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早朝の月  作者: 野松彦秋
第1章 祖父との交流
6/18

朝の哲学者

ベットの上で目が覚め、時計を見ると

5:30だった。3月になったばかりなので外はまだ暗い。

15年ぶりに母と同居する事になり、

私に与えられた役目は、朝のゴミ出しと

朝食の準備だった。

母が住んでいるマンションは、回収倉庫が有る為、ゴミが

出たら、曜日に関わらず回収所に持っていけるから非常に楽

(決められた曜日は有るのだが、ほとんどの住人は

前倒しでゴミを持っていっている。)である。


その前まで、田舎で一軒家を借りていた時は、決まった曜日に

出さなければいけなかったし、ゴミ袋には名前を書かなければ

いけなかった時に比べれば天国である。


私の日課は、朝起きるとまず上着をきてゴミを持って外に出る事から

始まる。ゴミといっても、毎日出すのでそれほど量は無い。

ドアを開け、外に出ると、身が一瞬引き締まる気がする冷気と

朝独特の空気の匂いがする…。

毎日の事だが、今日という一日が始まるという独特の雰囲気を感じ、

なんかその日一日を期待してドキドキする自分がいる。


マンションの5階である為、薄暗い朝なのだが、マンションには

各階最低限度照明がついているので、ちょっとしたきれいな

朝景(夜景?)である。


ゴミの収集所(倉庫)にゴミを出し、取集所のドアのカギを閉める。

太陽が昇り始めているので、周囲が明るくなり始めていた。


そういえば、今の薄明かりが夢の中で四角い顔の青年と話した時の

暗さに似ている。数週間前のあの父親(四角い顔の青年)は、

無事両親を説得し、父兄面談に出席できただろうか?

夢の登場人物を心配するのもバカバカしいが、それを想像させる

様な外の明るさだった。


夜明けの明るさと、黄昏時の明るさは似て非なるものであり、

全く違う状況である。


夢の時のどちらとも判断付かない周囲の明るさは、正に45歳の

自分が置かれた状況を表していたのではないかという気になった。


戦国時代であれば、人生50年、その時の45歳は正に黄昏時で

あり、もう先が無い。

高齢化社会となった現代は100年時代と呼ばれるようになり

戦国時代の人生を2度できる計算である。

それを考えると、1周り目の人生が終わり、

最期の一周を迎える前の夜明けの時期とも捉える事も出来る。

45歳というのは、そういう年齢だなと、ゴミを出すほんの些細な時間

人生を悟った哲学者になったような私であった。


そういえば、今日は母が何か私に頼みたい事が有ると言っていた事を

思い出し、私は家に戻った。



何だろう?





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