質問それはバレバレで
拘束から解き放たれ、今まさにフリーダム自分・・・っ!
さぁ、何をしてくれようか・・・と一足飛びに外へ駆け出そうとした自分。
勢い良くドアをバーン!
そして今まさに部屋に入ろうとしていたエリスをドアでバーン!
・・・その、何だ、ごめん。
「鼻を押さえて涙目でプルプル震えているエリスさんたら超可愛い」
ひとまず褒めから入ってみる。
「ふるはいこのしれもの」
五月蝿いこの痴れ者、と、睨んでくるエリスさん、正直すまんかった。
エリスの背後にいたエイジと、室内にいたジオが「「何やってんの・・・」」とハモる。
外開きのドアは、いきなりあけちゃダメだぞ?
こうなることがあるからなー、以上、本日の教訓でした。
「ごめんごめん、ほーら痛いの痛いの遠いお山に飛んでいけー」
蘇って縛られていただけなので色々満タンな自分は、無駄に<白銀癒手>でエリスを攻撃。
ぺぷっと鼻を押さえた手の上から更なる魔法的圧迫を受けひっくり返るエリス。
しまったこの魔法、地味に「押す」んだっけ・・・。
廊下をゴロゴロ転がって壁にぶち当たり、きゅう、と目を回すエリスから、そっと目を逸した。
あっれ、またもや失敗じゃね自分。
自分内エリス負債が増量中な今日この頃、いかがお過ごしでしょう・・・。
「・・・相変わらず過ぎて色々言いたかったのがどうでも良くなったんだが」
一連のドタバタを静かに観察していたエイジが、眉間をつまみながら苦い顔。
ああ、そういやエイジ回収に来たんだったよね、すっかり忘れてたや。
「えーと。 お久しぶりエイジ。 色々すっ飛ばすけど無事で何より」
さっきはお疲れ様、と、右手を差し出してみる。
「ああ、お久しぶり。 訳のわからない状況なのを無事と呼んでいいかは別として、さっきは助かった、ありがとう」
山向こう確認してきたけど、綺麗サッパリだったね、あれどうやったの? と差し出した右手をがっしり握りシェイクハンド。
シェイクシェイク、ちょ、振りすぎらめぇバターになっちゃうー。
「・・・いろいろ相変わらずで安心した。 ジオもエリスも変わりないようでちょっと安心したよ」
僕らの他にもまだこっちに来ちゃった人とか居るのかね、と、心配げに首を傾げるエイジ。
「うん、同士エイジも相変わらずそうで安心だ」
特に周囲への心配っぷりとか、実は負けず嫌いで今まさに握手が握力比べに移行しつつある辺りとかも。
だが自分とて負けぬ、ふんぬぬぬ・・・。
「おーいエロゲーマーズどもー。 背後でエリス嬢が二人の硬すぎる握手でフヒっていますが良いのですかー?」
足音を消して部屋から出てきたジオに指摘され、エイジと二人、転がっていたエリスをチェック。
ふむ?
取り立てて変なところはない・・・。
いや、よくよく見ると、口元に拭った後・・・?
「ジオさん、私はもう腐趣味からは卒業しましたよぅー、ヤダなモゥー」
にこやかに立ち上がり、バンバンとジオの背中を叩くエリス。
・・・いや待て、それは無理がありすぎる。
あ。
まさかこいつ、エイジの前だからって猫被っていい子ちゃんで通そうとしてるのか!
「あはははー、何メリウさん、やだなぁ、なに私を見つめてー」
込められた眼力で「協力求む」と脅迫してくるエリスに。
小さく頷く自分。
「途端に動きが胡散臭い気がするけど?」
バッサリ切り捨ててくるエイジ。
ああうん、どこをどう見ても不審人物の挙動だよね。
今から、コレを、騙せるのか・・・?
