郵便それは走れ走れ走れ
マックス、エイジ、レザード。
ちょっと目新しい組み合わせの三名が、揃って酒場に顔を見せた。
一仕事終えた男たちを出迎えたのは、酒の匂いと雑多な喧噪。
狭くない店内、みっちりと詰まった人人人に、三人は思わず即時回れ右をしたくなるのをグッと耐え。
「くっ・・・メリっさんがこんな、こんな破廉恥なものを密かに完成させていたなんてっ」「・・・普段、私をどんな目で見ているのかが透けて見えるよう」「只のテンプレ活用しただけの判子作品だよぅ、含むものなんてないない。 そして安心してくれ、ブッチャケてしまえば貴様等では勃たない」「「それはそれでなにか腹立たしい」」「なんでやねん」「・・・あー、ウィスキーうめぇー」「え、あ、てめ、シオンッ、そいつは自分のトッテオキだったのにっ」「酒があったら飲むだろう? 誰だってそうする、ワチキだってそうする。 しかしお前の袋の中、酒多いな」「「わーい、シオンさん素敵ー。 こっちにもプリーズ」」「それ以上いけない! いけない! らめぇ、秘蔵の神話級飲んじゃらめぇ・・・」「へっへっへ、おおっと、とコレはなにかなぁ? ・・・なんで卑猥なコケシが出てくるんだ? 動くぞ、これ!?」「「・・・」」「あっれ、昔の製造物のせいで自分、女性陣に虫でも見るような目で睨まれてる気が・・・」「「睨んでんだよ」」「睨まれてるなぁメリウ」「むむむ・・・仕方ない、そんなに欲しいんだったらあげるよー、大事に使ってね?」「「えっ?」」「えっ?」「なにそれテンプレ」
ひとまず三人は。
出来上がっている身内の粛正に向かうのであった。
かけつけ一杯、ウェイトレスがこないので直に厨房からエールを人数分引っ張ってきた自分を出迎える一同。
すでに全員、すごいへべれけ。
どうしてこうなった・・・?
「いや、単にずっと飲んでたからだろうに」
きゅーっと一気にエールを飲み干したレザードがシンプルにツッコんでくる。
その背後には自ら椅子をかって出たナガさんの姿が。
なにこのバカップル。
あと、普通逆じゃね?
「背が、足りなくてなぁ・・・」
あと、乳が重いらしくて俺の肩に乗せて休んでるとかもいってたけどコレは嘘だよなぁ? と、当の本人に座っていながら周囲にバラすレザードさんマジ鬼畜。
「・・・お前ちょっと黙れ」
酔いの赤さとはまた違う顔の赤さを誤魔化すように、ナガさんは →むぎゅ← と、左右から質量を押しつけてレザードを黙らせる。
「おいおい、お宅のレザードさん見せつけやがるなぁうぇへへ」
「おぅおぅ、そっちのナガキチも見せつけるねぇ・・・あやかりてぇもんだなぁウヘヘヘ」
そんなイケナイお店のような光景に沸き立つマックスとシオン。
というか小者プレイ再燃かその口調?
「当ててんのよ、の上位バージョン。 挟んでんのよ、か。 出来ておる。 ん? 痴ロリン何唇噛んでんの? 血ぃ出てるよ?」
「くっ、何でもないですのだ! 寄せようと してもスカリと 空を切り じっと胸見る 酒の夜かな orz」
素直に親友どもの上級者ぶりに感心するがどこもおかしくないとホザく自分と、謎の唄詠む痴ロリン。
「もう僕は何も言うまい・・・ふぅ、ポン酒が五臓六腑に染みるなぁ」
最早諦めを通り越して悟りを開きそうになってるエイジが、どこからともなく手にしていた日本酒に口をつけ・・・って同士っ! 貴様もかっ! らめぇ、そんなに浴びるように自分のトッテオキ飲んじゃらめぇー。
酒飲みの席のいつものカオスである。
こんな感じのが、その後一時間ほど続いた後。
あらかたのバカ話下ネタその他の混沌も落ち着きを見せ始め。
「自分、そろそろおまいさん等のお話でも聞きたいのぅ」
三人の!
