表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

『お疲れですね』でありますように

作者: kami10enpitu
掲載日:2025/11/01

いつものように

ターミナル駅のホームで待つ私の前に

折返しの電車が滑り込む

終点なのに降りる事もなく

座席で眠り込んでいる人

終点ですよと声をかけるべきかなと

思いながらも躊躇する

見知らぬ人に声をかけることのためらいと同時に

心のどこかでハッと目を覚まし

ここはどこと慌てる姿を期待する意地悪な自分がいる

意地悪な自分が負ける時間を与えずドアは閉まり

電車はまたやって来た方向に向かって動き出す

2駅ほど進んだ、いやその人にとっては戻った所で目を覚まし

期待した慌てる素振りもなく悠々と降りていく人

もともとそこで降りるはずが乗り過ごしたのが終点だったのかもしれない

そんな事もあるかもしれないから声をかけられないのだ

でも今日の人は

折返しても全く目を覚まさない

いつしか遠目に体のどこかが呼吸で動くのを確かめようとしている

態勢が変わるのを見定めようとしている

都心に向けて段々混んできても目を覚ます事なく

大きなバッグを抱えたままその人は動かない

ふと暗い想像が浮かぶ

ずっと同じ姿勢のまま

1本の電車に揺られて

都心とターミナルを往復し続ける人

そしてある時隣に腰かけた人が

触れ合う身体の冷たさに

ハッとする光景

朝早くから夕方になるまで

忙しく行き交う多くの人の流れの中で

その人だけは時が止まったまま

同じ姿勢のまま電車に揺られ続けるのだ

そんな暗い妄想をしてしまう

都心に近づくにつれ乗り込む人の影で

見えなくなってしまったその人の姿

ほんの少しだけ後ろ髪を引かれながら

いつもの駅に止まった電車の開いたドアから

いつものように人の流れに押されながら

束の間の妄想の世界から

日常へと戻っていく

『お疲れですね』でありますように

と願いながら




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