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2度目の初恋  作者: 毒りんご
1/1

ベットの上の花嫁

機械音が響く

体の奥底に


ずーーーーん

ずーーーーん


時折

だっ、だっだっだだっだ……


妙なリズムを刻みながら。


この音は何なのだろう?

そう思って

辺りを見回そうとするが

全く動かない。


何度も頭を動かそうとするのだが

全く動かない。


天井らしき白い壁には点で表したような模様があり

それをじーっと見ていると不気味に見えてくる。






ここは………どこ?








「こもりせんせーい!」

「はあーい」

自分の名字が嫌いだ。

幼稚園の先生なんてしていると、自己紹介の機会も多く

【こ・も・り】なんて自分で発音するのもしにくい。

子どもたちから呼ばれるときは尚更だ。


そもそも子どもの時から嫌いだった。

「コウモリ!」など

男子にどれだけからかわれたことか。


何でもっとおしゃれな名字の家に生まれなかったのだろう

女はこんなつまらないことでテンションを左右されるものである。


しかし来月の卒園でわたしも

「小森」を卒業し「相沢」になる。

3月で幼稚園を寿退職するのだ。

長年夢見てきたおしゃれな苗字になれる!!

世間的には「小森」も「相沢」も甲乙つけられるものではないのだが

結婚目前にして

好きな人の名字になるという幸せに加えて

こだわりである、「おしゃれな名字」になれるのだ。


わたしの働いている幼稚園では、毎年やめる先生を卒園式で園児や保護者の前で発表される。

担任は袴を着て卒園児の名前を涙交じりに呼び、そのうえ寿退職となれば最後におおきな花束を渡された。

きれいな衣装を着て美容室でまとめられた髪、大きな花束と子どもたちや保護者からの感嘆祝福の声。

新人の頃からずっとそれを夢に見ていたのはわたしだけではないはずだ。

残念ながら卒園児の担任ではなかったが、卒園式のピアノという大役を任されていた。

「6月の花嫁は幸せになれるんだ」

彼はそう言って結婚式を6月に決めたが、実は籍は先に入れることになっている。

それが明日、2月3日だ。

これも賢い彼が「園を辞める前に籍を入れればお祝い金が貰える」と言って決めたことだ。

さらにわたしはまだ一度も海外旅行をしたことがなかったのだが、彼に頼み込んでハネムーンをハワイに行くことにしていた。

卒園式でピアノを弾く大役!!ジューンブライド!!ハワイ!!

日々の業務に加えて年度末の仕事、引っ越し、役所関係のこと、結婚式やハネムーンの準備はとても大変だったが

「あと一息がんばったら幸せがいっぱい訪れるんだ!!」

そう思ったら寝なくても、多少食べなくても、少し頭痛がしても

頑張れた。



彼は私とは正反対の人間だ。

色白で韓流アイドルを思わせるような童顔で170センチ50キロのスレンダー体系。

海外旅行やマリンスポーツなどは嫌いなインドアで知的なインテリタイプ。

女子校、女子短大、女職場と男性に縁のなかったわたしがどうやって彼と出会えたのか、

それはマッチングアプリがきっかけだった……


女子短大は2年間ということもあってとても忙しかったが、ハタチを越える頃からはそれなりに遊べていた。

友達の紹介での飲み会が頻繁に行われていたのだ。

ある時は

「わたし行けなくなっちゃったから代わりに行ってきて!メンツ足んなくなっちゃうの」

と頼まれ、

知り合いがひとりもいない中で飲み会に参加することもあった。


その時は中学の時からの彼氏がいて、そもそもお酒が弱いわたしにはそれほど興味のないことだったが

それでも複数人の同世代の男の子とお酒を飲むことは楽しかった。


ところが就職すると間もなく中学のころからの彼氏とすれ違いから分かれることになり

忙しさから短大の頃の友達とも疎遠になっていき

休みの日は寝てばかりいた。


そんな時

ふと、YouTubeのマッチングアプリ報告を観ていて

興味を持ったのだ。



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