拗らせ男子は理解ができません。
あるところに正直者の男子高校生がいました。
その男子はとにかく優しい人でした。
女子に対しては。という注が入ることはいいとして、心優しく正直で誠実な人でした。
これは彼の健気な物語。
彼は顔と心がいいと校内で人気な人でした。
登校時には女子に必ず挨拶をし、困っている女子がいればすぐに助けに行く。
そんなモテモテな彼が告白されないわけがありません。
ある日の放課後、彼は下駄箱に入っていた手紙に従って、校舎裏へと行きました。
彼も流石に何があるかは察していて、やはりそこには一人の女子がいました。
その女子は彼が視界に入った途端、うつむいてもじもじしだしました。
そして気まずい雰囲気を打ち壊すように、彼女は言いました。
「好きです。付き合ってください!」
身構えていても、何故か未だに経験したことのない言葉に彼は体を震わせました。
「いいよ。付き合おう」
その言葉を聞いて、彼女は満面の笑みで喜んでいました。
付き合い始めて2日後のこと、いつものように登校していると女子が一人も挨拶に反応してくれません。
登校しても席の周りに女子が一人も来てくれません。
もともと男子からは目の敵のような扱いを受けていた彼は、女子だけが話相手だったので誰もいない状態に胸を痛めました。
その理由はすぐにわかりました。
女子がヒソヒソと話す声を耳をすませて聞くと、こんな内容だったのです。
彼が二次元にしか興味がなく、毎晩寝る前に抱き枕と壁掛け、しまいには絨毯にお休みのキスをしていることに対してゴミとか、サイテーとか言っているのでした。
彼は怒りました。
「人の趣味を馬鹿にしないでほしいな」
しかしその発言が火に油を注ぐような行為だったのです。
「認めちゃったよ」
「見損なったわ」
「どうせ俺モテてるって思って満足してるような愚図なのよ」
「死ねばいいのに」
そんな彼を蔑む発言は彼を360度全方位から飲み込みました。
その声はヒソヒソ声で彼は耳を抑えるのに精一杯でした。
すると教室の扉が開けられ、一人の女子が入ってきました。
彼はその女子が告白してきた彼女だとすぐに気づき、助けを求めるように彼女に近づきました。
「あなたのことなんてもう大ッッッ嫌いです! 2度と顔を見せないでください!!」
彼は流石に告白してきた人からこんなことを言われるとは思ってもいませんでした。
彼は男子のニヤニヤした顔と女子のゴミを見るかのような顔、それに周囲からの笑い声と蔑む声に耐えられなくなりました。
彼は教室から勢いよく飛び出し、家まで全力疾走しました。
その顔は苦痛に歪んでおり通行人に凝視されました。
しかし彼はうつむきながらただただ走り続けました。
そして誰もいない静かな家へ帰ると、真っ先に部屋へ入っていって、涙を浮かべながら抱きまくらを引き裂き、壁掛けを破り捨て、絨毯を力任せに引き抜き、これでもかとフィギュアを蹴り飛ばしました。
彼は何に怒ればいいのかわかりませんでした。
いつか女子に趣味を聞かれて正直に答えた自分。
変な趣味を持っていた自分。
正直に生きてきた自分。
俺をバカにした人たち。
告白してきた彼女。
正直者は救われる。
正直者は偉い。
そうして褒められて生きてきた彼は、ここで気がつきました。
「あれ? 正直者ってだめじゃない?」
こうして彼は新たに、文字通り真逆の方向に進んでいきます。
全ては2次元のようにハーレムを作るために。
これは少し、いやかなり拗らせてしまっている彼のお話。
人生が一つの質問でめちゃくちゃになってしまった拗らせ男子は、果たしていろんな意味で大丈夫なのでしょうか。
この先のことは私も知りません。
こんな、ちょっと書きたくなっちゃったから書こ。みたいな作品を読んでくださりありがとうございます。
作者歓喜。
さて、私は何を言いたかったのだろうか。
きっと何事もやりすぎはダメってことでしょうね。
そこは食生活と変わりませんね。
というわけで、程よく正直に生きましょう。
……一体何を言っているんだ、私は。
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作者の連載小説もありますのでそちらの方もよろしければご覧ください。