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建築そこは食肉さんが踏んでも大丈夫

俺、三部作書き終わったら魔王ローキックと勇者ヘッドロックの話書くんだ・・・ゴフッ

暴君による圧政を神の御加護(祈りの言葉は「イキロ!」)の後押しで跳ね除け、自由への第一歩を踏み出したこの町。

喜びに沸く住人達に浴びせられる現実という名の冷や水。

天災の如き巨大な魔物の挟撃に遭ってしまいました。

もうここまでか、と皆に諦めが漂ったその時。

カカカッと現れた謎の救い主達が、訳も分からず逃げ回る住人達をあっさりと助けてくれたのでした。


しかし、残されたのは無残に踏み荒らされた町。

せっかくの明るい未来を夢見た高揚はどこへやら。

一転、町は、住む場所を失った人で溢れかえってしまうことに。


そんな状況を見るに見かね、二人の匠が立ち上がりました。

目を覆いたくなるこの焼野原じみたこの光景が、いったいどんな復活を遂げるのでしょうか…。




「で、どうする? 塔作って油圧エレベーターとかつけちゃおうか?」

「バイオスフィアを地下に造って有事に備えるとかどうだろう? 現実では失敗したらしいねあれ」


自分とエイジの明るい都市計画は、酒も入って愉快な感じに纏まりを見出せないでいたが酔っ払いだから気づかない。


「あああ、ダメな大人がまた飲んでる私も混ぜてー」

風呂上がりのエリスがすさまじい勢いの摺足で滑るように酒瓶をかっさらっていく。

だが惜しいな、それはもうカラだ。


「エリス、お酒は大人になってからだぞ」

僕は大人だから誰憚ることなく飲むけどねグビグビー、と、大人げないエイジ。

おいぃ教育者。

初講義が「大人って汚い」かよ、流石だなそこにシビれる憧れる。


「のああ、エイジさんのキャラがわからないっ」

悔しげに酒瓶を床に叩き付けようとしたのを自分に睨まれて中断。

スゴスゴとそれを渡してくるエリスさん超可愛い。

ちなみに勢いで割っていたら超怒った。


「エイジ ニハ ナイショダヨ」

部屋の隅にエリスを手招きして、麻薬密売人じみた行動に出る自分。

でも最近飲みすぎな印象もあるので、ジュースにしておきなさい。

そう、このサイダーにな・・・。


「わーい、ありがとう酒屋さんー。 うまー、シードル・・・げふふん、このサイダーちょーうまー」

リンゴの発泡酒シードル、英名サイダー。

うん、その、なんだ、こんなんジュースですよね?(この表記は個人的価値観ですので、飲んで捕まっても責任は取りませぬ)


「おい、同士。 エリス酒漬けにしてどうする気だ」

自分とエリスの頭を両手でそれぞれ鷲掴みにして仁王立ちなエイジさん。


「え、そりゃ当然、あんなことやこんなことを?」

主に酒の味、二日酔いの辛さ、その先に節度ある飲みかた、とかを学んでくれたらいいかなぁ、くらいかね?

ほら、量飲んで痛い目見て、その先に学べるものってあるじゃない?

後、個人的には苦味を楽しめるようになってきたら一人前って感じはする。


「おおー、メリッさんが珍しく大人に見えるげふー」

炭酸ゲップを豪快に吐き出すエリスさん・・・もうちょっと、その、上品にですね?

もう痴ロリンが子供だからか女捨ててるのかわからなくなってきてる。

そしてさらに言うなら、自分は常にジェントリーな大人じゃないか、なに言ってる?


