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3. 協会の評判

ラージガレージへ到着し駐車場に車を止めてから店舗に入る。


するとちょうど棚の整理をしている店員が目に入り話しかける。



「すいません。私、魔術師協会の天沢と申します。少し伺いたいことがありまして、今この店舗の責任者の方はいらっしゃいますか?」



身分を示す手帳を見せながら話かける。



「魔術師協会!?か、確認してきますので少々お待ち下さい!」



店員が慌てて奥へ向かい、そう待たないうちに責任者らしき人間が出てくる。



「俺が店長の福原だ。協会の人間がなんの用だ。」



どうも先ほどの南方と同じくあまり歓迎はされていないようだ。


まあトラブルがないと来ないのでしょうがないのだがこちらとしても気分はよくない。


さっさと終わらせよう。



「こちらの店が所有されている車のことで教えていただきたいことがあります。」


「それは強制か?面倒事はお断りだ。」


「任意ですがご協力いただけない場合、警察経由で協力をお願いすることになります。」


「ちっ。裏に来い。」



福原についていき、奥にあるスタッフの事務仕事用と思われる部屋に入る。


部屋に入ると椅子へ座るよう促され、2人共椅子に座る。


福原も対面の席に座り、改めて要件を伝える。



「まず、私は魔術師協会の天沢と申します。こちらは青石といいます。」


「青石です。」



自己紹介を済ませて、本題に入る。



「早速ですが、このナンバープレートの車について、どういった用途で使われているのでしょうか。」



ナンバープレートを書いた紙を見せる。



「車検の代車用だ。たしか先週末に貸して昨日帰ってきたはずだ。」


「福原さんが手続きしたので?」


「いや、先週俺は家族旅行で休んでたから詳しくは知らん。」


「直近でお貸しした方の情報を教えていただけないでしょうか。」


「断る。何に使われるかわからんからな。知りたいのであればせめてちゃんと警察を連れて来い。」


「わかりました。では後日警察の方と伺わせていただきます。」


「それで話はもういいか?」


「いえ、もう1つあります。」



福原、この男も魔力持ちだ。



「福原さん、貴方も魔術を使えるのでは?」


「・・・それがどうした。」


「協会に登録されていませんよね?」


「してない。裏で何をしているのかわからない組織に自分の情報を渡すなんぞありえん。何をされるかわかったもんじゃない。」


「福原さんにも思うことはお有りでしょうが、事件発生時には調査の一環として登録されてない方にも魔力の検査に協力をお願いさせていただいています。すぐ終わりますので、協力いただけないでしょうか。」


「お断りだ!忙しいからもう帰ってくれ。これ以上仕事の邪魔をするなら弁護士を呼ぶ。」


「わかりました。ではこの件も警察の方へ相談することにします。お時間ありがとうございました。」



福原に礼を言い、車に戻って駐車場から出て適当に車を走らせる。



「協会の評判もなかなかのものでしたね。」


「こういうこともある。感情はどうしようもないからな。」


「それでこれからどうしますか?」


「福原は明日警察に依頼して同行してもらって魔力の検査と代車を貸した人間の情報を教えて貰えばいい。あとは比較的ここから近いのが2人いるからそれだけ済ませたら今日は終わろう。」



