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ブン殴れ!! おじさん白魔道士  作者: 自堕落なヤモリ
チュートリアル 中編
18/29

第17話 オリジナルスキル

 

 4日目。


 居心地の悪さから、ショウトはパンもどきと水筒を手に、早々と召喚の部屋から出ていた。


 正直に言えば、ショウトはパーティーを組むつもりがない。そもそも1人で戦う状況下に置かれたのだから、仲間に頼る気など毛頭なかった。


 そこら辺が、白魔道士らしからぬ思考なのだろう。


「オス、ジッサマ」


「誰がジッサマじゃ」


 いつもの挨拶。


 パンもどきと水筒をたいらげたショウトは、白魔道士の部屋へと入った。ノワークと軽い会話、魔法の籠手を外して準備運動。


 ふと、ある事に気付く。


 〈気光弾〉は左手でも撃てる。もちろん右手でも撃てるのだが、両手では撃った事がない。なにしろ、ノワークのフォームが片腕伸ばしだったからだ。


 ショウトは何の気なしに両腕を伸ばし両手を広げ、魔法を放つ。


「〈気光弾〉」


 通常サイズではない大きさの光球が、ショウトの眼前に出来上がる。


 次の瞬間ー


 衝撃・爆発音。


 すでにボロボロだった打ち木が、木っ端微塵に吹き飛ばされた。


「お主、何をしたんじゃっ!?」


 視界を外し、呆然としていたノワークは衝撃で椅子から転げ落ち、粉々になった打ち木とショウトに対して怒鳴っていた。


「イヤ、両手でこう〈気光弾〉を放ったら……」


 ショウトもその態勢のまま、答えるしかない。


「儂らでもやろうと思えば右・左と、交互に〈気光弾〉を連射する事は出来るし、やった人間もおる。しかし、基本白魔道士は片手に武器を持っておる。両手で同時に魔法は放てんのじゃ」


 ノワークは道衣についたホコリを落とす素振りを見せ、ショウトの説明を否定する。と、言われてもショウトには理解出来ない現象である。


 魔法の籠手を装備しつつ、ショウトはステータスを開いた。


 *ショウト 白魔道士

  体力 5

  魔力 3+1

  スキル 1

 ーーーーーーー

 *【女神の慈愛】

  《体術・総》

  《魔法障壁》

  《双気光弾》

  ○〈気光弾〉

  △〈回復〉

 ーーーーーーー

 *召喚人の服

  道衣

  魔法の籠手

  タオル

 ーーーーーーー

 *20,000c


「《双気光弾》って言う、知らない能力がある」


 ステータスパネルを覗いたショウトは、見知らぬ能力の解説を頼む為、ノワークに声を掛ける。


「……オリジナルスキル」


「オリジナル?」


 ボソリと呟くノワークに、ショウトはすかさず食いついた。


「黒魔道士の召喚人に、まれに現れるらしい。スキルの解釈の仕方が違うのか、まるで突然変異のような従来にない、黒魔法を覚えると言っとたのぉ。白魔道士では聞いた事もないが……」


 絞り出すように思い出すノワークは、ショウトと同じ様に両腕を伸ばし両手を広げる。


「気光弾」


 ノワークの詠唱と共に右手だけから光球が飛び、2本目の打ち木に命中する。乾いた衝撃音と特に変化のない打ち木。


 ショウトとノワークは顔を見合せ、沈黙する。


「本当か?」


 疑った表情で、ノワークは尋ねた。


 ノワークは、ショウトが魔法を放ったその瞬間を見ていなかった。その結果、ズタズタのボロボロになった打ち木が耐えきれずに、崩壊したようにしか考えられなかったのである。


 疑いを掛けられたショウトは、少しムキになったのかもしれない。


 前日の同期の召喚人に向けされた蔑みや、自分の失敗による後悔、そして疑惑。後先考えず、怒りの矛先は、魔法の発動となった。


「《双気光弾》」


 両手から放たれる光球は胴体サイズの大きさで、真っ直ぐ打ち木へと飛ぶ。


「あ、魔法の籠手」


 撃った瞬間、思い出した。ショウトは魔法の籠手を装備している。


 命中。先程の比ではない大爆発。


 轟音と衝撃波が部屋を揺らし、ショウト自身はその場に踏みとどまったものの、隣で無防備に立っていたノワークは衝撃で後方に3m程吹き飛び、壁に背中を強打していた。


 このような密閉空間で爆発を起こせば、内部に高い圧力が発生するのは道理であろう。


 2本目の打ち木は跡形もなく消し飛び、その場の床も円形に抉られている。通常の〈気光弾〉ですら魔力+1の影響で威力を増したのだから、こうなる事は予想できたハズだ。


 前日の『蒼炎の魔女』の話しではないが、ショウトは魔法の威力に戦慄を覚える。


「イチチチ、コリャ上位の黒魔法並みじゃゾ……」


 〈回復〉を自分の身体に唱えながら、ノワークは戻ってきた。



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