アンフェリータの夢
「アンフェリータちゃん、彼女は家族がいないのか。お父様ならどうするだろう?」
父は民の生活を知るためにもよく街に使いを送っていた。親を失って行き場のない子供の話を聞けば里親を探し、また子供に恵まれない貴族の夫婦に引き取ってもらうなど自身の子供同様に手を差し伸べていた。
「誰もが笑って暮らせる国を作りたい。そのためには家族が必要だ。」
それが父の口癖だった。
「お父様ならきっとアンフェリータちゃんを助けるだろう。僕も彼女にできることはないのだろうか?」
そう考えて横になる。
「アンフェリータ!!」
翌日田中家の屋敷。アンフェリータはメイド頭に呼ばはれる。
「この洗濯物を頼んだよ。」
アンフェリータは洗濯物を干すことを言い付けられる。
「はい、分かりました。 La lalala」
アンフェリータは歌を歌いながら中庭へと向かう。
「あの娘不思議な娘だね。」
アンフェリータがいなくなるとメイド達は彼女の陰口を言い始める。
「旦那様が拾ってきたのでしょ?」
「ええ、イタリアの富豪の娘よ。」
「まあ、どうりで目の色が」
一方中庭ではアンフェリータが歌を歌いながら洗濯物を干していた。シーツにべったりカバー、ブラウスと洗濯籠から順々に取り出していく。
「Lalala lalala」
歌を歌いながら。次第にステップを踏み出す。
「Lalala lalalala Lalala lalala」
しかし
「きゃっ!!」
足を踏み外してしまう。その時
「大丈夫か?!」
「王女様?!」
「王女様じゃなくて芳子でいいよ。」
芳子が支えてくれたのだ。
「芳子様、本日はご主人様は留守です。」
「知ってるよ。今日は田中さんじゃなくて君に会いに来た。」
「私にですか?!」
芳子は玄関のチャイムを鳴らしたが応答がなかった。そしたら庭の楽しそうな歌声が聞こえてきたからなる。中庭に廻ってみたという。
「アンフェリータちゃんは歌が好きなんだね。」
「はい、プリンセスは歌いながら掃除や洗濯をするんです。」
アンフェリータが手を動かしながら答える。
「プリンセス?」
「はい、父が買ってくれた絵本のプリンセスです。」
父だけはアンフェリータに優しかった。父が読んでくれた絵本には貧しくて継母から掃除を言い付けられる少女が王子様と結婚する話だ。
「プリンセスはいつでも明るく歌を歌いながら王子様が現れるのを夢見てるのですよ。」
「それで王子様は現れたのかい?」
「はい、今私の目の前におります。」
アンフェリータは芳子に抱き付く。
アンフェリータのイメージは某日アサに出てくる闇落ちする前のアンチヒロインです。