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情勢そこは三匹が縊る

槍の人曰く、三匹が斬るごっこ。

参加者内訳、灰剣士シオン・格闘家レザード・侍マックス(侍組の影薄いリーダー)。

うん、ものの見事な脳筋構成。

剣術バカ2名と分身バカ1名による夢のトリオ。

うっわ、生活力無さそうで超心配。


「で、コイツラは南の元・巨人戦争地域で用心棒やら何やらやってるー、と?」

自分の質問に、コクリと首肯する槍の人ことフラナガンこと愛称ナガさん。

フランさんにしようという提言もなされたが(というか、自分がした。 ひっそり女の人「子」・・・女のひ「子」・・・痴女「可憐な美少女」嘘付くな! ・・・ですよーと、仄めかす為に)、腐乱に通じると却下された。

自分の真実を晒されるのが苦痛と見える。(あと可憐だの美「少女」だの、夢見るな)


黙ってれば美人さんなのになぁ。

中身も愉快なのになぁ。

そしてエロいのになぁ。


・・・あっれ、何その優良物件。

レザードってもげるべきじゃね?

よし、今度会ったらもごう。

もいで生やして、またもごう。


「で、やりたい放題やってたら紛争地域の国々に目を付けられて面倒事になった、と?」

茶をすすりつつ、腐乱に質問するエイジ。

ナガさん曰くの「小国群の小競り合い絶えぬ紛争地域」で、弱きを助け強きをくじく水戸黄門じみた活躍すりゃ、そりゃ煙たがれるだろうね、と続け。


「で、そこらの国共通の敵になって、結果として小国群から小国連合を誕生させて・・・追われる羽目になった、と?」

それで、逃走ついでで奴隷扱いだった魔族さん達開放して回って今に至る、と。

スケールの大きな話ですなぁ、などと他人事を聞くジオ。

こっちに来た早々ハッチャケた貴様が言うなという話である。

どっちも後の世の伝説になるとは思うけど、凄い脳筋と凄い癒し手だったら、後者の方が尾ひれ背びれ付くと思うんだ・・・。

しかもほとんど真実というね・・・死人が生き返って即クーデターとか。

ははっ、ワロス。


「どっちもアンサイクロペディアに「嘘書かせろよ!」って怒られそうだけどね」

三人で物理的世直しー、とか、神の使いが降臨したー、とか夢見るな頭おかしいけど真実、ってさ、とエリス。

・・・珍しく腐臭伴わぬ発言をして自分を驚かせる。

きょきょきょ、今日はどうしたんだ!?

あ、ああ、あの日で情緒不安定とかかずっとそのままでいて!


「えっ、私いつもこんな感じですよ? すよ?」

途端、目が泳ぐ。

・・・そうか、外に出さない「だけ」に、進化したのか。

まぁ、喜ばしい成長では、あるが。


「ちなみに、今日の妄想はどんなのだったの?」

「三匹がレゴブロック」

「なにそれひどい・・・もしくはアクエリオンってか? 凸凹組み換え三形態可能な意味で」

「その発想はなかった・・・やはり天才か」


「「「おいそこのバカ兄妹?」」」

「「サーセン」」


そんなこんなで、ひとまず遠足する事となった。

南へ。


だって、ねぇ?

その話が現在進行形ならば。

最悪の場合、連合軍こっちに来るじゃん?




