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来訪それは無口なる

一気に人口が倍近くなりました。

シムシティだったら大喜びだっ。

そうでないから、ちと困った流れではあるのですが。


「ただいま。 ノナさん達への伝達は恙なく終わったよ」

何人か騎士派遣してくれるってさ、と続けて、エイジ。

朝イチで首都まで飛び、難民到来を伝達してくれたのだった。

おつかれー。

衰弱した難民たちの体調管理をジオと自分で必死こいてやってる間、その他雑事をエイジやエリスが担当してくれていた。


「メリっさんー、こんな感じで平気ー?」

今縫ったばかりっぽいシャツを広げて見せにくるエリス。

うん、いい出来いい出来。

エリスさんやればできる子。

だから普段からやれ。


「ぶー、もっと素直に賞賛してくれていいのよ? ってか褒め称えろ」

こんな感じで進めていいんだね、と、広げていたシャツを大雑把に畳むと、エリスは再び作業場に戻っていく。

何せ着の身着のまま以前の難民たちである。

ぶっちゃけ、痛ましい外見なのでひとまず服着れ。

という流れで、先住の<魔族>さん方の手も借りての大裁縫大会。

何故か服飾系スキルを若干持っていたエリスが現場作業の長となって仕切っていた。

予想外のスキルもちがいて助かる、自分今手が離せないし・・・。

ああ、テーラー半裸がいてくれれば一瞬でいろいろ終わったのになぁあの野郎どこにいるんだか。

究極的にはこんなところに呼ばれてないでくれ、と思わずにはいられないものだが。

さて、じゃ、ひとまずご要望にお応えして。


「痴ロリン偉いー。 痴ロリンカッコいいー。 痴ロリンマジコスプレマニアー」

褒め称えた。

最後の一言に「何故その秘密を知っている」的な表情を覗かせたが、口には出さない。

よし、よく<口に出さない>できましたっ。

しかしコヤツ、本気でわかりやすいけどどうしたものか。


「で、メリウは今何やってるんですか?」

回診終わり、異常なしです、と。

ジオが一安心、という風情でため息をつく。

不眠不休での見回り、お疲れ様です。


「自分は、ちと模型作り。 そろそろ精米機が必須になりそうなんで、単純な臼型の奴を設計してたー」

動力は相変わらず人力であるが、ちょいと有り余るパワァを使う想定なのでかなりの大型、かつ連装式。

足こぎペダルを回すと、ドッカンドッカンと杵が臼を突きまくるというシンプルなモノである。


「・・・デカ、過ぎませんか、これ?」

小型模型(動力部が自転車のような感じ)を手でシャカシャカ動かして楽しみつつ図面のスケールに気づいたジオに。


「そりゃね、だって、巨人サイズだし」

力有り余る動力でしょ、と、薄笑いを浮かべる自分がいた。




ドドドドドドン、ドドドドドドン・・・・。

案外、五月蠅いのね、これ。

自分はハンドルを握りしめると早くなく遅くなく、の速度を維持しつつペダルをこぎ続けた。

周囲で振り下ろされる杵の群れ。

ガンガンと籾が玄米を通り過ぎて白米へと変わっていく。

あとは、風にさらして(ただ風吹かすだけの下位魔法とかあるのだよ、買っておいてよかった・・・)ゴミとヌカ飛ばして。


「チャララチャッチャラー、精米完了っ」

所要時間、一時間を切りましたっ。

ひゅぅ、サラマンダーより、ずっと早ーい!

・・・あとは、白く輝くお米様を無限袋に詰め込んで、と。


自分は永久化光源が照らし出す秘密の精米所・・・有体に言えばメンツハウスの地下空洞・・・から、脱出した。

ひゃぁ、娑婆の空気だ、娑婆の空気だ!

・・・これから、給食当番なんだけどさ。

oops。


主食として粥とおにぎりを用意。

副菜としてお肉様を用意・・・食肉さんこと、ベヒモス肉だがね。

葉っぱ系統は、村の有志が提供してくださいました。

また、調理一般は村の女性陣を筆頭に、<魔族>の皆様方からのご協力いただき、誠に感謝。

皆でワイワイ作る飯の楽しいことよ・・・って、ああ、そんなに塩入れちゃらめぇぇぇぇ。

美味しいご飯の製造機、大量の羽釜を作ってくれたエイジさんにも、拍手~。


「鉄の在庫が、7割を切った・・・」

まだそんなにあるのかよこの鉄マニア。

今度掘るの手伝うから配膳手伝ってくれ。


「うまー。 おにぎりうまー。 茹でベヒモスハムが、またうまー」

鬼のような作業量をこなし、気が付けば作業開始前とは別人というような技量を持つに至った(どうやら外の人スキルは成長するらしい、実験成功でかした!)エリスが、欠食児童っぷりを発揮して大喜び。

うん、素直に美味しいといわれると嬉しい。

あと、微笑ましい光景だけどちょっと落ち着け成人の成りかけ。


「おこげの御握りなんて、懐かしすぎて泣きそうだよ僕」

エイジの、しみじみとした呟き。

変わり種として、あちらの方で焼きおにぎりなんかもあるんだけど、と。

自分が呟いた瞬間走り出すエリス。

耳ざといな。

食い物の本によれば、米50g≒砂糖20g 。

そんなカパカパと、量食うと。


ふ と る ぞ ? 


