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帰路徒歩それは御褒美で

現状がどうであろうが。

自分がどう思おうが。

誰がどう過ごそうが。


それでも世界は回ってる。


「とか何とか言いながら、あーさー」

長い長い夜の番。

途中から警戒するのも億劫になって、無限水筒の水で延々と酒を量産していた自分がいる。

なんか変な感じで脳内スイッチが入ったのか、もしくはお月さんがキレイだったからか。

<神話級>が六本も出来ちゃった。

うち五本はもうないのだが。


「なん・・・だと・・・」

モソモソ起きてきてラジオ体操始めたエリスに朝の挨拶がてらにそのことを伝えたら、即時orz姿勢されたよ! 不思議!


「いや、飲み過ぎだろう常識的に考えて」

あとおはよう、と、エイジも起床のご様子。

おはようエイジ。

あれ、ジオはまだかい?


「あー、まだ寝ていた・・・と思う」

自分の問いかけに言葉を濁すエイジ。

んン? またあの坊さん愉快な寝相でもしてるのかいなー・・・。

ペラリとテントの入り口を、めくって中を覗いてみたならば。

生きてるのか死んでるのか、パッと見分からぬ呼吸の浅さ。

即身仏かコレ、という佇まいの。


「なんで結跏趺坐よ・・・?」

姿勢よくアッパー座禅組んでるジオの姿。

寝るついでで悟りでも開くのか、ジオさんや?

だが、もう皆起きたんだし、貴様も起きねばね?

自分は<悪魔♀>に変身するとジオの背後に回る。

そして体を捻ると、一気にそれを開放、巨大な質量をジオの側頭部に打ち付ける。


「おっはにゅー! チネェクソ坊主!」

ブルルン、と唸りを上げる大きなおムネ。

しっかり足腰踏ん張らねばよろめいてしまいそうな勢いを乗せ、乳ビンタが炸裂だ。

脂肪分の柔らかさで外傷を負わせず、頭蓋の中身に重さを徹すガチ技なのは秘密だ。

着弾、いい手応え・・・いや、胸応え?

意味なく叫んでみるか、おっぱ応~。


「だがウチには無意味。 カウンターの応用で重さを貴様に返すぜ!」

なん・・・だと・・・。

ってか、ジオ、いつの間に目覚めてやがった・・・!?

打撃をそのまま打ち返されて立板のように潰れていくオッパオの痛みを驚愕で塗りつぶし、自分は即時変身を解いた。

巨大突起物が消え、打ち込んだ衝撃が胸の前を行き過ぎる。

ブワッと衝撃波がテントを内側から打撃し、全体を派手に揺らした。

なんて、威力だ・・・。


「殺す気か!」

「お前が言うな!」

ですよねー。


「「と、ここまでテンプレ」」

早朝漫才をしてしまった。

外の二人の、うわぁ、という顔が、しばらく忘れられそうにない。




簡単な朝食をでっち上げ(干しトマト使ってミネストローネ作ったら不評だった。 美味しいらしいけど、その、見た目が、ね? 思い出しちゃうらしくて、ね? 正直スマンかった)、残させるのもモッタイナイので、なんとか強引に胃の腑に収めさせる。

ご馳走様でした。


「「「ごちそうさま・・・コポォ」」」

なにかこみ上げてきている三名を、ひとまずは安静に放置。

テントなどを片付つつ、赤いスープ系は・・・しばし自重しようと思った。


そんなこんなで出発。

三人ともすでに通常状態に復帰。

流石である。


「なんだかんだで昼過ぎくらいには首都というか町に戻れそうかな」

来たときは飛んできたし、結構距離感が曖昧である。

程々早いペースで踏破していると思うんだが。


「ぶーぶー、飛べばいいじゃんー。 いいじゃんー。 そしてのせてけー」

アヒル口になって抗議してくる痴ロリン。

あっれ、昨日、色々ガンバロウとか言ってなかったっけ?


