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早朝の月  作者: 野松彦秋
第1章 祖父との交流
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薄明りの街

気が付くと、私は薄明りの中を歩いていた。


暗闇というわけではないが、周囲は暗い。

間もなく太陽が上ってくる夜の最後の残り火なのか、それとも夜が訪れようとしている黄昏時なのかが判断はつかない。


後者であれば、これから直ぐに夜になるので、私は少し焦った。


焦る気持ちを抑えながら、自分の居場所を確認する為に、私は周囲に目を配る。


気のせいか、幼少期に住んでいた故郷の街並みに似ている。


ここは、何処だ?街並みといっても周囲に人影は無く、気配もない…。


数秒後、直感のような、それとも潜在的に分っていたのかもしれないがここは自分の夢の中である事を私は理解した。


夢であるという事が認識できた為、もうすぐ夜になってしまうのではないかいう焦りは消え、冷静さを取り戻す事ができた。


私のいた場所は、小学校の同級生の女の子の家の前であり、その子の家を正面に見て、右に真っすぐ歩けば、私の生家に着くはずだと私はその方向に歩き出した。


暫く歩いていくと、十字路が有り、そこも曲がらず真っすぐいくともう何十年も前につぶれた筈の食堂の看板が見えた。


ほりえ食堂というオレンジ色の屋根の店、食堂とは名ばかりで、近所の大人が居酒屋代わりに使っていた、今思えばお酒を飲むスナックのような店である。


子供時代にみた昼間の同店のちょっと寂しそうな雰囲気がそのまま残っており

幼少期の記憶は鮮明に残るものだなと自分の事ながら、関心した。


最近の私は、食後に飲む血圧の薬を飲んだかどうか忘れてしまうのに…。


食堂を横目に、もうすぐ自分の生家だと思い、無意識に小走りになっていたが

暫く歩いても私の生家は一向に見えてこない。


あれ、おかしいな、もうついてもおかしくないのに、どうしてつかない?


夢は、自分の願望の通りになるのではないのかと、これは私の夢ではないのか?


いや、ほりえ食堂があったのだから自分の夢には違いないと自分に言い聞かせて

私は歩き続けた。


一向に変化しない周囲の明るさが、私の冷静さを保たせていた。


歩きながら、今の時間がいつ頃なのかが気になりだした。


黄昏時として行動している自分であったが、実はこれから太陽が昇る夜明け前なのかもしれない。


唯、私が好きな夜明け前の朝の匂いがしないためほぼ黄昏時だろうなと感じていた。


夢の中だから、匂いも無いのかもしれない。


そんな事を考えていると、幼いころに遊んだ公園に辿りついた。


公園入り口の階段を上がり、1/4がゲートボールの広場をあるき、揺りかごや岩の滑り台のある遊具エリアへ自然と足が向く。


二つのブランコが有り、その一つに一人男性が座っていた。


近づくにつれ、その男性の顔が見えてくる。


駅のプラットホームで出会った四角い顔の青年だった。

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