閑話休題 ぱーと2
再び時が遡ります。カナンが国を追い出された直後です。
「は? 行方が分からなくなったって?! 何でまた?!」
「オーランド国で召喚した勇者に対して暴挙に出たとか何とかで、国王から国内退去命令に近いものが出たらしいです」
眉間に出来た皺を伸ばしながら宰相であるクィンシーがウィリスの言葉に続ける。
「現在、行方を探っているところですが。して王よ、如何いたしましょうか?」
「如何も何もそれ相応の報復を...って言いたいところだがなにほっといていても良いだろう。なにせ国境沿いにヴェールズの軍隊が進軍して来ているからな。あぁただ華南に友好的だった人間は保護しろよ? あいつはあれで義理堅いからな」
「分かりました。それでは引き続き華南さまの捜索と「そのカナンと言う女性を何故そんなに必死になって探すんですの?」
突然乱入した女性のその言葉にピシッと音を立てて辺りが凍り付く。比喩ではなくもちろん文字通りに、である。そんな中、女性はにっこりと微笑みながら尚且つブリザードを思わせるオーラを纏い、ゆっくりと王座に座る魔王に近づいて行く。
肌に突き刺さる程の極寒の冷気の中、そこから動こうとしない...いや、動けずに居る魔王はまさに蛇に睨まれたカエル、である。
「わたくしと言う者が居ながら他の女性を求めるなど...しかも人間など!」
「ま、待て! 誤解だ!!」
「五階も六階もありませんわ!!」
「って、だから字が違う!! 誤解だ誤解!! ホントに誤解だ!!! な? お前らからも妃に話しをしてくれ!!」
逃げ場を無くし魔王は視線を左右に彷徨わせながら助けを求める。が今まで一緒に居たはずのクィンシーとウィリスは王妃に向かい一礼するとその場から霞のように掻き消えた。
「さあ、あなた。邪魔者は居なくなった事ですしゆっくり話しをしましょうか?」
「あわわわわ.......」
にっこり微笑む王妃、そして片や引きつった笑みの魔王。
余談だが、明け方近くまで妃に許しを求める魔王の声が続いたとか何とか......