芳子の使命
田中はテーブルの上にスーツケースを置く。中を開けると大金が敷き詰められていた。
「川島、この金を上海の中国人の日雇い労働者にばらまけ。」
「どういう事ですか?」
芳子は田中に言われていることが理解できない。
「川島、上海に布教に来ている日本人僧侶の寺院があるのは知っているな。」
「はい、噂は聞いております。」
「中国人日雇い労働者は反日感情が強い。もしも大陸に在住する日本人が狙われたらどう思う?」
「田中さん、それって。」
田中は何も言わずに頷く。
「待って下さい!!僕にはできません。」
芳子は立ち上がって答える。
「日本人も中国人も傷つけたくはありません。」
「川島、本当にそれでいいのか?」
田中は席を立つと芳子の隣に移る。
「お前の夢でもある清王朝の復活はもう目前なんだ。」
芳子の本当の名前は愛新覚羅顕シという。300年以上続いた王朝の末裔だ。しかし王朝は滅び日本人に引き取られた。芳子が日本軍に協力しているのも王朝の復活のためだ。
「清王朝の復活はお前だけではない。亡き父の夢でもあるだろう。違うか?」
田中は顔を近づける。芳子はソファーの上に倒れ込むその時
「失礼致します。」
先ほど玄関にいたメイドの少女がお茶を持ってきた。
「きゃあ!!」
田中と芳子がソファーの上で身を重ね合ってるのを目の前で目撃し持ってまう。驚いてトレイを床に落としてしまう。
「アンフェリータ、何をしてる?」
彼女はアンフェリータという名だ。
「ご主人様こそ男同士で何をされていたのですか?!」
「川島、男同士だって言われてるぞ。」
田中は芳子の方を見て笑っている。
「田中さん少し黙っていて下さい。」
芳子は身体を起こすとアンフェリータの元にやって来て来る。
「アンフェリータちゃんだったね。」
芳子はアンフェリータの手を握ると自分の胸を触らせる。
「えっ?!嘘?!」
「嘘じゃないよ。」
「貴女のこと私を迎えに来てくれた王子様だと思ってたのに。」
「ごめんね。王子様じゃなくて王女様だよ。」
(男の装いをしているのに王女様?!)
アンフェリータは頭の中が混乱してきた。
「アンフェリータちゃん、安心して。作者は百合専門だからね。それよりまずはここ片付けようか。」
床にはカップの破片が散らばっている。芳子が一緒に拾ってくれる。
「痛っ」
「大丈夫ですか?」
芳子は破片で手を切ってしまう。
「いけません、血が。」
アンフェリータはエプロンのポケットからハンケチを取り出すと芳子の手に巻き付ける。
「これで大丈夫です。」
アンフェリータは割れたカップの破片をトレイに乗せると部屋を後にする。
若干メタ発言もいれてました。