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敵は誰か(4)

「皇太子殿下。私は今、ステラリア令嬢に質問をしているのですが?」


「彼女は俺が依頼した代理人だ。依頼主である俺にも発言権はあるはずだが?」


「……おっしゃるとおりです」


 レヴァンタル公爵は引き下がり、殿下が発言台に立つ。


「公爵のおっしゃるとおり、貴族家門は優秀な人材を騎士団からスカウトし、筆頭護衛として特別待遇で雇用しする慣習がある。その特別待遇の理由であった決闘法の廃案により、特別待遇の理由がなくなることを問題視するのであれば、決闘の代理となる催しを用意してやればいい」


 そう言って、殿下は傍に控えていた者に合図を送り、それに合わせて一枚の紙が配られる。


「これは……武芸大会?」


 手渡された紙を見て、レヴァンタル公爵がうめく。


 私にもその紙が渡され、内容を確認する。


「年に一度、帝国の領地内で家門の護衛が集まり、どの家門の護衛がもっとも武芸に優れているかを競う行事を開催する。開催主は希望する家門から投票で選出し、興行として領地の商売喚起をすれば、領地にとってもプラスになるだろう」


 そこには、武芸競争のルール概要や開催規模、開催による経済効果の試算があった。これを見れば、筆頭護衛の雇用コストなど大きな問題にはならないほどのメリットが明確にわかる。


 レイジ殿下、いったいいつの間にこんなものを用意していたの……?


「これは法律ではないため、この場での承認は不要だ。だが、開催することはレイジ・ド・ポーラニアの名において確約しよう。近いうちに専門の委員会を組織して開催に向けた準備をしたいと思っている。レヴァンタル公爵、筆頭護衛の去就を憂いているあなたにこそこの組織を率いてもらい、初回の開催地として手本を見せてもらいたいと思っているのだが……いかがか?」


 帝国議会の場でレヴァンタル公爵を買収しているようにしか見えないが、筋は通っているからたちが悪い。

 案の定、領地発展につながる有利な条件をちらつかせられたレヴァンタル公爵はあごに手を当ててうなっていた。


 ややあって、レヴァンタル公爵は重々しく口を開く。


「よろしい。決闘で勝利する名誉を失った筆頭護衛が新たな名誉を獲得できるのであれば、待遇を維持して彼らをつなぎとめる理由になりましょう。開催を確約していただけるのであれば、私から反対する理由はございません」


「二言はない」


 殿下の言葉に、レヴァンタル公爵はゆっくりうなずくと「以上です」と告げて着席した。

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