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早朝の月  作者: 野松彦秋
第1章 祖父との交流
5/18

ある一人の父親

私を知らないと即答したこの男は、どうやら駅で

喋った青年ではない。

考えてみれば、そんな事はどうでもいい事なのだ。

駅で出会った青年であろうが、なかろうが、私は

二人ともどんな人物かも分からないし、大きな差はないからだ。


私の夢の中に、見知らぬ男が出てきて・・・、

多分この男は私の深層心理が具現化したもの・・・、

自分でも気づかない心理的欲求、はたまた日常生活に対する恐怖?


だが、おかしい、受験を控えた娘、父兄同伴の面談??

自分が想像した事も無い、ワードが沢山出てくる男の話が

どうして私の深層心理なのだ。


2年前に離婚した妻との間に生まれた私の娘は今年10歳だし、

娘が小学校に上がる前に、私学の小学校に入れようとも考えた事が

無かった。そもそも、そんな金等無かったからだ。


頭の中で、色々考えがら、私は自分の疑問を率直に質問する。

「父兄同伴の面談があるのであれば、出るのが当然だし、そこに

 選択の余地は無いと思うのですが、何を悩んでるのかな?

 ごめんね、見知らぬ俺が聞くのも口を出す事ではないけど。」


自然と、年下の人に話すような少し砕けた口調になっていた。

男は、2度続けて大きくマバタキをした後、自身の身上を話始めた。


歳は、33歳で二人の子供(二人とも女の子)がいる高校の先生との事。

両親は健在で、同居しており、問題はその両親みたいである。

男の両親は、孫を溺愛しており、まるで自分たちの子供の様に育て

娘たちも、本当の父親である自分よりも祖父である男の父に懐いて

しまっている状況との事。


男の説明を聞きながら、この人の奥さんが一番大変だなと同情して

しまった。


そんな状況で、出てきた話が今回のお受験での父兄面談であり、

男は非常に悩んでいるとの事。

通常、父兄面談は父親と母親が行くものであるが、娘の祖父に

当たる自分の父が、大事な孫娘の面談にはどうしても自分が出たいと

譲らないとの事みたいだ。


「どうして悩んでいるの?。」私はあえて同じ質問をした。

彼【男】自身に、自分の思いを気づかせる為に…。


「娘の父親は、私です。私が行くべきなんです、私だって自分の娘は愛おしい。

 唯、私以上に私の父が娘を大事に世話しているのも事実だし、娘も

 面談に私が行くよりも私の父に来てもらった方がうれしいのも分かってる、

 どうしたらいいんだぁ 全く…。」


最初は声が大きくなり、そして最後には泣き出すのではないかと思う程声が

小さくなった彼の言葉に、彼の苦悩が汲み取れた。


「負けんな、父親だろ、自分の娘の面談だから、胸を張って行って来い!!。

娘が嫌がろうが、自分がしたい事を堂々とやってくればいいじゃん、頑張れ。」

自然と私の口から言葉が溢れだした。


心の中で、彼の娘と自分自身の娘の顔が重なった気がした。









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