「エイジに疑われてる現状を打破するぞエリス! 自分が今から質問を出す、それに答えていくんだ!」
仕方ないので勢いで押し流そう、うん。
「はい、ばっちこーい!」
よし、エリスもノッてきた。
相変わらずの芸人体質に、ああ、もう駄目じゃね、という気分がしないでもないが。
「よし、いい返事だ。 では第一質問。 半ズボンの男の子にトキメキを感じる?」
「はい! ・・・ゲフゲフ、いいえ! 断じていいえ! 可愛い男の子とか母性愛的に和みますよね! という意味で、はい、です」
・・・限りなくアウトに近いチェンジ。
ってか貴様、腐った上にショタコンだと・・・っ
「・・・第二質問、着崩したワイシャツに興奮する?」
「しまっ・・・げふふん、嫌だなぁ、だらしないー、そんなの見たら直してあげちゃいますねー」
もうダメだっ・・・だけど勢いで流すしかないっ・・・ってか怖くてエイジの顔色みれねぇ。
「第三質問っ、懐かしアニメT&B主人公コンビ、どっちが攻め?」
「ウサギちゃんの背伸びした息子攻めのオジサンの父性受けに決まっているだろ常考・・・うげほっ、た、たまにはお姫様抱っこでウサギちゃんを受け止めて助けてもいいと思うんだ私!」
限りなく酷かったがなんとかもちなお・・・したのかコレ?
ってか、一問目ですでに詰んでいたがな。
「一つ、質問してもいいかな?」
顔を伏せ気味にしているエイジから、ポツリと声が漏れた。
ウヘェ超こええ。
「はい、な、なんでもこーい!」
エリスさんたら超怯えてるー、へいへい、バッタービビってるー。
さて、同士エイジはどうトドメを刺す気だ・・・。
「質問。 攻めの対義語は?」
「受け!!」
守りー、守りー!
このバカ・・・なんという王道に引っかかりやがる・・・オワタ。
ってかエイジめ、三問目の攻め受けの流れで潰しに来たか、やるなっ。
「・・・しかも何が間違ってるのかわからない・・・と言うか、正解でしょ、と胸を張るエリス嬢が痛ましい」
ジオが天を仰ぎ見て。
数分後、村の周囲を男三人で掃除する傍ら。
村の入口に正座させられ続けるエリスの姿があったという。
ひとまずの脅威は去った、と見ていいだろう。
村の人々に惜しまれつつ自分達に合流したエイジを伴って、一路四人は首都という名の町を目指す。
あっちについたら、一応この村への兵備派遣をお願いしとかないとねぇ。
そん首都への帰り道。
飛んでいってもいいのだけどね・・・今の面子、エリス以外は飛べるという現実。
「来た時と同じように誰かがオンブしてくれれば楽じゃないですかー、歩くのヤダー」
長時間の正座で膝に来ているエリス。
いや、歩きになったの、君への罰ゲームらしいので。
「若いうちは歩いておきなさい、元の世界に戻ったら意味はないかもしれませんが・・・習慣付けておけば悪いことはありませんからね」
仕事につけば途端に歩かなくなりますよははは、と、ジオが笑う。
「ああ、確かにね。 僕は学校の階段なんかを毎日登り降りだから案外歩けてるんだけどね・・・ほらほら、君は若いんだからもっとシャッキリする!」
リアルが学校教諭のエイジが、だけど外の人の体力を持って帰りたいねぇ、なんてこぼしながらプルプル歩くエリスを応援する。
ビタイチ物理的には助けないけど。
「えりす、しってるか・・・マジで歩かなくなると、足腰が弱る」
もう本気で外の人持って帰りたいー。
痛みのない健常を超えた体が欲しいー、と、妖怪人間チックに叫ぶ自分。
そんな年寄り連中三人の体力談義に、エリスは「私も、ああなるんだろうかー」と、将来の健康事情に不安を感じている様子で。
「・・・がんばろう」
色々と、と、呟いているエリスの姿に、自分は小さく笑って。
「がんばれ」
自分にしか聞こえぬ声で、エールを送った。