「こうなると味噌汁とか欲しくなりますな。 いや、このトマトスープも美味しいのですけど」

合わないわけじゃないけど、コレジャナイ感がすごいよね、と、ジオに同意。

ああ、味噌が手っ取り早く手に入らないものかー。

出汁素材とか塩しょうゆ砂糖酢等の調味料は無限袋内に唸ってるのに。

なんで味噌を備蓄しとかなかった自分ーーー。


「それって、ゲームでやった芋煮の時に使い切ったままって事じゃない?」

あのとき、味噌無くなったー、って騒いでたよね、とエイジ。

そんな昔のこと覚えてないよ・・・。

ってか、よく覚えてたねぇ。


「ああ、確かあの時。 メリウが<悪魔♀>に変身して調理してて。 自分に味噌塗って『私を食べてぇ』とかやったらレザードに鍋に蹴り落とされた挙句に周囲が『おメ子さんの出汁が!』『おメ子汁か!』とか騒ぎ出した事がありましたよね」

よく覚えてるねぇ、ジオも。

そこら辺の行動は珍しくもないから記憶が曖昧だわ。


「・・・あったね、そんなのも。 ってか同士、素で狂ってるね」

あと、<塔>のメンツがノリ良すぎるよね。

ああ、思い出した。

あの後、変身を♀から♂に替えて、ゆっくり鍋から出てきて「吾輩の出汁は美味であるかな? んン?」とかやったら、おメ子汁を嬉々として飲んでた連中が一斉にぴゅーっと吹いたっけ。

余りに綺麗なタイミングで吹いたので、虹かかったよね。


「そのあと、痴ロリンはじめ何人か<塔女子部>が、無言で汁貰いに来てたなぁ」

この場合は、おメ男汁とでも言うのだろうかね、とエイジとジオに振ってみた。


「「しらんがな」」

バッサリ切って捨てられました。

ですよね。

あと男汁って時点でザー「「言わせねぇよ!?」」。




ふむ、ひと心地。

目に見えて元気を取り戻す難民さん達の姿が、自分の心のハッピーバランスを上向かせてくれる。

あとは各々、周囲と協力して居住空間確保とかを行ってもらうとして。


「この集団の代表とかは・・・いるのかなぁ」

真っ先にお年寄り数名に聞いてみたけど、自分ではない、ついてきただけ、との事だったしなぁ。

若い連中は早くも畑仕事とかを買って出てくれてるし・・・まだ衰弱してるんだから、無理スンナ・・・。

エイジとエリスが監督がてら行ってくれてるから、何かあったら連絡来ると思うけど。


「どうしたものかね、事情とかはまだ聞かない方がいいのかね」

隣で<塔>在住者名簿なんぞを作成しているジオに、意見を求めてみる。


「現状は、あまり聞かない方向で行きましょう。 彼らにはどう考えても心身の安息が必要ですからな」

ひとまずは、腹いっぱい食べて、清潔な格好して、ゆっくり睡眠をとって。

人として生きる、最低限を享受してから。

初めて、その他に立ち向かうことを考えればいい。


そんなことを話していると。

居住スペース作成中な周囲の<魔族>及び難民さん達から、ざわめきが。

何事か、と、そちらに顔を向けてみれば。


「・・・」

ジオと肩を並べるような、巨躯。

案外細マッチョなジオに比べて、ガチ筋肉質。

重装の鎧をまとい、太く重く長い槍を携え。

返り血に外見を所々変色させた、あの人が。


こちらの姿を確認したのか、小さく手を、上げた。

相も変らぬ無口っぷりで何よりです。


まだそのキャラづけで行くんだ・・・。


「やっぱり侍組は全員呼ばれてるのかねぇ?」

「です、かなー?」

互いに目を合わせず、やってきた槍兵からは目を離さずに呟きあう。

ゲームではあまり絡まなかった、侍組の槍の人。

いつものメンツ、格闘家の槍の師匠にして実は・・・ごにゅごにょ。

ああ、でも。

ようやく、自分の懸念が一つ消えたー。




「えーっと、ひとまず。 槍の人、ゲットだぜー?」

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