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第九話 あれ、どこかで見た事あるような……?



 ……私は再度旅に出る事を父・・・…国王陛下に伝えました。

詳細は伏せますが、結果から言いますと旅は続行となりました。

それを伝えるべく、私は倫太郎さんの元へと向かいました。

するとある扉の前に、あの竜……といっても見た目は人そのものの状態でですが、その竜さんが立っていました。



「……来おったか、アウレ」


「……!? な、何でその名前を……!?」


「勇者が言うとった。なんぞ問題でもあるかえ?」



 なんてことでしょう! そう言えば、この二人には私の肉体の方の名前は伝わっていない事を思い出しました!

い、急いで覚えてもらわないと大変な事に……



「私の名前は……アウレでも合っていますが、それだと不都合が出るので普段はレイラと呼んでください」


「? なぜそんな面倒な事をするんじゃ?」


「大事な事なんです。お願いします」


「……まあ、呼び名なんぞどうでもええがの。あい分かった」



 そう言って竜の人は壁にもたれかかったまま目を閉じました。

……そういえばこの竜さんの名前は何なんでしょう。



「ところで、その……」


「なんじゃ? まだ何かあるのかえ?」


「貴方のお名前を教えてほしいんですけど……」


「……」



 そう私が聞くと、竜の人は少し考え始めます。



「……わしゃ名前なんぞない。要らぬしな」


「そんな……いつもあなたって呼ぶのはとっても不便だと思います」


「むぅ……それなら、そちが決めよ。それでよい」


「えぇ!?」



 せ、責任重大です。名前を聞いたら名前を付けろと言われてしまいました。

何を言っているかは分からないかもしれませんが私も何が起こったのかさっぱりです……。

しかし、決めろと言われたのならそうしましょう。いい名前、いい名前…………! そうだ!



「青い髪ですし、アオさんでどうでしょう!」


「……まあ、それでいいじゃろ。今後はそう呼ぶがいい」


「はい! ではアオさん、倫太郎さんはどちらに?」



 アオさんに尋ねると、自分の近くにある扉を顎で示しました。

なるほど、この扉の中に……。私はそうっと扉を開けました。

すると、中には二人の人がいました。



「おおっ……これは、なかなか……」



一人はローザさんですね鏡の前で何かしています。

そして、もう一人は……



「プリミラネッキミネクウィケオキニンコボダチモヌスミライエキトスモニモニムンヌ」



 何か、よく分からない事を言いながら同じところをぐるぐる回っている倫太郎さんが居ました。

私はそっと気づかれないように部屋に入ってローザさんの後ろまで行きます。



「……ほほう、これは……フフッ、つい笑みがこぼれてしまうな」


「何がですか?」


「うわっ!?」



 そう言うとローザさんは飛び跳ねて転びました。

……あれ? 気のせいか、なんだか……



「胸が、大きい……?」


「! あ、ああ、その、だな、あーうん、間違いではないぞ?」


「でも、さっき会った時はそんなに………………!」



 そこまで考えた瞬間、一つの可能性に行き当たりました。

私は後ろを振り返って倫太郎さんを見ます。



「メメントモリ。死を崇めよ。大いなる死者に、命をくべよ」


「あの、倫太郎さん?」


「チョコミントアイス三本セットでイチキュッパ?」


「ローザさんにもおんなじ事したんですね?」



 私は、うんざりしながらそう聞きます。

全く、私だけじゃ飽き足らずローザさんまで自分の欲の犠牲にするなんて……なんて人なんでしょうか。

何でこんな人を、私は勇者に選んじゃったのかなぁ……



「戻してあげてください。ついでに私も」


「ほうしゅうだからね、しかたないね」


「は?」


「ローザ、ミーに頼む。ミー、それをやる。おっけー?」


「……すぐバレる嘘はよくないと思いますよ。そんなの、ローザさんに聞けば一発で分かりますから。……そうですよね? ローザさん」



 私はそう言って未だに床に転んでいるローザさんに聞きました。

ローザさんは立ち上がって服の裾を払うと、少し顔を赤らめながら俯いて何も答えませんでした。

……えっ? いや、まさかね……



「ろ、ローザさん?」


「……」


「何とか言ってくださいよ、ローザさん」


「……じゃない」


「えっ? 今、なんて言いました?」



 耳を澄まして聞く私に、ローザさんはボソボソとした小さな声でこう言いました。



「う、嘘じゃない……勇者殿の言葉は、本当だ……」


「……え、」


「……お、大きな胸に憧れるのが、悪い事か? そ、それに、聖女殿も大きくしてもらっていたじゃないか……」


「いや、私は望んでこうなったわけじゃないですし」


「それを見て、ちょっと羨ましくなっただけだ……」



 そう言うローザさんはまだ顔は赤くなっていましたが、腕組みで支えるその二つの重みを感じて顔をにやけさせていました。

……なんなのでしょう、これは。一体どうすればいいのでしょうか。



「ぼぼぼっぼっぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」



 それを聞いた倫太郎さんは、突如わずかに浮遊して音もなくその場で踊り始めました。

その踊りは奇妙なステップではありますが、空中で固定されているかの如くその場からは微塵もズレません。

……妙にイラっと来ますね。なんででしょう。



「ピロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリ」



 その踊りはだんだん加速していき、次第に動きが尋常でない速さになっていきます。

それだけではありません。空中で固定されているのを利用して空中で回転したり普通ならあり得ないような動きをし始めました。

……だんだん風圧が強くなってきましたよ?



「!!!!!!!!!!!!! これが、これこそが、某伝説のスパイも踊ったという伝説の舞!」



 なんだか徐々に倫太郎さんの輪郭が霞むほどの速さになってきました。

……なんだか、約束しそうな名前の曲でも流れてきそうですね。こう、雪が降っては舞い散ってそうな感じの。



「……っていうか、えぇ!?」



 そこまでいった倫太郎さんは、最早暴風の根源のようになっていました。

部屋の中は風で満たされ、軽いものは荒れ狂うように飛んでいます。

かくいう私も、あまりの風に目を開けていられません。



「お、おい、勇者殿! 一体何をしているんだ!?」


「そうですよ! 何してるんですか! やめてください!」


「!」



 そう言うと、倫太郎さんの動きが不意にピタッと止まりました。

……そのまま微動だにしません。何か不気味ですね……



「あの……」


「超落ち着く」


「……」



 私はやはりこの人は理解できません。

急に止まった倫太郎さんに驚くローザさんと未だ微動だにしない倫太郎さんを置いて私は部屋から出ました。

……ついていけませんよ、もう。

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