表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封呪戦記 生贄の儀式を目撃し、追われる少女  作者: ムクナ
第一章 生贄の儀式を目撃し、追われる少女
27/89

第二十七話 隼蠋(しゅんぞく)(弐)



挿絵(By みてみん)



朝日が昇りきり、山の霧が晴れ始めたころ。

獅子丸は木刀を片手に、綾乃の正面に立った。


獅子丸「いいか、綾乃! お前は剣術の基礎はすでに身についている。ゆえに基礎稽古は省く! これからは“闘気”の見極めを学んでもらう!」


そう言って、手ぬぐいを差し出す。


獅子丸「まずはこれで目隠しをしろ。」


綾乃は木刀を握り直し、素直に従った。


目隠しを終えると、獅子丸は大声を張り上げた。


獅子丸「これから俺が木刀で攻撃する! お前は俺の闘気を読み、うまくかわせ!」


綾乃「……承知した。」


獅子丸「不安なのはわかる! 目が見えないのだからな! だが精神を研ぎ澄ませば、必ず相手の闘気が形となって見えてくる。根気よくやるぞ!」 


そう言うと、獅子丸は木刀を振りかざした。


獅子丸「最初は手加減してやる! 構えろ! さあ、いくぞ!!!」


綾乃「手加減は無用だ! さあ来い!!」


その言葉に、獅子丸の眼が爛々と輝いた。


獅子丸「なにぃ……面白い! ならば遠慮はしない!!」


一撃目。獅子丸の木刀が唸りを上げて振り下ろされる。

だが綾乃は、まるで目で見ているかのようにその軌道を読み取り、軽やかに横へとかわした。


二撃目、三撃目。

綾乃は一歩も乱れず、気配を正確に捉え、流れるようにいなしていく。


(馬鹿な……! 完璧すぎる!)


最初は軽く打ち込むつもりであった獅子丸だが、次第に熱がこもり、木刀に力が乗っていく。

それでも綾乃は、髪の先をかすらせることすらなく、すべてをかわし続けた。


獅子丸「……ほう……これは……まるで見えているかのようだぞ、綾乃……!」


その日の稽古は、陽が西に沈むまで続いた。

汗と埃にまみれた体を清め、獅子丸が山で仕留めてきた兎を焚火で焼き、二人は並んで食卓を囲んでいた。


火のぱちぱちと爆ぜる音と、獣の脂が香ばしく焦げる匂い。

一日の疲れを噛みしめるように、綾乃は黙々と肉を口に運んでいた。


綾乃は、じっと炎を見つめたまま、やがて静かに口を開いた。


「……獅子丸。ひとつ、話しておかねばならぬことがある」


彼女は、幼き頃から亡者の姿を視ることができたこと、闇夜でも人の魂の輝きで相手を識別できることを語った。

さらに、自分はお狐様の加護を受けており、この旅はただの逃避行ではなく――お狐様の御神体を京都へと運ぶ、大いなる使命を帯びたものであることを打ち明けた。


焚き火の赤が獅子丸の顔を照らし、その表情を浮かび上がらせる。

最初は黙って聞いていた彼だったが、やがて破顔した。


獅子丸「やはりそうであったか!」

そして、子どものように目を丸くする。

「……って、待て待て! なんだその能力は!? ズルいぞ! 俺でさえ亡者は朧げに感じる程度だというのに、お前ははっきり見えるのか!」


獅子丸は兎肉を噛み切り、骨を豪快に吐き捨ててから両手を広げた。


獅子丸「しかもお狐様のご加護と来たかーーっ! わははは! お前、普通の人間ではないなぁ!」


そして、急に真顔になり、どっしりとうなずく。


獅子丸「よし! 決めたぞ! その力があれば、二十日など要らん! 七日でいっぱしの剣士に仕立て上げてみせる!」


炎のはぜる音に混じって、獅子丸の豪快な笑い声が山にこだました。

綾乃は少し呆れながらも、その頼もしさに胸を撫で下ろすのだった。


ーーーーーー


日々の修行の場には、絶え間なく張り詰めた空気が流れていた。

綾乃の訓練は、闘気を探り、気配そのものを読み取り回避する鍛錬を中心に行われていった。


五日目を迎えたその日、綾乃の動きにはすでに明確な進歩が見え始めていた。

綾乃の呼吸は深く、獅子丸の攻撃を寸前でかわすその身のこなしには、研ぎ澄まされた感覚が宿っていた。


夕陽が森一面を紅に染め上げ、二人が修行を終えようとしたその刻、その静寂は突如として破られる。

森全体がどこからともなくざわめき始め、枝葉がざわつき、幹が軋み、まるで大地そのものが胎動するかのように震えた。


次の瞬間、風が低く唸りを上げ、森が目を覚ましたかのような、不気味な胎動が二人を包み込んだ――!


ガサッ、ガサガサガサッ!!!


そして、瞬く間に、十数匹の大猿が木々を割って飛び出し、二人をぐるりと取り囲んだ。

猿どもの毛並みは血のように黒く、目は妖しく光り、牙を剥き出しにしている。


獅子丸は即座に刀を抜き、堂々と仁王立ちした。

「ふん、ついに姿を現したか化け物め! この獅子丸様の刀の錆にしてくれる!!」


その瞬間、驚くべきことが起こった。

大猿の一匹が、低い声で言葉を紡ぎ出したのだ。


「……鬼の親方、隼蠋様から、白晨狐神社びゃくしんこじんじゃの綾乃殿に伝言を持ってきた」


綾乃は目を見開き、思わず足を止めた。

「……わ、私に!?」


大猿は唸るように言葉を続ける。

「隼蠋様は、膳槽を人質として捉えられておる。返してほしくば、これから、我らについて参れ」


「膳槽様!!!」

綾乃の声は震えていた。

あの日、炎上する白晨狐神社を山道から見下ろした時から、彼女の心を締めつけていたのは膳槽の安否だった。

父のように慕ってきた存在が――今、最も憎むべき鬼の手に堕ちていると聞かされ、心は大きく揺れ動いた。




「今後はどうなるの」

と、もし思って頂けたら、


下にあるタグの⭐︎︎︎︎︎︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎から、作品への応援を、どうかお願い致します。


面白いと思って頂ければ⭐︎5つ、つまらなければ⭐︎1つで構いません。

どうかお気持ちをお聞かせ下さい。


そして、ブックマークして頂けると最高に嬉しいです!


何卒、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