9話目
お待たせしました!
「甥―――ッ?!」
父さん母さん、聞こえたとは思いませんが、そうです甥です。クソ兄貴の子供の登場です。ええしかも年上です。なにが悲しくて年上の男に叔母なんて呼ばれなけりゃなんないんだ?!
一際大きな叫び声を上げた後、驚愕した顔であたしと突如現われた魔族の男の顔を交互に見る男A。一座は一座で地面にガクッと蹲ると捨てられた女よろしく、顔を覆い隠しながらさめざめ泣き出した。
なにか? どこかの劇団員か? ってなくらいに泣き真似をする一座に遠い目をするあたしと魔族の男。決して甥なんて呼んでやるもんか。あたしたちが相手をしないもんだからかどうかは分からないが一座はいい加減泣き真似も厭きてきたのか急に泣き止み、スクっと立ち上がると再びあたしに向き合う形で立ちはだかった。
「――数々のご無礼、御許しください。先ほども名乗りましたが私は貴妃さまに仕える八部衆がうちの一人、名を一座。と申します。恐れながら貴方さまのお名前をお聞きしても宜しいでしょうか?」
深々と頭を垂れながらあたしの名前を聞いてくる一座に仕方なしに答える。すると今度は弾かれたように頭を上げ目が毀れるんじゃないかと思うほど見開きこっちを凝視する。
今度はなによと内心うんざりしながらも決して顔には出さずに何らかのアクションを待つのだが一行におきない......
この状態のままどれくらい時がたったか定かではないがいい加減その沈黙に耐え切れなくなった男Aが突然ガシガシと頭を掻き毟りだした。そしてあたしに指を突きつけ唸るように怒鳴る。
「50文字以内で簡潔に話せ!」
「無理」
間髪いれずに答えるあたしを睨み付けるが無理なものは無理。どうやっても50文字以内で説明なんて出来やしない。そもそもこっちの世界に出て来たのは最近だし。ましてこの突如現れた甥の名前すら知らないってのに...
そして気が付くとあたしは盛大にため息を付いていたらしく、周りの視線が効果音を伴いながら突き刺さる。まぁ、その中で一人だけ飄々としているのが自称―甥。自称もなにもホントに甥なんだが。その甥があたしに近づきつつなにやら代わりに話し始めた。
〝異世界で暮らしていた兄が実は魔王の転生者でその兄を迎えに来た魔族の帰還に巻き込まれ異次元空間に引き込まれた〟と。〝そしてその空間内で兄たちと離れてしまいしばしその中を漂う羽目になりやっとごく最近この世界に出現した〟と。――てかなんであんたそんなに詳しく知ってんの?! まるで見ていたように言う自称甥に若干引きつつも改めて顔を見る。