甘い春と試練
春の光が柔らかく校舎に差し込む卒業式の日、タカシは凛花の手をそっと握った。
教室の隅で、桜色のリボンが風に揺れていた。
「卒業、おめでとう」
「ありがとう……それより、言いたいことがあるんだ」
その一言から始まった二人の物語は、希望と笑顔に満ちた新しい季節の幕開けだった。
——
交際を始めてから数年。日々を重ね、大人になっていく中で二人はそれぞれの道を模索していた。
だが、運命は突然、タカシに試練を与える。
交通事故──
その衝撃により彼は下半身に障害を負い、車椅子での生活を余儀なくされた。
「なんで俺が……」
自由を奪われたことへの苛立ちと、自分を支え続ける凛花への後ろめたさが次第に言葉の刃となって彼女を傷つけていった。
「私だって、疲れるんだよ……」
何度も重なる言い争い。すれ違いの心。
別れという言葉が喉元まで上がってくる日々。
そんなある日、凛花は仕事の疲労で職場で倒れた。
その知らせを受けたとき、タカシの胸を貫いたのは後悔と焦燥だった。
「俺は……なにをしてたんだ……自分の気持ちばっかで凛花のことも考えずに。」
彼女の傍にいたいのに、手を伸ばすことすら叶わない。
それでも、何もしないままでいるのが怖くて――
タカシはその夜から、密かにリハビリを始めた。
けれど現実は厳しく、思うように動かない足に苛立ちだけが募っていった。
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