月のように
目が覚めて、目元が少し濡れている事に気づく。
自分の願望が見せた夢なのか、それとも亡き友の気遣いなのか
両方だと思えば、納得もするし幸せな気分になるので
私は理由を断定しない事を選択した…。
夢の中でも、人前で泣くなんて何十年ぶりだな。
そんな事を考えながら、ぼんやりと天井を眺めていた。
ふいに時間が気になって頭の横に置いてある時計に目をやる。
朝5:00である。ちょっと早いが、今日は古紙回収の日なので
私は上着をはおり、ゴミを持って外に出た。
暗さは残っているが、風が何時もより暖かく感じられ、
爽快な気分になる。
朝日が昇ってくる方角が、明るくなっていた。
空には未だ月が見えているが、黄色ではなく白色である。
夜の月とはまた一味違う、神秘さを漂わせている。
月は、太陽が出ると太陽の光に隠され身を隠してしまうが
消えていない。夢の中で大山が私に言った言葉が、頭の中で
繰り返される。友が私の人生を見ている、陰ながら応援して
くれている。まるで今見てる月の様な存在である。
一つの事実に辿り着く。
私には月の様に見守ってくれている人達が沢山いる事に。
10日後には、新しい職場での新しい世界が私を待っている。
正直気持ちが憂鬱になる時があった。
しかし、早朝の月を見上げた私の気持ちは、戦国時代の
東北の雄伊達政宗の辞世の句※のような晴れ晴れしい
気持ちになっていた。
※曇りなき心の月を先立てて浮世の闇を照らしてぞ行く
桜が満開になり、風は暖かい、まるで私の追い風に
なってくれているみたいだ。
「さあ、行くぞ!。」
完