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閑話休題
時間的には596代目勇者が召喚される前です。
「――それは本当か?」
「はい、確かに。西の方から魔王さまとよく似た波動を感じました。そう、あれは以前見知った感覚です」
「なんで今頃になって...いったいなんでだ?」
「おそらく、魔王さまと離れたときに時の歪に引き込まれてしまったのでしょう。どうしますか? 13師団の誰かにでも連れて来させますか?」
「ああ、そうしてくれ。そうだな。ウィリスがいいだろう」
「ウィリス、ですか?」
「ああ、そうだ。―――ウィリス」
名を呼ぶと目の前の何の変哲も無い空間が突如裂け、魔王軍13黒師団の一人、人狼族のウィリスが姿を現した。ウィリスはワーウルフの族長で最も高貴とされている黒色を纏っている。身長はゆうに2メートルは軽く超し、無駄のない引き締まった身体。そして恐ろしいほど整った顔。
「お呼びですか? 我が主よ。」
片膝をつき臣下の礼をとるウィリス。そんなウィリスに、
「そなたに命じる。我が妹、華南をここへ。」
「仰せのままに、我が主よ――。」