「おおー、ワチキも聞きたい脳筋s+1の武勇伝っ」
ちょっといいとこっ!
「「レザード×マックス×エイジ×レザード・・・の、大車輪話(゜∀゜)キタコレ!!」」
聞いてみたいっ。
「「「君等どんだけ飲んでたのよ?」」」
主に女性陣に、腐乱死体にも向けないようなガンくれつつ、三人がハモり。
顔を見合わせた三人はチラリチラリとアイコンタクト。
(俺、パス)
(オレも、無理ポ)
(・・・はぁ。 じゃ、仕方なく僕が適当に話すとするよ)
期待に目を輝かせ・・・ているんだろうが、どう見てもヘドロの凝り固まった感じの無彩色をこちらに向けてくる困った身内に対し。
エイジは自分たちの過ごした一日を振り返って聴かせるのであった。
広い街を縦横無尽に駆け回る、大八車があった。
荷物満載割れ物上等、石畳の段差をものともせぬシルクタッチの安心テクニックで、エイジは地図を片手に相棒たちに指示を飛ばす。
「左方向三軒先に51番の箱」
周囲から放たれる奇異の視線をスルリとスルーし、自身の前方と背後に向けて指示を飛ばすエイジ。
「了解」
エイジの指示を受けるやいなや、大八車上の荷物が、音もなく持ち上がる。
それは瞬時にエイジの頭上を超え、前方中空の小柄な人影に向かい高速で飛翔。
荷物の中途搬送・・・いわばトス役のマックスによる、大八車上からの荷物投擲であった。
割れ物を揺り動かさぬ慎重さ、重心をずらさぬ投擲、それらを行使してなお揺れぬ下半身。
見た目は地味だが、通常人には及ばぬ行為である。
そして、その投擲された割れ物を羽毛で包むかのように軽やかにキャッチして、ここ数か月で身に着けた輝くような営業笑顔で荷物を皆様にお届けする超絶美形(外見)少年のレザード。
「では、失礼しまーす」
表情とは釣り合わぬ、やる気のない平坦な挨拶を顧客に残して、次へ次へと配送をこなしていく。
そのベルトコンベアじみた危うさのないコンビネーション。
馬車もかくやと言う速度。
何より、どう考えても人外の体術を駆使するレザードの、中性的な美しさに。
配送ルートにて彼らに遭遇した住人達は、それが行き過ぎるまで足を止め、彼らを眺めることを強いられていた。
そんな配送途中。
路地の暗がりから身なりの薄汚れた少年たちが一斉にレザードに群がり荷物や財布を狙うという事件らしい事件もあったのだが。
その、なんだ。
一般人に分類される連中に、かのレザードを捕捉できる訳もなく。
逆にレザードが群がってくる少年たちのパンツだけ盗んで周囲にばらまくという超難易の無駄技能を披露する事となった。
スリ技能と無駄に潤沢な手先の精密さを駆使した強制ストリップ(ズボンと言う名の温情付き)である。
「レザードの旦那っ、後でオレにもその妙技を伝授してくれー」
興奮気味のマックスは、そのセリフを言った矢先にエイジの虎砲(陸奥〇明流)で膝をつく羽目となったりした。
「仕事中に下らないこと言ってると酷いよ? 相棒」
それを冷淡に見下ろすエイジさん超怖い。
「既に酷い事になってるんだがな、相棒」
辛うじて拳が密着する前にガードの掌を滑り込ませたことによって、なんとか腹部陥没の憂き目を回避したマックスが荒い息を吐く。
「おーい侍組ェ、遊んでないで働けー」
なかなか次の指示が来ずに動けないレザードが、漫才やってる野郎二人にツッコみ。
「「はーい」」
素直ないい子達の返事が、通りに響いた。
二、三言。
そのやり取りと大八車が去った後には。
集団強盗の少年たちが半泣きで自分のパンツを捜し、拾い歩くというアレな光景が残されていた。