2話目
勇者が屋敷に居座ってから、気が付けば数週間が過ぎていた。おい、お前。何の為に召喚されたんだよ。とっとと魔王退治に行けよ。こんなとこでハーレムなんて作ってんな。と、目の前でぼやきたくなるのを我慢しつつ今日も仕事に励むあたしってえらい? えらいよね?! けどその忍耐も流石に切れた。
くどい様だが勇者が居座ってからいつもどおり各部屋の掃除を終え、何気なしに勇者の部屋を通り過ぎようとした時、中から物が割れるような凄い音がし、続けて聞き覚えのある声が助けを求める。その声が誰のものか分かった途端、恐らく鍵に掛かってあっただろう勇者の部屋のドアを力ずくでこじ開け、正確には蹴り飛ばし、ベッドに押さえつけられるように押し倒された女性の上に圧し掛かる勇者の襟首を掴むとそこから勢いよく引きづり降ろす。
「お、おまえ! おれは勇者だぞ?! 国王の客人だぞ!!」
そしてなんか訳わかんないことを言い始めた勇者に対し限界を振り切ってしまったあたしは仁王立ちし、尚且つ腕組までして勇者を睨み付ける。そして一言。
「てめぇみたいな腐れ×××なんか前の勇者同様魔族に遣られちまえッ! それとも...あたしにその腐れ×××踏み潰されるか? あ"あ"?」
なぜか最後は殺気全開の上、ヤクザの様にメンチを切ってしまっていた。挙句勇者はそんなあたしにビビリ絨毯を濡らす...。おい、誰がそこ掃除すんねん。てかそんなんで魔王倒せんの? 半ば呆れつつもグエンさんの乱れた服を直して部屋から連れ出した数刻後。苦虫を噛み潰したような顔で大奥様から解雇を宣告された。あの歩くR18禁(もうピーはメンドクサイからいいや。)くそ勇者が国王に訴えたらしい。そして国王から大奥様に...仕方なしに大奥様はあたしを解雇した。
許すまじくそ勇者。心の中で沸々と沸いてくる恨み言を認めるべく、あたしの中にブラックリストが出来上がった。