第29.5話 初めての狩り
ちょくちょく、書いていきまーす
1人の男が、深夜の森林の中に潜んでいる。森に、闇に溶けるように気配を殺し、対象物を観察していた。
小鬼『ゴブリン』
その名の通り、小さき鬼。身長は100cm程、ギョロギョロとした目、並びの悪いギザギザの歯、醜悪な面貌の額には角が生えており、腰みのを巻いたダケのほぼ全裸姿の亜人種。
そんなゴブリンが4匹、 夜の獣道を我が物顔で闊歩している。観察を始めて3時間。事前の情報通りの行動をゴブリンはとっている。
テリトリーの偵察・拡大。まるで陣取りゲーム。ゴブリンの行動はパターン化されているといっても過言ではない。群れで移動し、拠点を決めては各自バラバラに単独行動。小一時間ほど周囲を偵察しては集合し、群れで移動。
その行動の繰り返し。
ゴブリンの群れ、4匹組ではあるが、その群れを率いる存在がいる。
小鬼長『ゴブリンリーダー』
他のゴブリンより頭一つ分背が高い。身長は120cmはあろう。武装は棒である。棍棒と呼べる物か、木の根か枝か50cm程の木の棒を手に持っている。貧相ではあるが、敵対・攻撃行為がある事は明白だ。
ゴブリンは夜間に行動する。昼間に行動すると人間に遭遇するからだ。ゴブリンは人間を敵視している。人間を滅ぼそうしている。人間に勝利したいのだ。では、なぜ昼間に行動しない。
ゴブリンは弱い。
凶暴ではあるが、フィジカルの部分で人間に勝てない。1対1では如実に差が出る。だから数に頼る。人間を上回る数なら、昼間も歩ける。夜歩き、テリトリーを拡げ、味方を増やし、自信をつけ、昼間を支配する。
ゴブリンの思考はパターン化されている。
男は暗闇の茂みの中から、ゴブリンを観察している。年は中年に部類する40代半ばのおじさんである。頭には鉢巻のように布を結び、腰までしかない外套を纏っている。黒髪短毛、いたって平凡な顔の造りではあるが、目付きは鋭い。
武装は、ない。
剣も槍も、木の棒すら持っていない。もちろん、盾も鎧もない。ただ、両腕には金属製の籠手が装着されている。が、武器としても防具としても、主力とはならない。
ゴブリンは弱い。が、安全ではない。むしろ危険である。その凶暴性は殺意を持って人間に襲い掛かる。どんな人間でも頭部を狙われれば、終わりだ。棍棒での打撃なら致命傷だろう。
殺傷能力。長さ・重さ・固さ・鋭さ、どんな非力な者でも危険対象にしてしまう武器。ゴブリンすら脅威に変えてしまう。対等、もしくは有利に働くであろう武器を男はもっていない。メリットといえば、両手が空いている事ぐらいだろう。デメリットを数えれば、その比ではない。
ゴブリンの3度目の別行動。
拠点を決め、ゴブリンリーダーを残し、他のゴブリンが散会・索敵を行う。異常があれば、奇声をあげて仲間を呼ぶ。ゴブリンはワンパターンだ。
ゴブリンの群れを尾行・追跡していた男は、徐々に距離を詰めていく。時間は30分程経っただろうか、声を上げられても、10分は稼げる。他のゴブリンが合流するまで、距離ができたハズである。
ゴブリンリーダーとの距離、約5m。両手がふさがっていない事は、動作に無駄がないという事だ。男は音もなく茂みから出ると、一呼吸でゴブリンリーダーに接近する。
無手、しかし素手ではない。金属製の籠手は鈍器である。ゴブリンリーダーの後方に無音で間合いを詰めた男は、流れるように攻撃動作に入る。
右フック。
円滑に、足・腰・背・肩・腕を連動するように捻れと捻りを駆動した回転力は、後方よりゴブリンリーダーの右側頭部にインパクトを与える。
鈍い音と共にゴブリンリーダーの意識が飛ぶ。さらに男は、右足の裏でゴブリンリーダーの左膝裏を踏み抜く。
体勢を崩す為。
意識混濁。右フックにより前のめり倒れようとしたゴブリンリーダーは男の追撃により、その場に片膝をつく。
渾身の右ストレート。
男は先程の右フックと同じように、再び回転運動を使い、右拳をゴブリンリーダーの後頭部に放つ。頭蓋骨の陥没する音と共に額の角が抜け、地面に落下した。
絶命。ゴブリンの生死は角の有無で決定する。
あっという間の惨劇。の割りに、男に余裕はない。残心の構えを崩さず、ゴブリンリーダーの死体を見つめる。
初めての狩り。
確実性を狙い、利き腕による攻撃しかできなかった。合計三手。一撃必殺の右ストレート、初手で間合いを見誤り、外していたとすれば、リスクが大きすぎる。
ゴブリンリーダーに仲間を呼ばれ、形勢は不利な状況となる。完全制圧の為に三手必要。無力化にする為の右フック、崩す為の膝裏蹴り、トドメの右ストレート。強引・技術・安定性、いずれかが欠ければ、結果が変わってしまう。効率的ではない。これでは武器を持たない意味がない。
反省点は多い。構えたままの男の眼前、ゴブリンリーダーの死体が蒸発するように黒い煙となって四散していく。魂の消失は魔力の制御を失い、肉体の維持を放棄する。その結果、魔力の煙となって消滅したのだ。
男は構えを解くと、落ちているゴブリンリーダーの角を拾い、懐にしまった。そして、他のゴブリンが戻ってくる前にこの場を後にする。
*ショウト 白魔道士
体力 5
魔力 3+1
スキル 1
ーーーーーーー
*【女神の慈愛】
《体術・総》
《魔法障壁》
《双気光弾》
○〈気光弾〉
△〈回復〉
ーーーーーーー
*召喚人の服
道衣
魔法の籠手
タオル
外套
ーーーーーーー
*4,000c
男の名は、ショウト。
職業は白魔道士。
ゴブリンを倒す為、召喚された駒である。
・いきなし、クライマックス
「外国では『怪物狩人』っゲームはイマイチだったらしいよ。チマチマ、採取や鉱石掘り、納品、盛り上がりに欠けるってサ。最初からド派手な演出が顧客を集める。日本のファンタジーじゃ、新人冒険者の登竜門、教科書バリの定番になってるのにね?
しかし、修行ってのは嫌いらしい。某漫画じゃ修行編に入るとアンケートががた落ち、人気低迷。ま、メリハリって言うケド、いきなり強いって作者の都合でどうとでもなるよ? 説得力に欠けちゃう。
謎のパワー発動で魔神消滅、段階追ってないから説明つかない。足し算、足し算。もともと持ってた潜在能力、じゃあなんであの時発動しなかったの?
矛盾・後付け・足し算。なかなかエンターテイナーは難しいナァ」