お弁当持って、意気揚々と。

今日のオニギリは、密かに自信作だぞぅ。

聞いて驚け、ゴボウと鶏の炊き込み握りだっ。

余りに美味くて失禁せよ。


「・・・分かってたけど、凄いピクニック気分だね?」

皆のいる場所では珍しく、ナガさんが長文でツッコんでくる。

んん? 安心してもいいぞぅ。

自分の分しか作ってないからなっ。


「・・・!」

おふっ、う、嘘であります、人数の倍量持ってキタであります。

鋭い(石突による)ツッコミに息を詰まらせつつ。

ならばよし、と、満足げに鼻息鳴らすナガさんマジ欠食児童。


「おーい、遊んでないで行こうよー」

はるか上空からの声、見上げれば空飛ぶエリスさんの姿がそこにある。

ってか、はしゃぎ過ぎである。

おもちゃあげるの、もう少し待った方がよかったか。

と、箒にまたがって飛ぶエリスを心配しながら見物。

一応、落下制御の魔法は永久化してあるので、自分みたいに落っこちても血の池にはならずに済む・・・と、信じたい。


「・・・あれ、ナガさんが乗っても平気なの?」

恐る恐る、といった感じで聞いてくるエイジ。

<飛行>が使えぬエリス用に、と、自分が作成した飛行箒。

困ったことにナガさんも飛べないため、相乗りしてもらう事となった。

外の人大きすぎて、抱えて飛ぶのも辛いしねっ。


「そこらは安心して。 性能試したけど、巨人が乗っても飛べたから」

作成儀式で満月の夜に延々と踊り続けた甲斐があったというもの。

この箒、一応魔法の産物。

魔法発動条件が、月夜のダンスってわけさ!

超疲れました。


「どうやって巨人であれに乗ったのさ」

「空中で変身した」

「おk、把握」

流石に物作りには興味津々の男よ、くくく、等と男二人で話してる間に。


「・・・ちょっと楽しみ」

「飛ばすぜ! しっかりつかまってな!」

降りてきた箒の後ろに跨るナガさん及び、頭の変になってる痴ロリンが空に舞う。

「案外早っ」というナガさんの声が、やけに鮮明に聞こえた。


「さて、ウチらも行きましょうか。 放っておくとあの二人だけで事態が動きかねませんし」

同等速度程度出てますから、置いていかれると面倒ですし、と即時追いかけるジオ。

んじゃ、自分たちも急ぐとしますか。


こうして。

箒に跨った腐二人に先導されて。

自分たちは、困った身内を引き取りに出発したのだった。




難民受け入れから数日を経てなお、あの行軍遅い死神の列に追いついていないとなるならば。

簡単に考えて。


「全部、カタつけちゃったのかもねぇ」

空を行きつつ、並んで飛ぶジオやエイジと話してみたりする。

ナガさんの話によれば、三人はあえて人を殺さず無力化して回るという方法を取っていたらしく、魔法一発ドカンぐちゃぁ、というのもなさそうであるとの事。

それでも進軍がない、もしくは遅れている、となるなら。


「逆侵攻して纏った軍のお偉方を無力化とかしちゃったら、もう勝ってるってセンも有りうるね」

単純に考えるなら、シオンとレザードは無敵である。

なにせ、通常兵器では殺傷不可能である。

また、仮に魔法的な手段で攻撃されたとしても。

永久化された黒く粘つく結界は、むしろ魔法防御方面が強力だったりするし。

具体的には、重ね掛けされなければ自分等の広範囲殲滅魔法に堪え得たりする感じ。


「でもその場合、マックスが辛いことになりませんかな?」

彼の性格上、二人に任せて隠れてるとか、無いでしょう? とはジオの弁。

自分も激しく同意である。

あの野郎は愉快痛快熱血野郎過ぎて困るくらいである。


「うちのリーダーがご心配おかけします」

エイジはおろか、前行く箒組二人までこちらに頭を下げてくる始末。

い、いや、別に責めてるんじゃないのよ?

ただ、回復手段乏しい中、無事かなぁ、って。


「まぁ、平気でしょう。 シオンもレザードも永久化出来ますし」

<黒粘体>でなくとも、初期結界永久化出来るだけでも殆ど無敵でしょうし、と、ジオ。

まぁ、ねぇ。

あとは基本的に彼の腕にかかってるわけだけど。


「伊達に剣聖じゃないだろうしねぇ。 って、考えてみればあっち剣聖二人の槍聖一人じゃねぇか」

あっれ、自分ら、不要じゃない?


「いやいやいやいや、普通に餓死の可能性も・・・あ、飲食不要取ってますよね、少なくともウチらのツレどもは」

「あ、マックスも一応持てたと思う」

なぁんだ、だったら平気じゃん。

このまま適当なところで降りて弁当食って帰らない?


