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巻き込まれた人間の異世界生活  作者: 蒼月
第1章
11/18

8話目



「お初にお目にかかります。華南さま。わたくしは貴妃さまに使える八部衆がひとり。名を一座と申します」


 深々と頭を垂れながら鈴を転がすような声で自分の事を述べる一座。顔を挙げてこちらに向けた視線には一瞬だけど殺意が込められていた。あれ? 気のせいかなぁ?   


「...あ、ども。はじめまし――...」


「貴妃さまの命によりあなたさまのお命、頂戴いたします」


 は? え? ってかさっきの殺気は気のせいじゃなかったんだ......


「おまえ何しでかしたんだ?!」


 今にも掴み掛かるような勢いであたしに聞く男A。おまけにグエンさんはさり気なく男Bにエスコートされる様にこの場から退場してるし...グエンさん。カムバーック! まだ話しが終わってないよ――! 


 そんなあたしを嘲笑うかのように鼻を鳴らす男B。ええ遠くてもあんたが鳴らした鼻の音はこの耳にしっかり届きましたよ。ムカつく。マジムカつく。ここはひとつ日本古来よりの仕返しの方法で―――なんて考え込んでいたら地を割く衝撃で我に返った。一座が見えない風であたしの目の前の大地を抉ったのだ。


「偉大にして崇高な我らが王――その王がたかが人間を捜し求めるなんて...そんなことのせいで貴妃さまは嘆き、心の中は悲しみで溢れてしまいました。けれどそんな貴妃さまが遂にその目障りなモノを片付ける気になって下さいました。しかもその栄えある任務はこの一座に――」


 ウットリと語る一座に若干引きつつも気になった点を解決するべく疑問を述べる。


「あのさぁ、偉大にして崇高な王って誰?」


「あの女は魔族だ。おまえなら必然的に答えを導かせられるだろう...」


「魔族って...じゃあ貴妃ってのはその人の奥さん?」


「何か答えをはぐらかしてるような気もするが...まあそうだな。貴妃と言うのは名前ではなく尊敬する女性を表す言葉だからその女性は間違いなく...」


 あぁなんか考えたくないけど間違いなくこんなメンドクサイ状況に陥ったのはあいつの所為。そう、クソで、へたれで、あたしをこの世界に巻き込んだ、あの...あの......


「あんのクソ兄貴ッ!! てめえの女房(おんな)の手綱くらいキチッと握っておけってんだッ!! クソへたれ野郎がッ!! てか何? 何で今更あたしを探す訳?! 意味わかんねぇつーの!!」


 というよりも周りのやつら(俺を含めて)の方が意味がわからないと思うのだが......そんな思いを心にはせる男Aであった。 




 愉悦に顔を綻ばせながらあたしに向かって真空の刃(カマイタチ)を繰り出す一座。ひとつ、ふたつ。はたまたみっつ。と、そんな感じで出されたそれを何とか避けようとするが、完全に避け切ることが出来ずに鮮血が空中に舞う。


 頬や腕、脇腹などその他数ヶ所に傷を負いながらも一座の間合いに入るべく前進するあたしと、なぜか同じように突進する男A。阿吽の呼吸で男Aの攻撃の後、空いた一座の無防備な間合いに入り込み回し蹴りを繰り出す。あいにくとこちとら刃物を持っていない為接近戦は力業だ。まぁそれでもチート能力全開な為、結構なダメージを相手に与えることは出来る。がしょせんは人間と魔族。力の差は歴然としていた。


「これが最後の攻撃です。この攻撃からは逃れることは出来ません」


 ピシピシという嫌な感じの音と共に巻き上げられた風はほんの数秒だけ静まった後、普通は見えないはずなのに何故か薄ぼんやりだが螺旋を描くように数多の槍となって四方に現れた。そしてそれは縦横無尽に襲い掛かる。


 次々に襲い来る風のランスとでも呼ぶべその槍に男Aが自分の体を楯にしてあたしを庇おうとしたがそれよりも早く、ひとつの影が一座とあたしの間に現れ、片手を翳しただけで数多の槍を一瞬のうちに霧散させた。

 

「...なぜ貴方がッ?!」


 驚愕の声を上げたのは一座。明らかに動揺しているようで挙動不審になっている。一座が敬語を使うところを見るとどうやら上位の魔族のようだ。って貴妃に仕える八部衆より偉いやつなんているのか? そして事態を飲み込めていないあたしと男Aを無視して二人は会話を続ける。



「なぜって? そりゃ〝叔母〟が見つかったなんて知ったら、〝甥〟としては是が非でも会ってみたいと思うものだろう? 違うか? 一座」 

 

「アバドンさま。その〝叔母〟というのはいったい...」


「早とちりの我が母上殿は、父上が探していた人間の女を恋敵と認識したのさ。まったく父上もこそこそ探さずにさっさと母上に事情を話していればこんな事にはならなかっただろうに」


 いまだ混乱したままの一座と男A。そして嫌々ながらも脳が事情を把握し始めたあたしは目の前に立つ男の顔をしみじみと見る。



 ――あぁやっぱり...認めたくはないが......非常に認めたくないんだけど。確かにあいつと似てるとこが見て取れる。しかもやっぱり年上で......あれ? おかしいなぁ、なんか涙が出て来た.....え? 違うよ。嬉しいからって訳でもないよ? どちらかって言えば年上の人間? 人間でいいのか?! に〝叔母さん〟なんて......




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