「ううっ、聞こえてましたか・・・あの、ナシ、というわけには?」

気まずそうに聞いてくるエリスに、自分は満面の笑顔で答える。


「口だけの奴に飲ますコレは無いなぁ」

言いつつ袋から、今朝方出来たトッテオキの<神話級>を取り出す自分。

キラリとエリスの目が光ったのが、見えた気もしたが無視した。


「・・・頑張ったら、飲めたりしますか?」

目だけ爛々と輝かせて聞いてくるエリスに、


「無論。 自分は<頑張った奴は報われるべきだ派>だ」

酒瓶をしまい、嫌な笑顔で応じる自分。

どう見ても詐欺師の顔に見えた、とはエイジとジオの談。

いや、騙さないよ? 頑張って歩いたらあげるよ? むしろ先渡しでもいいのよ?


「いい。 町まで歩く。 そしてメリッさんに風呂作らせて汗流して。 そののち美味しく頂くことを宣言するっ」

鼻息荒く早足になるエリス。

先頭にたつと自分達を置いていく勢いで競歩競歩。

あと、知らない間に条件追加されてるけど風呂はドラム缶風呂でもいいのかね?


「ダメ極まりない教育のモデルケースを見た気がする」

アメが甘すぎる、と、エイジがボソッと呟き。


「未成年を釣るのに酒出すメリウへの説教は・・・町に行ってからですかねぇ?」

ねぇ? と、エイジとうなづき合うジオ。


「・・・<伝説級>三本くらいで手を打たない?」

自分はダメ元で買収を試みた。


「「NO」」

声を揃えて、拒否された。

挙句、即買収とか保護者的立場としてどうよ、とか。

延々と説教喰らうハメになったのは・・・蛇足。

いきなりトップスピードで早足したエリスがヘバッて、後続の二位集団に飲み込まれるのは20分後であった、というのも蛇足。




ベヒモスに踏み荒らされた町の復旧工事真っ最中に、自分達は戻ってきた。

瓦礫を担いで集積場所に積み上げていたモノさんに即時見つかり、自分達四人はノナさんの元へと連行される運びとなった。

で、色々話してエイジも紹介。

彼への感謝と共に、守っていた村への兵員即時派遣を行うモノさん。

また、一応魔物の集団を掃討してきた事も伝え、今後の警戒の糧にでもしてもらうこととした。

たまたまノナさんへ報告しに来てた見知らぬ騎士が「そんな大群居るわけない嘘つくな」とか言い出すので、耳引っ張って外に釣れだした挙句に<禁じ手>で喰らった魔物集団の装備の山を袋から排出しきってその騎士を埋めたりもした。

重量で死なないように空間残す感じでパズル的に組み上げたので、頑張れば今日中に脱出できると思う。

頑張らないと死んでも出れんが。


「ただいまー、何あの小僧?」

ストレートにモノさんに尋ねてみた。


「申し訳ありません。 先週入団したばかりの見習いでして」

剣の腕がそれなりなので、それを鼻にかけていまして・・・など、実にわかりやすい説明を頂いた。


「チャンバラしたくて入団したら避難誘導だの報告の使い走りでブーたれた、と」

なんてよくいるキャラクター・・・っ。

自分がちょっと感動しているその横で。


「でも、いきなり魔物の装備で出来たパズル迷宮に閉じ込められるというよく居ないキャラになったようだけど・・・」

「相変わらず気に入らない相手への沸点が低いですなぁメリウは・・・」

「分かります分かります、ボクも最初いけ好かない爺とか呼ばれました」

「敵意とかを直接反射してしまう感じですかね」

「私気づいた。 ノナさんとサブリーダーの一人称が被ってる件について」

自分の性格診断会議及び、我が道を往くエリスさん素敵! な空間が発生していた。


「・・・」

自分は、ちょっと無表情に、そちらをじーっと見つめてみた。

じーっと。

じー。


視線の先、性格診断してた皆が、何故か我先にと、逃げ出した。


「え、あれ? みんなどうしたんだろ?」

きょとん、とその場に残るエリスの頭を無表情に撫で付けて。


「一段落ついたっぽいからエリスへのご褒美タイムと行こうか」

ほいよ、と、酒瓶一本手渡して。


自分はひとまず、風呂でも作ろうと思う。

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