アンフェリータの母
アンフェリータは緊張した趣で部屋の扉をノックする。
「入れ。」
中から田中の声がする。アンフェリータは芳子と共に部屋に入る。
「川島、来てたのか?」
田中は芳子に気づく。
「はい。アンフェリータちゃんに会いに来てましたよ。」
「あまりからかうなと言っただろう。」
「からかわれてなんかいませんよ!!」
田中の指摘に芳子より先にアンフェリータが答える。
「私達2人のこれからの事話してたのです。」
「これから?まあいい。座れ。」
アンフェリータは席に着く。芳子は席を外そうとしたがアンフェリータがいてほしいというから同席することにした。
「あの、話とはなんでしょうか?」
「アンフェリータ、落ち着いて聞け。お前の母親が見つかった。」
「何ですって?!」
田中が持ち出した話はアンフェリータの母の話だった。アンフェリータは母は既に亡くなってると思ってた。
「探偵に頼んで調べてもらってたんだ。」
田中は探偵からの調査報告書と写真を出す。
「これを見ろ。」
アンフェリータは報告書を手に取る。
母は朝鮮で暮らしているらしい。写真には小料理屋で働く女性の姿があった。今は朝鮮人と結婚して小料理屋をやってる。子供もいるそうだ。
(これが私のお母さん?!)
「どうだアンフェリータ、朝鮮で母親と暮らす気はないか?」
田中から勧められる。しかし
「お断りします。私は大陸に残ります。」
アンフェリータの気持ちは決まっていた。
「先日会ってきた。」
母親も新しい家族もアンフェリータのことを家族として迎えてもいいと言っている。
「ご主人様、会ったことがない女性を母親と言われても。それに私は芳子様と約束したんです。新国家ができたら紫禁城で各国のプリンセス、そして国中の女の子を集めて舞踏会をしようと。」
アンフェリータは先ほど庭でした芳子との約束の話を持ち出す。
「川島、軍の計画を彼女に話したのか?」
「国を作ることだけだが。」
「そうか、お前らいつの間にかそんな仲になってたのか。」
アンフェリータは諭されるも首を縦には振らない。芳子と紫禁城で舞踏会を開くの一点張りである。
「アンフェリータちゃん」
隣で話を聞いていた芳子が口を開く。
翌日アンフェリータは駅にいた。朝鮮へと向かう汽車に乗るために。駅には芳子と田中が見送りに来ていた。
「アンフェリータちゃん、暫くのお別れだね。」
「必ず来て下さいね。」
アンフェリータが朝鮮に行くことを決めたの芳子の説得があったからだ。芳子は建国したら迎えに行くと約束したのだ。
汽車がホームに入っててきた。
「私行きますね。」
アンフェリータは芳子と田中に一礼すると汽車に乗り込んだ。
「芳子、ありがとう。あの時は一芝居打ってくれて。アンフェリータちゃんを行かせるためだろう。」
「芝居じゃありませんよ。建国したら必ず彼女を迎えに行くつもりです。田中さん、任務お受けします。僕はアンフェリータちゃんと国を率いていきたいのです。」
数日後、芳子は上海にいた。日雇い中国人達に金をばらまくと指示を出す。
「お前達に頼みがある。そこの日蓮宗の寺院で一暴れしてくれ。」
芳子は日雇い中国人達が散り散りになっていくのを見届けた。