採掘それは暴走で
首都から少し離れた場所に、採掘場を作りました。
自分一人じゃないのが今回の強みよ、とばかりに同士エイジと共に地下迷宮作成に余念がない今日この頃。
あまり掘りすぎると地獄につながっちゃうかなぁ、などと出来もしない妄想をしつつ。
今日も今日とて、掘れ、ほれ、ホレぃ。
「久々にマインクラフトやってる気分だなぁ」
この世界でもブロック単位で掘れたらいいのになぁ、と現実逃避しつつ。
ガッツンガッツンガッツでガッツン。
おおっとミスリル発見・・・こっちはなんと・・・ボーキサイト・・・?
灰剣士辺りが居たら夢のアルミニウムが我が手に?
超ジュラルミンとか超々ジュラルミンとかが、我が手に?
ふおおー、漲ってきたァーーー!
「狭いので騒がないで下さい」
何故か敬語のエイジがとても怖かったので即時黙りました。
でもなぁ、同士ならわかってくれると思うけど・・・
「ん? 節操無い地層だね?」
キョトンとした顔で無限袋に文字通りの玉石混交放りこみつつ首をかしげたエイジ。
そうじゃねぇよ!
そうじゃないんだよエイジさんってば。
ファンタジーな住人にジュラルミンの盾渡して驚かれたりとかしたくないもんかね!?
「いや、全然」
どうでもいいが手は動かしてくれ、とばかりに作業に没頭するエイジ。
ああ、そういう奴でした・・・。
クールに仕事するジェントルメン、それがエイジという男でした。
仕方なし、自分も真面目に無口に働きますか変身<人間♀>スタイリッシュ脱衣おっぱいぷるんぷるーん。
さぁてツルハシツルハシっと。
カツーンカツーンおおっとアダマンタイト。
掘削孔の中は蒸し暑くてイカンねェ。
「・・・目のやり場に困るんだが?」
とか言いつつ超ガン見してくるエイジさん。
ああ、そういう奴でした・・・
見たいものは見たい、下らぬ誤魔化しなどはせぬのだ! と言う紳士が、エイジという漢であったわ。
奥さんに殺されればいいと思うがいかがか?
あと無事に帰れたら娘さんにチク「ヤメテ!」あいよ了解、今回は見逃してやろぅ。
「ハメられた・・・」
肩を落として作業に戻る漢。
ククク、どうよ、ちょっとは漲ったろぅ?
「中身が同士なのわかってても襲いかかりたくなりました、まる」
しゃーないよねぇ、ソコラはー。
だってほら、おいちゃんらおじちゃんだし。
その、なんだ、ねぇ?
「「性欲を持て余す」」
ですよねぇー。
自分はエリス拾っちゃったんで中々発散出来なかったんだけど、エイジの旦那はどうだったよ? とか聞いてみた。
「あー、僕は案外暇あったから」
村守るのも不眠不休じゃなかったからねぇ、と続けるエイジ。
「でも、見張り交代程度で実質単騎の村防衛だったんだろ?」
頑張ったなぁ、正直村の超恩人って感じだし、若い娘さんとかが宿に押しかけてきゃーエイジさん抱いてーとか無かったのかいホレホレ吐いちまえよぅー、とか馬鹿話が花咲く。
二人して、手は休めず。
カツンカツンと掘り続け。
ふと背後を見れば、出口から差す日の色はすでに燃えるようなオレンジで。
二人同時に突き刺すピッケル、ピタリと止まる動作もシンクロ。
「「帰ろうか」」
ハモっておつかれ手を叩き。
自分とエイジは、帰路についた。
・・・変身解くのと服着るの忘れてて、ちょっと町の青少年とかを前かがみにさせてしまったのは、蛇足。
敗因はエイジも感覚が麻痺していたこと・・・。
単純作業は心が死ぬね?
おつかれさまー、と出迎えてくれたエリスに二人して手を振り。
自分達は食肉さんに踏み荒らされて適当に整地されてしまった旧貧民住宅街、現資材置き場にやってきた。
さぁて今日一日の自分と同士の採掘力が白日・・・日が暮れてるから橙日とでも言うのかね・・・に晒される。
無限袋を逆さに、だばぁ。
まずは石材・・・粘土・・・銅・・・鉄。
周囲にいた住人や騎士達がそれを見てギョッとしているのが分かるが、
「手品でーす」
と、白々しく言い放ってニコニコしてたらなんか拍手された。
エイジの、なにか諦めたような半笑いがちょいと気になったが貴様も道連れだからね、この見世物状態。
よーし、皆の視線を集めたし、ココで変身してドッカンドッカンとウケを・・・。
「猥褻物陳列すんなよ?」
ガッと後頭部掴まれて注意を受けた、チッ。
「ノリだけで色々すんな、な? っと、僕達頑張りすぎたんじゃないかね、これ」
説教しつつ前に視線を戻して軽く引いた声を出すエイジに、
「ん、なにがうおわぁ!?」
自分も袋の吐瀉物を確認し、驚愕する。
なんというか、食肉さんくらい、有りそうなんですけど。
そして、まだ、袋の中身、あります・・・。
自分は静かに、袋の口を、閉めた。
広い湯船で手足を伸ばし、ゆっくりと息を吐き出して。
あああああ、生き返るわぁー。
「今日はお疲れ様でした、見てきましたよ何ですかあの石山?」
半身浴中のジオが呆れ半分で聞いてくる。
いや、ちょっと暴走しちゃってねー、エイジが。
「メリッさんもかなり狂った量掘ったじゃないか」
僕だけのせいじゃないからねアレ、と、頭を石鹸で泡立てていたエイジが反論してくる。
共同浴場。
ひとまずエリスへの御褒美(という名の強制労働)で作った風呂を改装、増築してごらんの有様だよ!
大人10人程が一気に浸かれる浴槽と同数が使用できる洗い場を完備。
燃料は薪。(廃材が溢れているため)
一時期<爆炎壁>を永久化して熱源にしようとも思ったが、インフラ整備にいちいち永久化魔法なんて使ってたら自分が死ぬ。
そんなこんなで、普通の薪風呂が出来たわけだ・・・レシピのお陰で、2つ。
熱源の有効利用のため隣り合った施設になるけど、そこら辺は今後運用考えて下さい。
・・・と、モノさんあたりに案件は投げてある。
水源は現状上水道の水をそのまま引いてきている。
案外水量豊富なのが助かる。
クーデター起きなかったらこの風呂に使った水代で百人単位の食費が賄えたというから・・・風呂の文化は育たないわなぁ、そりゃ。
ノナさんとエリスの姦しおにゃのこトークで「お風呂? 水浴びのことですか?」「oh」というやり取りがなされた、というのはさっき聞いた。
無言でノナさんの襟首掴んで風呂直行したというエリスの満足気な顔といったら。
「さて、材料はアレで足りると思うし。 明日からはいよいよシムシティだね」
ザブっと湯船に肩まで浸かったエイジが、深くため息をつきつつ言った。
「そだね、どんなのにしようか。 水道用ポンプ設置とか面倒だし、平屋かね?」
石造りだと漆喰で固めるんだっけ? とか家談義になったり。
焼けると脆くなるんだっけ・・・んじゃレンガ焼いて・・・いっそ木造というのも・・・云々カンヌン。
「お二人とも、ノボせますぞー」
早くも上がり支度のジオの声に、自分とエイジの目が醒める。
ああ、サンクス坊さん。
「僕らも上がろうか」
「そだね」
んじゃ、キュッと一杯やりながら。
明日の建築計画でも練りますかぁ。