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封呪戦記 生贄の儀式を目撃し、追われる少女  作者: ムクナ
第一章 生贄の儀式を目撃し、追われる少女
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第十六話 鬼と封呪箱(伍)

綾乃と甚平は、子供たちが囚われた洞窟を見つけた。

甚平が奉行所へ応援を求めに走る中、綾乃はひとり洞窟へ踏み込む。

見張りの鬼を倒し、子供たちを救い出した綾乃が出口へ向かうとそこには、甚平が立っていた。

挿絵(By みてみん)


「……綾乃……」


掠れた声が、暗闇の奥から届いた。

血の匂いと湿った空気の中、甚平の声は震えていた。


「……逃げろ……!」


その言葉を最後に!


ザシュッ!!!


鋭い音が、空気を裂いた。

綾乃の視界の端で、何かが弾け飛ぶ。


それが“甚平の首”だと気づいたのは、一瞬あとだった。


首が、空中を回転しながら舞い上がり、

鮮血が弧を描いて飛び散る。

月明かりを浴びたその血は、赤黒い霧となって夜を染めた。


「ギャーーーーーー!! 甚平殿ッ!!!!」


洞窟に綾乃の絶叫が響き渡る。

甚平の体は膝から崩れ落ち、泥のような血溜まりをつくった。


息が詰まる。

喉が痛い。

心臓が爆発しそうに脈打つ。


そのときだった。


ぬらり、と闇が動く。

岩壁の影から、あの“小鬼”が姿を現した。


小鬼は、まるで遊びに興じる子供のような笑みを浮かべていた。

血に濡れた手で、転がった甚平の首を拾い上げる。


「……アハッ……!」


その声は、不気味に高く響いた。

月光が甚平の顔を照らし、閉じた瞼の下の血筋が光る。

冷たい死の気配が、洞窟の空気を凍らせた。


綾乃の足が震える。

喉の奥が焼けるように熱い。

悲しい。怖い。

怖いのに、逃げられない。


「お狐様……! 助けてくださいッ!!」


綾乃は両手を組み、震える指で“狐の窓”を形作る。

恐怖と祈りを込めて、その中心に息を吹きかけた。


ふぅー....。


吐息が白く光り、闇の中で揺らめく。

次の瞬間、洞窟の空気が一変した。


白い風が巻き起こり、

光が綾乃の指先から広がっていく。


ーーふわりーー

白銀の光が弾け、巨大な銀狐が顕現した。

その毛並みは白雪のように輝き、炎のように揺らめき、ただそこにあるだけで洞窟の闇を払った。


大狐は綾乃と子供たちを背に乗せ、咆哮一声。

洞窟の空気が震え、岩壁に響く「コンッ」という声と共に、一気に駆け出す。


ザシュッ!

小鬼の振り下ろした刃を、銀狐は紙一重で避けた。

地面を蹴り、眩い光を残しながら洞窟を突き破るように飛び出した。


外の夜空に出た瞬間!!


地上では惨劇が広がっていた。

町奉行所の侍たちが無残に倒れ、血に塗れた石畳の上に、片角の鬼が立っていた。

巨大な体躯、肩から滴る返り血。片角の影が月光に鋭く輝く。


片角の鬼「……まだ生き残りがいたか」


鬼は地面に転がっていた侍の槍を拾い上げ、肩で軽く担ぐと、銀狐の影を睨んだ。

そして、雷鳴のような咆哮と共に。


ブオンッ!!!!


凄まじい腕力で槍を投げ放つ。

それは雷光のごとく夜空を切り裂き、一直線に銀狐へと向かった。


ドスッ!!!


槍は、銀狐の右後ろ脚に深々と突き刺さった。

鮮血が夜空に散り、赤い雨となって落ちる。


大狐「コオオオオーーーン!!!!!」


空を震わせる痛切な悲鳴。

だが狐は速度を落とさない。

むしろ痛みを振り切るように、炎のごとき脚で空を駆け上がっていく。

その背にしがみつく綾乃と子供たちは、必死に落ちまいと涙と汗にまみれて祈った。


片角の鬼は、投げ損じた槍を見届け、舌打ちをした。


「……くそっ、角度が甘かったか」


そこへ、小鬼が血塗れの手で甚平の首をぶら下げながら近づく。

まるで兄を讃える弟のように、隣に並び夜空を見上げた。


「チッ……外しやがって」


二匹の鬼の眼は、飛び去っていく白銀の狐を鋭く追い続けていた。


白銀の狐は、右足に槍を受けながらも必死に夜空を駆け、月の光を浴びながら山を越えて飛んでいった。

綾乃と子供達は背にしがみつき、必死に振り落とされまいと涙を流して祈るしかなかった。


綾乃(甚平殿……!どうして……どうしてこんなことに……!)


銀狐の背中を伝って血が滴り、子供の一人が恐怖に震えて声を上げた。

「ね、ねえ……このお狐様、死んじゃわないよね……?」


綾乃は唇を噛み、必死に子供達を抱き寄せる。

「大丈夫よ……大丈夫……!お狐様は、私達を必ず守ってくださる!」



一方、洞窟の前。

片角の鬼と小鬼は、血に濡れた地面を踏みしめながら、狐が消えていった夜空を見上げていた。


片角の鬼「追うか?」

小鬼小鬼「いや……洞窟の中が気になる。まずは状況を把握してからじゃ」


小鬼は、まだ手にしている甚平の首をにやにやと眺める。

「こいつ……なかなかいい顔してやがるな。人間のくせに……俺達に立ち向かうとはなぁ。」



山の向こう、深い森の奥。

血を流しながらも、銀狐はようやく白晨狐神社びゃくしんこじんじゃ の境内に降り立った。

銀狐は大きく息を吐き、肩を揺らしながら綾乃たちをそっと地面に降ろした。


その巨体は月明かりに照らされ、白銀の毛並みが血に濡れ、艶を失っていた。

右後ろ足には深々と槍が突き刺さり、滴る血が石畳に落ちては、じわりと黒い染みを広げていく。


銀狐は苦しげに目を細め、それでも威厳を失わぬ声で綾乃に語りかけた。


銀狐は槍に視線を落とし、短く息をついた。

「……さあ、この槍を……引き抜いておくれ」


綾乃「……はいっ!」


綾乃は両手で柄を握りしめ、歯を食いしばって一気に引き抜いた。


ズルリッ!!


銀狐「コオオオオーーーン!!!!!」


響き渡る咆哮と共に、狐の巨体が激しく身を捩る。

鮮血が噴き出し、綾乃の頬や衣を濡らした。

その痛みは見る者の心さえ切り裂くようで、綾乃は震えながらも目を逸らさなかった。


銀狐「……次に……わたしの傷に、手をかざしておくれ……」


綾乃「……こう、ですか……?」


恐る恐る手を伸ばし、噴き出る血潮に手のひらを重ねる。


すると。


綾乃の掌から、白く柔らかな光があふれ出た。

その光は狐の毛並みに吸い込まれるように広がり、裂けた肉を結び合わせ、みるみる傷を塞いでいく。


銀狐は荒い息を整えながら、ゆっくりと目を閉じた。


「……よい……これで……ワタシはしばし休む……」


その巨体は淡い霞のように揺らめき、やがて夜風に溶け込むように姿を消していった。



綾乃「甚平殿!甚平殿が.....なんで、なんでこんな事に!」


残されたのは、狐の血に濡れた石畳と、綾乃の震える両手だけだった。






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