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発覚それは限定解除

光の雨に打たれつつ、気持ちの悪い語尾マークに「シネ」「シネ」と大絶賛を受けても自分は元気です。

洒落でやったら出来ちゃった、という笑えるようなそうでないような状況である。


「できた、ねぇ・・・」

エイジが半笑いでこちらに視線を投げてくる。

ういー、と、こちらも半笑いで肩をすくめてみたりする。


「どういうカラクリなんですかねぇ、これは」

早速ジオも同じように試し、再び降り注ぐ当たり判定・・・と言うか押し判定・・・付き光の雨。

ふむ、自分だけのユニークスキルでなくて一安心。


「んー、色々試すしかないかね」

幾つか仮説は思いつくけど、と言いつつ。

もう一つ思いついたのを実行してみんとする。

着想は合体魔法と同じく漫画。

使うのはオリジナルの様に5つでなく3つ、更には種類の違う感じで。


<全究回復>と、右手親指に光を灯し。

<白銀癒手>と、右手人差し指に光を灯し。

<浄化>と、右手中指に光を灯し。


「合体」

三つ指のロボットアームの如く、光灯す三点を、合体。

僅かずつ色の違う白光が、ピッと弾いた三本指を鍔とする剣になる。

おおお、という、エイジ、ジオの驚きをBGMに、自分は光の剣を真一文字に振り抜いた。


かすかな風切り音と共に振り抜かれたその剣の軌跡を追うように、光の雨が乱れ飛んだ。


「今のところ、だけど。 属性合わせたせいか反発もなさそうだね」

神様との交信がなくなった、というルールの喪失を穴埋めするかのごとく。

同時に魔法は使えない、と言うルールも喪失している、と見るべきか。


「ルールの不在、とするなら。 魔法だけじゃないのかも、ね」

言うなり抜刀し、エイジが中空を斬りつけた・・・気がした。

しかも、複数回。

鍔鳴りの音だけが小さくチン、と、微かな残響を残す。


「エイジ、今のは?」

ジオが眉根を潜めて尋ねる。

彼が何をしたか、知覚出来なかったのかもしれない。

かくいう自分も、なんとなく、でしか分からなかったので大きなことも言えないが。

でも、恐らくは・・・


「うん、やっぱり、使えた。 連撃と、先の先の同時使用」

ゲームでは併用不可能だった技の合成が、あっさりと実現。

エイジが満足気に頷いている。


「流派技能もそう、か。 となると、後は生産とかその他技能なんかか・・・」

何か混ざりそうなものあるかなぁ、と考えるが、別にマラソンしながら薬作ったりするとかに優位性は見当たらないしなぁ・・・。

あーでもない、こーでもない。

野郎三人なのに姦しく実験を行う傍らで。


「・・・私をノケモノにして酒飲んで盛り上がってる駄目大人たちがおるわ・・・」

体育座りの半眼状態でこちらを嫉む、エリスの姿があったりした。




「ゴメン。 起こしちゃったか」

謝る自分に、エリスの半眼状態は動かず。


「まだ寝てていいよ? 僕達が五月蝿いようなら黙るから・・・と言うより、もう休むから」

それでいいよね、と、自分とジオに目配せするエイジ。

自分とジオは黙って首肯。

実験はまた後日でいいしね。


「あ、結界は張ってあるけど一応自分が夜番に立つよ」

そう言い残しテント外に出る自分。

外の人の高性能さで三徹夜位なら我慢できることはすでに実験済みよっ・・・。


「あ、ちょ・・・言い出したら聞きそうにありませんな。 では、お言葉に甘えます」

聞き分けよくジオがそう言ってくれる。

変に粘られても双方面倒なだけなので正直助かる。


「辛かったらいつでも交代するから声かけるんだよ」

エイジも自分のワガママを優先させてくれたようで。

ありがとう同士。


「うー、地味に目が冴えて寝付けないのですが」

なのでお酒プリーズー、と、まダオ(まるでダメなオンナ)化したエリスの声に「エリス今何歳だい?」「15さいー」「うん、正座」という一連のお約束が展開され。


三人の寝息が聞こえてくるまで、そう長くはかからなかった。


さて、余程のことがなければ張った結界でどうにでもなるはずなので。

自分は一人、外で一人酒をチビリとやりつつ。

現状について、考えを巡らせる。

体は昔のゲームで操っていたキャラクター。

心はそこら辺のオッサンな自分、ただし外の人補正があり精神的にタフ。

・・・と言うより、現在の状態を言い表すならば。


「外の人の性格に、引っ張られているって感じ、なのかも」

今間借りしているこの体に、自分以外の明確な意志が宿っているのではなかろうか、と思うことがいくども、あった。

声が聞こえてくるわけでもないが、体がそう言っている、と感じることが、ままあった。

もしかしたら。

どうにかして、外の人の心と意思疎通できるのではなかろうか?


「メリウさーん、起きていたらお返事くださーい」

外の人に向かって中の人が声をかけてみる。

・・・返答は、ない。

そんなものか、と、サクっと諦める。


では、次。

外の人を纏って放り出されたこの世界、地理や歴史、人や言葉などにより、ゲーム世界に酷似した1000年後の世界、という事らしい。

石造りのアジトは崩壊し、基礎だけを残した感だったのに対し、地下部分の掘りぬき空洞は年月の経過を余り感じぬ風情であった。

また、<塔>・・・今の<世界樹>付近の鉱脈が、ほぼ手付かずで残っていた辺りも見逃せない。

地上の建物と、地下の状態がチグハグな印象がある。

ココらへんは情報が少なくてなんとも言えないところである。


悩んでも答えが出なさそうなので、更に次。

国の単位が矮小化している件。

単純に人口が激減している、と見るべきか。

まだ世界を見て回ったわけでないので結論は出ない事柄であるが。

そして、重要な事柄が、一つ。

今まで出会った人々に、魔力をまるで感じない、という点。

ゲーム世界であったなら、潜在的な魔力持ちNPCなんていうのもたくさん居た。

少なくとも自分達の魔力視界で見抜けぬ魔力隠形の使い手が居るとは考えにくい。

そんな使い手が居るなら、小鬼さんやらに苦戦するいわれはないだろうしワンダリングモンスターのベヒモスにも対抗手段くらいは持っていそうである。

しかし小鬼相手に死人が出かけ、ベヒモスに対しては逃げ回る術しか持たなかった現状を鑑みるに。

人類は衰退している。


「今更なんだけど、自分達ってかなりの劇薬だなぁ」

正直、世界に巣食う魔王のうち何体かは、自分達が駆逐できてしまう。

魔王<病魔><飢餓><死>。

ココらへんは、正直なんとでもなってしまう。

試してはいないが、人の墓を暴いて骨でも持ってきて復元してから<蘇生>は可能であろう。

<浄化>にて病魔は失せ、外の人の技術と知識により飢餓もなんとかなる・・・と思われる。


「どこまで好き勝手していいのやら、ね。 現状でも結構酷いもんだけど」

きゅーっと、喉に酒を流しこんで。

自分はホゥっと息をついた。


まだ朝は遠そうだ。

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