徒歩不可そこは傷跡で
<環境適応>魔法がなければすぐさま凍てつくような高空にて、360°パノラマを見下ろすべく一回転ターン。
世界樹や首都をも一望するその先。
ひとまずの目標地点と位置づけていた、フリーダム大都市首都・・・名前が被るので<旧首都>とでもするか。
そこへ至る道筋が。
真っ黒な傷跡によって、斬り裂かれていた。
延々と。
真一文字に。
「崩落、なのかな・・・?」
日も当たらぬと思われる地獄まで真っ逆様であろうその傷跡、つまりは今の大地が砕け散った跡。
少なくとも、空を飛べる自分達ならば越えていける程度の障害ではあるが。
飛ぶ術のないものにとって、あれは、世界の果てだろう。
何となく、<世界樹>一帯が過疎ってた理由がわかった気がした。
陸の孤島、とは言ったもので。
よく今まで南からの侵略なんかがなかったものだ、と、感心するレベルでもあるけど。
聞いた感じじゃ、連合組まれたら軍事力数倍規模って話だったし・・・あ。
そうか、連合組んだのって、ついこの前のことか。
主に身内のせいで。
あーあー、ドングリの背比べ多面戦争やってたんじゃ、その他地方へ遠征なんてできないわなー、戻ってきたら国は無し状態だろうし。
無理言った、ごめんごめん、と。
自分は内心で見たこともない南の国に謝罪した。
さてと、他には目に付きそうな愉快地形はないようだし。
自分は<飛行>を切って、数分間の自由落下に身を任せる。
・・・今度は<黒粘体>張ってるから、血の池にはならないよ? よ?
よぅし自分、ちょっと華麗に着地して喝采浴びちゃうぞぅー。
「「「思い出させるな」」」
結果。
ジオ、エイジ、エリスから責められた。
体軸不安定な感じのブレた回転しながら着地失敗し、地表に激突したせいなんですがごめんなさい。
ちなみに、無事に済むとわかっていても、凄い怖かった。
・・・今なら時速200km超えるようなジェットコースターで、平然とサーフィンできるねっ。(その後普通に振り落とされて死ぬけど)
「もうしわけありません、てへぺろっ」
あざとく行ってみたら「反省の色がない」と、さらに怒られた。
解せぬ。
「で、なにかあったのか?」
散々に説教食らってフラフラになった自分に、今まで我関せず、の姿勢であったレザードが尋ねてきた。
下ネタ振らなければ、奴からの致死突っ込みが来ない。
ちぃ覚えた。
そういや最近エロい事してないから自分のちぃさんがおっきしても性欲をもてあますなぁ「とぅ!」あぶねっ。
危うく額に突き立ちそうになったレザードの投げナイフを回避。
「な、なんばしよっとですか」
「ろくでもないこと考えてたろう?」
なぜバレた。
「長い付き合いだし、何というかお前サトラレ状態だとだけ言っておく」
「もろバレと申すか恥ずかしいビクンビクン」
「そういうの、いいから。 質問に答えろ」
たまには真面目にならないか、と、ガチ心配された。
死にたい。
仕方なし、たまには真面目になりますか。
こんなサービス100年に一度あるか無いかなんだからねっ。
「一生に一度位しか真面目にならないって事か・・・」
「そうとも言う。 で、上から見たんだけど、あっちの先の方は・・・」
かくかくー、しかじかぁー。
まる!? まる! うまうまぁぁー。
説明終了。
端で自分達の話を聞いていた皆も、各々反応していた。
で、その後の皆との相談の結果、その亀裂とやらまで行ってみることになったとさ。
先ゆく箒部隊(飛べない連中用に量産するよう強要されたんだ!)を眺めつつ、自分は<世界樹>在住の人達や騎士達へ施した訓練を思い返していた。
結局、試しに教えてみた魔法を使えるようになった者はいなかった。
そもそも魔力がないので使えるはずもないのだが、もしかしたら、万が一に、の精神で。
確かゲームの設定上、魔力は魂の力、とかだった気がするので生きてりゃ(無生物の魂が無いという証明や、自分達にも本当に魂があるのかなんて証明も出来ないけどー)使えるんじゃないかなぁ、なんて楽観論で動いてたのも事実で。
危険性のない<回復>を教えて、ダメ元で使いつづけてもらったのであるが。
結局、ダメ。
発動の気配は当然として、失敗したときの成長判定やらも無いのか、魔力やら魔法やらが備わる気配は無かった。
何か見落としているのかなぁ、と、首をひねりつつ。
結局は鍛えることが出来る模様の技術やら身体能力やらを底上げして、かつ自らの力量と把握と、強敵に遭遇した場合の引き際判断スピードを超実践的に叩き込み、自分達は今旅の空にいるという流れである。
「こちらの住人」には現状魔法が伝わらない、というデータが得られたわけであるがサンプリング数が少なすぎて確証とは呼べないので頭の片隅に置いておく程度に茶を濁すとして。
この一月の間に分かったことが、まだあったりする。
こっちに来ちゃった連中間の魔法のやり取りについて、である。
結果から言うと、訓練教育でのやり取りは成功しなかった。
ゲーム内では操作窓が出てきてポイント使ってほにゃらららーって感じの簡単作業だったわけだが、こちらでは窓も出てこない。
外の人知識らしい「魔法の教育方法」的な知識は「いつの間にやら知っていた」状態ではあったのだが、それを実行してみても何も起こらず。
ううむ、何か根本的に見落としてる気がするけど、それが何か気づけぬわギギギ。
生産以外にゲームゲームした物が顔をのぞかせるもの無いのかねぇ全く。
「くっそ、何か状況打破できる愉快アイテムでも袋に入ってないかなぁもぅ」とばかりに無限袋を引っ繰り返してみたところ。
コロンと出てくる、一本の巻物。
手に取ってみると、昔懐かしの<灯火>魔法ではありませんか。
・・・あー、たしか金の力で下級魔法を覚えよう計画の時にうっかり買い過ぎて袋に放り込んだのがあったような。
自分は、慣れぬ教官やった気疲れでそこらに寝そべってぐったりしてるレザードの手を取ると、巻物を開いて契約者欄に彼の親指を押し当てる。
淡い光が巻物とレザードを包み込み、役目を終えたとばかりに巻物が崩れ去り消え失せた。
「・・・いきなりなんだー?」
「おめでとう、君は<灯火>魔法を手に入れたぞ」
「・・・今のは人体実験?」
「人体実験」
「こやつめ、ははは」
「ははは」
しゃぎゃぁぁぁぁ!
