ引かれそうになるものの「全員診てから行くから少し待て、な?」と一睨み。

なんだかんだで城に招かれ「初めて御会いした王様」より直々に礼をいただくことに。

「ワタシの胃も診てもらえるかね」「ははは、なんと言いますか、申し訳ない」

・・・とか冗談言ってたので本当に診たら病巣が見つかって即時処理。(流石に魔法を使った)

「いやぁ、御体、御大事に」「道理で最近胃が重いと思った」王様に超感謝される。

で、ジオさんったら王城で超歓待される運びに。

綺麗どころを侍らせて・・・二足歩行爬虫類だけど・・・穏やかに楽しませてもらったそうな。


「そのまま、昨夜は城で御厄介になりまして。 結果的にあちらとこちらの口封じが相互理解を示したので情報的には知らぬ存ぜぬ互いに喋らぬ、物質的にはこれを頂き今朝がた放免、となったわけでして」

そう自身の行動報告を締めくくり、アル中共の座る大テーブルの真ん中にゴトリと置かれた、掌に少し余る程度の大きさの金貨袋。

緩めに縛られた口からチャリンと覗くは、しかして山吹でなく白金の輝き。

パッと見た限りでは少し大判の銀貨に見えなくもないそれは、竜人の国の貨幣において最上位にある白金貨の山であった。




銅、銀、金、白金の順で価値が上がり、繰り上がり単位は銅→銀間で100、銀→金間で10、金→白金間で5。(銅貨の下にも一応は下級硬貨があるらしいが、現実問題使われていないためにそろそろ無くなりそうだ、という話である)

大まかに銅貨1枚でパン1個買えるか買えないかという価値なので、大雑把に1銅貨100円くらいと考えると。

銀貨1万円、金貨10万円、白金貨50万円。

ざっと見た限り、ジオプレゼンツな袋の中身が白金貨200枚前後・・・計、1億円。

ジオを除くメンツ内で一番稼いでいたシオンの所持金が、人食い熊という名の凶悪モンスター討伐褒賞込みで白金貨2枚分(百万円)というレベルであるので、大人げなく「その気になれば家が建つ」を実現して見せた、と言うわけである。

ははっ、チョロイ。

・・・色々と台無しすぎる。

貧乏プレイも面白いのに。


「あ、ちなみにこの金額には皆の影働きなどの報酬も入ってるという話ですので、ウチの働きだけに支払われた金額ではありませんよ?」

なんだかんだとクーデター情報を首謀者ごと差出し、かつその処理に大人げなく片手間で赴いた一行への、細やかながらの礼、と言ってましたなぁ、等と。

ジオはニコヤカに言った。

流石王様、ポンと1億くれたぜ!


貧乏プレイも楽しいもので、が、一日で終了のお知らせ。


・・・きっと、クーデター派の闇資金の一部だろうなぁ、等と思うが口に出さぬ情が、アル中共にもあった、と言うお話。

泡銭だし持ってても呪われそうだからあげちゃえ! と言うノリなんだろうなぁ、等と皆は思った訳であるが。

まぁ、貰える物は貰っておこう、とばかりに、皆は「銀貨配分銀貨配分」と周囲の同業者に聞こえるようにワザとらしく呟きつつ。


「あ、八等分でいいですよ?」

と言うジオをシカトして。

1人10枚ずつ。

白金貨が七名の財布に飲み込まれた。


残りは苦笑したジオが、取った。




こんな感じで。

最早穴だらけ甚だしい、初心者プレイ二日目が始まるのであった。


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