「ふつうの紳士的な大人はストリーキングなどしない」

半裸の女連れで戻ってきた男、という称号を得た被害者エイジの言葉が重かった。

正直すまんかった。

でも、肩からタオル下げてたから先端突起隠れてたしセーフだよねセーフ。

あと関係ないけどストリーキングって何の王様なんだろうと思ってた時期があった。

さらに言うなら女の人がやったらストリークィーンじゃね、とか明後日方向なこと考えてた。


「で、そろそろ真面目にやらないと酒盛りで夜が終わるけど」

ふぅ、と、ため息をつきヤレヤレだぜって顔のエイジだが、貴様が一番飲んでるからね今日。

余りに酷いようなら<浄化>でアルコール抜くぞ同士。


「せっかくのほろ酔いが素に返るのも勿体ないなぁ。 じゃ、そろそろ図面引こうかー」

ペチペチと頬を叩いてエイジが気分転換。

んでは、これからは真面目に・・・物作る話しましょうか。


「あ、エリスは部屋帰って寝なー。 んじゃねー」

物作りにさほど興味のない彼女にはこれからの時間退屈だろうしね、と追い払い。

ぶーぶー文句言ってきたので、しかたないなぁエリ太君はぁ、とサイダーを二升瓶で握らせて「ノナさん辺りと飲んでおいでー」と袖の下攻撃。


こうかは ばつぐんだ。


エリスは いずこかへと たちさった。


メリウは エリスころがし を おぼえた。




そんなこんなで、野郎二人のむさ苦しい空間に立ち戻った一室にて。


「「では、始めようか。 クラフターのクラフターによるクラフターのためのクラフター会議」」


・・・それは、夜が白む頃まで続いた。




そして現れる、それ。


なんと言う事でしょう~。

あの荒れ果てた旧貧民町が、見る影もないほどに整地されたシンプルな街並みへと生まれ変わったではありませんか。

以前は、あばら家の群れといった感の、まさに貧民窟、汚家空間だった場所が。

質実剛健。

どうやって持ってきたのコレ、という一個数トンクラスの角石の群れを地面に埋め込んで作られた石畳続く道をメインストリートとする理路整然とした計画都市の姿へと大幅なクラスチェンジを果たしたではありませんか。

メインストリートの両脇に新たに建築された長屋状の住居にも、キラリと光る匠の心配りが。

基本石造りで仕立てられた外側からは想像できない内装が、まさかの木製。

さらに外壁と内壁の間に断熱材代わりの綿花を充填する徹底ぶり。

防音機能すら計算に入れた、まさにシンプルイズベストな機能美。

その他にも、上、下水道を新たに整備、長屋単位での共有スペースにすることで設置数を少なめに抑えコスト削減にも余念がありません。

更に言うなら、同じ長屋に住むご近所さん方に井戸端会議の場所を提供する形にもなる、そつのなさ。

また、浄水場を町はずれに整備し町の汚れを外に漏らさぬ配慮まで成されています。

そして、いつ襲い来るか分からぬ先日のような災害時に活躍を期待される・・・。


「非常用地下道を作って各家屋へ入口を設置しました。 出口は町の外の某所になりますが、場所は町の代表者のみへの告知になっています悪しからず。 外部からの侵入を防ぐため一方通行になっていますので、賊の侵入は不可能レベルに設定しています」

具体的には、重量ある下降式入口床と、地下道への滑り台を摩擦係数極小に仕上げてあります。

エイジと二人胸を張って、焼け出された人々やノナさんモノさん達を前に解説を繰り広げる自分。

背後に立てたボードに、エイジが見取り図や全体地図を随時張り替えてプレゼンテーションが進み。


「と、言うわけですが・・・なにかご質問などありましたらどうぞ」

隠しギミックとかはあまり仕込んでいない分、強度的にはベヒモスが踏んでも数分は耐えられる設計にしてあります。

主にエイジが目を血走らせて強度計算した挙句に、自分が変身して実際に踏んでみて確かめたのでもう完璧。

うむ、実に良い仕事が出来た、と、昨日の夜はエイジと二人で<神話級>備蓄全部開けちゃったぜ。


「何か、反応薄いね同士メリウ」

エイジがボードを片付けつつ苦笑いする。

あー、地味過ぎたかねー。

しまったなー。


自分とエイジがそんなやり取りをしている先。

住人たちとの間にエリスがちょこんと踊りでて。

まるで指揮者でも気取るように、両手を振るって、さん、はい。 合図。


「「「「「やりすぎ!」」」」」


・・・皆様に大好評いただけたようで、安心です。

後は実際住んでみてどうか、だけどねぇ。


あとは勝手に改造して下さい。




「焼け野原が数日で復興どころか・・・もはや新しい町が出来たと言うべきですね」

エリスと連れ立ってノナさんが新造居住区を探検に行ってしまったので暇になったのか、モノさんが満面の笑みでやってきた。

お、建物系とか実は好きだったのかな?