そんなことを言おうとした、矢先だった。

先頭行く箒組が、短く鋭く注意を発したのは。




「来たよ!」

地平線の彼方から。

壁が動くかのような、大軍を以て。

それらが、視界に入ってきた。

ひのふのみの・・・大まかに見て、四~五千人規模か。

あの程度だったら、普通に平らげてる気もするんだが・・・。

大集団の先頭を行く三人の姿を期待したが、それもなし。

あっれぇ、面倒になって逃げたのかなぁ。

このままじゃ<塔>方面に来ちゃうなぁ、コイツラー。


「メリウ、足止め、お願いします」

ジオの言葉に現実逃避をやめ、頷く。

了解お任せ、ひとまず壁作るよ。

<熱線><爆炎壁>の合体魔法。

集団前100mほどの地点に着地した自分は、それを左右の手で、両脇に放つ。

左右に放たれた<熱線>が地面を削りながら突き進み、行き過ぎた後。

それを追いかけるかのように、ボッと、地面からそそり立つ灼熱の炎壁。

瞬時に炎の壁が、全長500mほどに渡り、侵攻してくる集団の行く手を遮る。


「!?」「何だあれはっ」「神は我らに逃走も許さぬ気かっ」「斬られて死ぬか、焼かれて死ぬか選べと・・・」

集団からの悲鳴が、聞こえた。

ってか、逃走?


「メリっさんー、もしかしたらこの人たち、逃げ回ってる最中なのかもー」

上空からエリスの声。

ん? 

逃げ回る? 

なにから?

壁と壁の間、わざと開けてある数メートルの狭間に立つ自分が首をかしげたその刹那。


「上からくるよ気を付けてー」

ちょいと危機感を伴ったその警告に、自分は慌てて瞬間移動。

10m程も距離を離したその刹那。

元いた場所にドカンと一発、何かメテオ。

外の人の素敵動体視力を以てして、ようやく可視の速度であったが。

どう見ても、アレだった。

むしろ。

こんな登場するのはアイツしかいないわ。


「あー、すまね。 当てるところだったわー」

半ばクレーターじみたその場所から飛び出してくる、小柄な男。

無論。

レザードその人であった。




ああ、無事で何より。

音もなく着地しようとしたそれに向かって。

自分は今朝収穫したばかりのサツマイモを投げつけた。(※サツマイモはこの後スタッフという名のレザードが美味しくいただきました、生で。 無理やり口にツッコまれて「無理やりツッコ・・・フフッ」「キコエテマスヨー」「しまっ」)


「久しぶり。 生きてて何より」

歩み寄りつつ手を上げて、友人の無事を祝う。


「そっちもなー」

無理やり突っ込まれる前のサツマイモ片手に、にやりと笑うレザード。


この男の出現に沸いたのは、南から来た集団で。


「おわった・・・」「よりによって空の槍かっ」「むしろアレの手にかかれるなら本望っ」「俺、未だにレザ様が男装の麗人だと信じてるんだ・・・」「ふひっ」

あっれ、エリスとか<塔>のメンツみたいなノリだなコイツラ。

適当にやっても死なない気がしてきたからデカいのぶっ放すかな・・・<竜砲>準備・・・すてんばーい、すてんばーい。


「それ以上いけない」

慌てて降りてきたエイジに制止され、今まさに開こうとしていた召喚門が消え去る。

ああっ、契約竜さんゴメンナサイ。

喉元まで出てたブレスは次回まで取っておいて下さい。

・・・なんで止めるのさ・・・汚物は消毒しないと・・・。


「あれ、今なぜか汚物扱いされた気がっ」

「・・・きっと、気のせい」

箒組が何か言ってる。

ははっ。

ツッコまないぞ?


「お前ら一体今まで何してたの?」

この集団さん達、もう目が絶望で死んでるようなんだけど?

あーあー、ついに武器捨てて座り込みだしたぞ連中・・・というそんなこんなをレザードに聞いてみると。


「・・・えーっとな、話すと長いんだけど」

「短く」

「無茶言うなー」

「短く」

「ぅぇー」

短くさせた。


で、レザード曰く。

・奴隷解放して逃げ出すぜここじゃない場所へー、と、ひとまず北へ行こうランララン。

・追手がウザったくなったので、三人して連合軍司令部に電撃戦を仕掛けて制圧、さらに逆侵攻かけて各国代表の身柄拘束。

・連合解散及び終戦宣言及び奴隷解放及び追撃撤回させるも、折悪く末端まで連絡行き渡らず、逃げた奴隷さん達へと攻撃開始、死者多数。

・三人ブチ切れ、各国代表に太い釘刺した後、奴隷さん達攻撃した連中に間断なくゲリラ戦を仕掛け、生き地獄を見せ続ける。

・三人、段々楽しくなって当初目的を忘れる。

・気が付いたら今現在。←イマココ。


「おい外道」

「ハイ、スイマセン」

まぁ、その、なんだ。

ひとまずコイツラ、やっぱりやることやってたんだなぁ。

・・・展開早過ぎじゃね? とは思うけど。

自分たちと対比すると、同じ世界の話じゃないみたいになるね、きっと。


閑話休題っ。

さて、ンじゃ、この人ら、どうしようかね?