とまぁ、ここまでテンプレで。
魔法取得は、訓練× 巻物○ という結果に。
「でも結局、巻物無いとダメじゃ意味なしじゃん?」
ピーカー、と光る黄色ネズミの真似をしながら<灯火>魔法を使おうとしていたレザードを横目にシオンが聞いてくる。
どっかの地下迷宮とか、まだあって宝物漁れたりするのか? とも聞かれ、自分は沈黙せざるを得ない。
あー、確かにそうなんだよねぇ。
もういっそ、作れないものかねぇ巻物とか。
・・・やって、みるか。
シオン曰くの<魔法剣>だって出来たんだし、それが紙になるだけだよね!
茸とかにすればマジックマッシュルームか・・・後で試してみるとして。
「そう思うんならそうなんだろうな、お前の中ではな」
「うっせうっせ、キャベツぶつけるぞ・・・もしくは寝ている間に魔法茸口にツッコむ」
そんなセリフを吐いた後、強烈な腐気を感じて振り返ると。
必死に何かを我慢している感じのプルプルエリスさんがそこにいた。
視線も合わせず地面をじっと見ているようなので<瞬間移動>で背後を取ると耳元に向かって囁いてみた。
「シオン、飲み込んで・・・自分のマジックマッシュルームはぁんお辞儀をするのだポッター」
「ぶはぁ!?」
エリスさん、決壊す。
ちょっと色々外様にお見せできない汁(涙鼻水涎の三身合体)まみれになったお顔にタオルを押しつけてみる。
ほうらほらほら、いったい何を我慢していたのかなぁ、自分に相談してごらんン?
「べ、べつに何も妄想してなんかいないんだからねっ、勘違いしないでよねっ あとタオルありがとう」
「どういたしまして。 で、本当のところは?」
「シオンさんキノコまみれ ~次はメリウのヤリガタケ~」
「それはひどい。 あと槍ヶ岳は山なー」
「しまった!? 山があったらやおいにならないっ!?」
「山あり落ち無し意味なしか、略すと「おい」?」
「なんか偉そうですね「おい」」
「「おーい」」
そんなこと言いながら互いに手を振ってみたり。
・・・そんなテンプレ作業していたら。
「お い ィ !?」
「「げぇ灰仮面!?」」
兄妹まとめてシオンさんに仕置きされ候。
「あひぃー、自分の悪根焼き切っちゃらめぇぇぇぇ」
「いきなり何を口走っているんだお前は」
このひと月を思い出しながら飛んでいたら、いつの間にやら箒組の真後ろに着けてしまっていたらしく。
いつもの発作か、と、白い目で自分を見てくるレザードの声によって、回想脳から現実時間に引き戻された。
「・・・結局巻物は<魔法紙>になっただけで望んだ形にならず、だし、レザードが若干電気ネズミに近づいただけで終わったなぁ」
「何の話だ相変わらず脈絡もない」
「そういうお前さんはにべもなくて素敵ね」
「それはルビふって「死ねばいいのに」ってことですね分かります」
ははは、ははは、と、乾いた殺伐空気を出すレクリエーションをしつつ。
・・・ナガさんは自分等の他愛ないやり取り見てハンカチ噛むのを止めなさい。
「結局今のところは、魔法は手持ちで何とかするしかないねぇって話」
「あー、仕方ないんじゃないかね。 もう職業ごとの固有スキルと思って諦めるしかないんじゃね?」
「本当にゲームゲームした視点です事・・・」
「もうここまで来たらゲームと思ってた方が精神衛生上良いじゃん」
「まぁねぇ」
人生ゲーム異世界編的な状況だしなぁ、考え過ぎずにその程度でいるのもアリかもしれぬー。
情報が入ってくるにつれ、嫌な感じの背景想像とかしちゃってるしなぁ最近。
嫌だ嫌だ、忘れてしまへ。
「っと、そろそろ見えて来たんじゃね、あれかー、メリウー」
お前さんが言ってた世界の果てって? と、跨っていた箒の上に立ち指差すレザード。
指差されたその先には。
光届かぬ地獄まで続いているであろう、深い深い断崖絶壁。
向うの大地まで、距離にして1km程はあろうかという。
<世界樹>近郊を過疎化させていた原因であろうことは想像に難くない。
世界の果て、が、広がっていましたとさ。