「コンセプトは最小剛健、必要最低限をクリアしつつ防御力は折り紙つき、を目指したよ」

モノさんに会釈しながら語るエイジ。

クラフター会議での丁々発止は、無駄ではなかったのだ・・・っ。


「とまぁ、あとは町をぐるっと壁で囲おうかなぁ、と思うけど良いかなー?」

なんか魔物多そうな印象だしね、と自分。

あと二日もあれば、5mクラスの壁は立つかなー。

偉大なりレシピと簡易生産。

連射連射でバカスカ建つぜ!

材料さえあればな!


「あ、は、はい。 大丈夫です、と言うか、誰も反対しないと思われます」

反対する理由がありませんしね、と上機嫌なモノさんに、ひとまず自分は言うべきを言うことに。


「で、それ終わったら。 自分らは<世界樹>に戻りますんで」

見つかってない連中が待っててくれると嬉しいけどなぁ、と、思いつつ。

サクっと別れを告げてみる。

モノさんの表情が少し陰り。

小さく息をひとつ吐く。

そして彼は懐から一枚羊皮紙を取り出すと、こちらへ手渡してきた。


<世界樹>所有権利書。

所有者名は・・・いつもの面子。


「いつぞや呑んだ時に皆さんの集団名はお聞きしましたからね」

メリウさん個人に、とするよりそちらのほうが宜しいかと思いまして・・・問題はありませんよね、と。

モノさんは淋しげに笑った。


「ノナ様とも話し合ったのですが、正直なところ皆さんにこの国をお任せしてはどうか、と言う案もあったんですよ」

もう受けた恩に報いるのに国自体くらいしか差上げられる物が無いんですよ、と続けるモノさん。


「ですので、メリウさんの<世界樹>所有の申し出も含めて国丸ごとどうだろう、と話もまとまりかけたのですが」

なんというか、エリスさんとジオさんがその場にやって来ましてね、と。

聞けばその話し合いは、クラフター会議をやった同じ時間らしく。


「エリスさんは酒瓶抱えてノナ様を誘いに。 ジオさんはたまたま通りがかったらしく流れでいらっしゃって・・・二人して開口一番「「世界樹だけ下さい」」です」

その時のことを思い出したのかなんとも面白い顔をするモノさん。


「落とし所はソレで結構ですよ? と、ジオさんが悪い笑顔で言ってきたので思わず吹いちゃいましたよ」

ああ、ジオの顔芸は至高だからねぇ。

あんなん笑う以外の選択しないよ。


「で、エリスさんはエリスさんで「メリッさん、ダメで元々言うだけ言おう、程度で聞いてみたって言ってたし。 ならそれが貰えたらそれで十分以上なんだと思うな」とか格好いいこと言ったかと思ったらノナ様拉致して自室に篭られましたからね・・・そこでもう話し合いも何もなくなりまして」

翌日、二日酔いのノナさんの世話で一日潰れましてね、と、ちょいと恨み言も吐かれつつ。

挨拶と共に一礼し、モノさんは何処かへと去った。




そして数日後、町を囲む壁も出来上がり。

自分達は一路<世界樹>へ。


「じゃ、レースしようか。 よーい<飛行>」

「うわ、同士きたなっ<飛行>っ」

「流石の卑怯っぷりですな合体魔法<瞬移全究>連射」


「・・・いいもん、歩いて行くもん」


忘れられて置き去り喰らったエリスが一番早く<世界樹>に到着して男どもを m9(^Д^)プギャー するのは、まぁ、蛇足。


空とぶうさぎは脳足らず、というオチでしたとさ・・・なんで空戦とかするかな貴様等。

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