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変えるべきもの(5)

 敗戦の将となった私が、敵国であった帝国に引き渡されたのち、両国の発展に尽力して帰還する。


 もしそうなったとしたら、間違いなく王子殿下との婚姻は大々的に祀り上げられ、救国の英雄として扱われるはずだ。


 そこまでの立場になってしまえば、私は王宮から離れられなくなり、最前線に立つことは難しくなる。


 なにより、今私がしているような、王国の発展に関与することは……できないかもしれない。


「それは……つまらないかもしれないわね」


「だろう?」


 私のつぶやきに、間髪入れず殿下が答える。


「この帝国が持つ底力はこんなものではない。俺とお前が手を組めば、ただ広大なだけで腐りかけたこの大陸一の帝国という虚構を本物にできると思わないか?」



 ぞくり、と。


 差し出された手を見て、私の胸の奥に熱が沸き上がるのを感じる。



「そう、それは、とても魅力的な提案ね」


「お前にはそういう選択肢もある。今はそんな余裕もないだろうが、落ち着いてきたら考えておくといい」


 言って、レイジ殿下はにやりと笑う。


 大陸一の帝国という虚構を本物にする。


 私となら、それが可能であると信じ切った瞳で。


 私はしばし言葉を忘れ、ただ脳内でその可能性を探るばかりだった。



「ところで、今更なんで急にそんな話を?」


 一息入れてようやく落ち着いてきた私は、冷静になってそう問いかける。


 私を婚約者にするという要求が飛び出した際に私がこの話を持ち出さなかった時点で、レイジ殿下であれば察していそうなものなのに。


「……別に、今から実は婚約していましたとか言われたら国際問題になると考えただけだ」


 と、珍しくレイジ殿下が言い淀んだ。


 ……本当にそれだけが理由なのだろうか?


 しかし、何度問うても殿下ははぐらかすばかりで納得のいく答えをくれないのだった。

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