しばらく車を走らせてリストにある人間の家に向かう。


その後、2人の事情聴取を済ませたが、2人共非魔術師であり、得られたものは現場の近くに遅くまでやってるうまいラーメン屋があるという情報のみだった。



まだ調査対象が残っているがいずれも家まで距離もそこそこあるので、今日は一旦仕事を切り上げてホテルに戻ることにした。


ホテル近くのコインパーキングに車を止めて今日の仕事は終わりだ。



「青石は飯どうする?俺は適当に近くの居酒屋でも行くが、来るなら奢るぞ。」


「奢りであればお供しましょう。」


「じゃあ、行くか。」



適当に検索して見つけたホテル近くの居酒屋に入って俺はビール、青石はウーロン茶で乾杯する。



「「乾杯。」」


「あー疲れた。青石は大丈夫だったか?」


「ええ、先輩の後をついて回っただけですので。」


「そうか。どうだった?仕事は。」


「結構協会嫌われてましたけどああいうものなんでしょうか。」


「拒否感強い人は結構いる。けどそうでないことも多いから、今日は運が悪かったな。」


「なるほど。」


「まあけどこっちは仕事でやってるからな。拒否しなければ協力してもらうし、拒否されれば警察呼んで協力させるだけだ。」


「割り切ってますね。」


「そのうち慣れるさ。」



そんな雑談をしてると、香ばしく焼き上げられた烏賊やきつね色が美しい油揚げに美しく盛り付けられた刺身などなど頼んだつまみが運ばれてくる。


その後は気仙沼や石巻の魚介を中心に名物に舌鼓を打って仕事のストレスを解消してからホテルに戻ってベッドに入り込んだ。







次の日。


朝食を食べて少し休んだ後、警察へ話を通しに行く。


事前の連携書類に記載されている担当者へは既に昨日の経緯は連絡済で、本日午前中は署内にいるらしい。



「魔術師協会の天沢と申します。熊谷さんはいらっしゃいますか。」


「熊谷でございますね。少々お待ち下さい。」



受付の人が電話で確認している間少し待つと、すぐに電話は終わりこちらへ話しかけてきた。



「本人がこちらへ来るそうですので今しばらくお待ち願います。」



しばらく受付で待っていると、それらしき人物が近づいてきた。



「魔術師協会の天沢さんと青石さんですね。お待たせしました、熊谷です。」



絵に書いたような爽やかな好青年がこちらへ話しかけてくる。



「いえ、お忙しい所ありがとうございます。私が天沢で、こちらが青石といいます。」


「青石です。今日はよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。ひとまず会議室へどうぞ。」



熊谷について行き、とある場所の会議室に入る。


勧められるままに椅子に座り、熊谷も対面に座ってから口を開いた。



「お忙しい所ご協力ありがとうございます。」


「いえ、こちらこそわざわざ東京からありがとうございます。魔術には詳しくありませんが、可能な限り協力させていただきます。」


「ありがとうございます。ところで、昨日車で移動してる時もパトカーをよく見かけましたが、お忙しいようですね。」


「ええ。実は少し前に連続強盗がありまして。そのおかげで署の警官も多くがパトロールに駆り出されてます。」


「それは大変ですね。なるべく早急に解決するよう全力を尽くします。」


「よろしくお願いします。今朝依頼いただいた件については令状を取りました。」


「ありがとうございます。ちなみに警察の方での調査はどうでしょうか。」


「今のところ目ぼしい情報はありません。天沢さんと青石さんの方ではいかがでしたか?」


「こちらも特に成果はありませんでした。魔力持ちはいましたが、いずれも現場に残された魔力の痕跡とは一致していません。」


「では犯人ではないと?」


「いえ、例えば犯行が可能な術具を所持していれば話は別です。魔晶石に別人の魔力を込めれば現場に残る痕跡は魔力を込めた人間のものになります。」


「術具ですか。しかし、そんな物がそう簡単に手に入るものなんですか?私も術具関連の事件に何度か協力したことはありますが、結局術具と偽ったガラクタしか見たことがありません。」


「当然協会も厳しく監視してるので、普通の人間では無理でしょう。市販されている家庭用の術具はエネルギー源となる魔晶石に特殊な制御がかけられてますからそれを流用しての自作も難しいでしょうね。」


「かなり可能性は薄いということですね。」


「技術があり制御がかけられてない魔晶石を入手可能でかつ術具を製造可能な設備も持っているだとか、そういった人間であれば不可能ではないかもしれません。」


「そのあたりまで考え出すとキリが無さそうですね・・・。ひとまず今はラージガレージへ向かいましょうか。」



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