集結そこはそびえ建つ
あけました! おめでとう!
おざなりに合流してしまった感はあるものの。
ついに身内とも言える2パーティ分のメンツが、集合する運びとなりました。
結構やりたい放題やって他模様のお三方に、ひとまずオニギリなんかを差し出しつつ。
「三馬鹿ゲットだぜー」
「「「扱い悪くね?」」」
帰り道は空も飛ばずにのんびりと。
互いの過ごした日々を語り合いながら、世界樹じみてしまった<塔>へと向かう。
南の三馬鹿達のヤラカした出来事は、大まかにナガさんに聞いた通りであったが。
当人たちの口から聞くとまた味わいが違うもので。
「で、レザードなんか村とか町の嬢ちゃん達に大人気でなー、シオンの旦那と一緒にあやかりてねなぁトカ言ってたもんさ」
面白おかしく彼らの「日常茶飯」に触れられて、チョイと笑ったりもする。
・・・ナガさんの顔が怖くて見れねぇ。
「あー、んなこと言ったってお前らの方こそオネェ様方とかにキャイキャイ言われて満更でもなさそうだったじゃねぇか」
それに俺には嫁がいるっちゅーの、と、サラリ惚気るこの男。
モグべきだと思います。
・・・ナガさんの顔が、怖くて見れねぇ。
長身ガチマッチョの満面赤面の笑みなんて見たくないのです自分。
あと、話し総合すると貴様等モテモテ愉快紀行だったというわけか、チッ、女っ気ゼロの自分達の呪詛で「私は?」ゼロの「私ー」・・・女っ気?
「ローキック!」
エリスが、地面に突き立つ急角度のスネ蹴りを放つ。
自分を支える足を愉快に軋ませる高威力に、思わず笑みがこぼれる。
くそぅ、いい蹴りもってやがる・・・。
「お前らは相変わらず楽しそうだなぁ」
レザードが微笑ましそうにこちらを眺めて呟いている。
ははは、自分がサンドバックは日常茶飯と申したか。
・・・過去をちょっと振り返ってみてもサンドバックだった。
「ナチュラルに一回死にましたしね、このキチガイ」
あの時の状況を皆にも見せてやりたかったですなぁ、と、トラウマ同士絶賛募集をかけるジオ。
「「「スタイリッシュ個体→液体変化なんて見たくねぇよ!」」」
あれぇ、面白おかしく淡々と語ったのになぁ・・・。
ダメだったか、自分の未熟が恨めしい。
やっぱり顎の骨が砕ける辺りの描写が甘かったかなぁ。
コシャッて感じの擬音で攻めるべきだったか。
「メリっさん、メリっさん、それ以上いけない。 エイジさんが鮮明に思い出しちゃって遠いあっちで嘔吐を」
「同士ー!?」
案外打たれ弱かった同士に駆け寄り、背中をさすったり。
あとエリス、地味にタフに育ったね。
「キチガイじみた兄貴分が居りますので」
ああ、確かに。
ジオとか狂ってるもんなぁ「お前だよ」ですよねー。
「なんというかウチら南組と世界が違うんじゃねって感じのノリだなぁ」
侍組リーダーのチン子、通称マックスが「逆! 逆!」ああ失礼、わざと間違えた・・・マックスが、人間社会の闇と戦った自分達と比較してお前らはなんてファンタジーなことを、とか言ってる。
「真面目に話として残したら、別世界モノとして成り立つかもね」
自分らが過ごしていたエリアだと、魔物ばかりだったしねぇ。
「ワチキらのあたりは、人しかいないってレベルだったからなぁ、極端な」
ボヤくシオン。
あと、さっき十把一からげに飲んじゃったのはゴメンナサイ。
でも、これからは遠出しない限りシム<塔>になるから、そうそう戦争的なものはない・・・と、信じたい。
「シムタワーって言うと面白そうに聞こえるね」
今度はどこに手を入れようか、と、ようやく復活したエイジが濁った目を何とか澄ませ。
自分的には<塔>本体より例のアレに着手すべきかな、とか思うんだけど。
意味ありげに地面を指さしつつ言う自分に、悪い笑顔を浮かべる同士。
クラフター二人して、言外のコミュニケーションをとっているところに注がれる・・・腐気!?
「エリス?」
「な、なにも妄想とかプロット作成とかセリフ回しとか考えたりしてませんよホントですよ?」
「同士、ジャッジ」
「ファラリスの雄牛なんてどうかな」
「そ れ だ」
「ナチュラル処刑宣言っ!?」
「なんだかなぁ・・・」
エリスを腐ネタでいじって遊ぶ悪い大人たちを苦笑いで見つめつつ、レザードのいつものボヤキが風に消えた。
<塔>に戻れば大歓迎で。
難民組の人たちが三馬鹿トリオを囲む囲む。
英雄様のご帰還じゃァァァァ、と、ひとまず人ごみに紛れて叫んでみたらごらんの有様だよ!
「「「何でお前の善意はテロになるんだぁぁぁぁ」」」
わしょーい、わしょーいと胴上げされて人並みを移動するレザード達に罵られた気もするけど既に声も届かぬ距離に離された。
しばらく放置しとけば土地神様にでも成りかねない熱狂ぶりよのぅ。
「メリウ殿、これは一体何の騒ぎで?」
仕事帰りのテトラさんに、カクカクシカジカー、シカクイムーヴー、とばかりに事情説明。
「ほう、私達にとってのメリウ殿、国にとってのジオ殿と言ったところですか。 そういえば私達主催での恩返しもまだでしたなぁ」
あっれ、なにか雲行きが?
即時に逃亡出来なかった自分の敗北。
しっかりガッシリと、肩を掴まれていた。
周囲を見れば先住組の魔族さん達が集まってきていて・・・。
イカン、瞬間移動で脱出を・・・。
「発動しない・・・だと・・・?」
ふしぎなちからによってかきけされた!
「たまには流れに飲み込まれてみるのも良いのでは?」
瞬間移動封じの<空間隔離>魔法の構えのまま人力ベルトコンベアーで運ばれていくジオに、とても悪い笑顔でサムズアップされ。
自分は、脱力したまま、レザード達の後を、自動的に流されていくハメとなった。
最終的に、何故自分らがステージで歌って踊っていたのかは・・・記憶が定かではない。