正直、受入とかは考えたくないし。

そもそも非戦闘員相手にヒャッハー出来る連中なんぞ・・・この場に自分一人だったら生かして帰さねぇ。


「よし、このまま帰そう」

そして面倒事はそのまま南の国どもに任せてしまおう、うん、そうしよう。

四六時中執拗に追い掛け回されてたと考えれば、常時「いっそ殺せぇー」状態だったろうし。

それに、お偉い方のスケープゴート的な役割も有るだろうしね・・・。


「と、いうわけで。 もう帰っていいそうでーす。 かいさーん」

拡声魔法で帰宅を促してみた。

反応は、芳しくなく。

「ど、どうせそんなこと言って後ろから襲いかかるつもりだろう!?」「ふへへへ、後ろから~ 後ろからぁ~」「死ぬ前にレザ様食いたかったなぁ」「・・・」

めんどくさっ。

もういい、わーかーりーまーしーたー。


「っておい、何する気だ?」

不穏な空気を察したか、レザードが自分を警戒しだす。

ええいだまらっしゃい、糞面倒なゴミ処理をするだけだってばさ。

殺しはせん、殺しはな・・・


「ちょっとしたトラウマを負ってもらうだけだから平気だよ、きっと」

そう言い残し、自分は<魔王スライム>に変身。

で。

動こうとしない集団を押し流さん勢いで・・・勢い余って飲み込んだ。

へっへっへぇー、残りの連中~。

早く逃げないと・・・どうなっても知らないぞぅー。

「今度はなんだぁーーー」「スライム、だとー!?」「にげ、にげろーー」等と聞こえてくるので、追いつくか追い付かないかというのを演出するため若干スピードを緩めてみたりする。

あとは、おもむろに止まって・・・身ぐるみ剥がれ、生まれたままの姿を晒した連中を吐き出してみたり。

けっ、おにゃのこ一人いやしねぇー、ゲロ以下の臭いがプンプンするぜぇと自分憤慨ぷんぷんっと来たもんだー。

おにゃのこ相手の触手モノとかしたーい!

「死んだかと思ったら飲み込まれた中で謎の触手に全裸にされた・・・な、なにをいっているか(略)」「返してぇー、服返し・・・らめぇ、また飲み込んじゃらめぇごぼぼっ」さぁて休憩終了、移動再開ー。

蜘蛛の子を散らすが如き惨状となり申したが、自分三歳だからわからないばぶー。

貴様のような三歳児がいるかと、遥か後方でエイジがツッコんでるのがわかって、ちょいと吹いたりもした。


しかし、まぁ。

ひとまずは鬼ごっこ続けようか、君たち・・・。

はははっ、まてまてまてまーてー。

どこへ行こうというのかねー。

全裸飲み込んでそのまま吐いても面白みがないなぁ・・・毛でも溶かすか、キャッチ&脱毛リリース。

おおっと珍しい、こいつは雷神剣・・・ってかシオンじゃねぇかお久しぶり、何こんなもんに飲まれてるの?

っておいぃ、楽しそうとか言ってこっちに突貫してくるなエリスぅぅぅ!?


こうして、自分発の愉快強制脱衣鬼ごっこは。

炎の壁が点に見えるくらい遠くの。

地平線の彼方まで続いた。


と、いうか、途中から面倒になって全員飲んで塊魂みたいになって運んで捨てた。

貰っても仕方ないから装備は返してやるよっ、運が良かったなっ!

全裸で帰るか粘液まみれの装備に袖通すか選ばせてやろうー。


いやぁ、清掃のあとは気持ちがいいねっ。

あとは皆でおにぎり食って帰ろうかー。




・・・って、あれ?

そういや自分たち、何しに来たんだったっけ?


ピク・・・ニック・・・?

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